日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2003年 -2005年
代表者 : 村山 士郎; 船木 正文; 門脇 厚司; 石井 久雄; 久冨 善之; 池谷 壽雄; 小澤 浩明
3年間の研究は、報告書『子どもの生活体験の質とコア・リテラシー構造との関連解明:学力問題との新局面を開く』にまとめられている。本研究の成果の概要にふれておきたい。
第一に、リテラシー概念の理論的検討をおこなった。そこでは、今日の日本で、多義的に用いられている「リテラシー」という用語を「さまざまの情報・知識とその媒体に関し、それを理解し使いこなして、自分なりの判断と行動を行い、この世界を理解しこの世界に参加する、そういう質の人間能力の姿」と規定した。そして、そのリテラシーを「21世紀を生きる子どもたちに必要な能力は何か」という視点から学校知識の再検討を行った。
第二には、「生活構造とリテラシー-小・中・高校生への質問紙調査」をおこなった。そこでは、子どもたちの生活体験の現代的変容を把握するとともに、子どもの体や生活行動・コミュニケーション様式と算数・数学の学習成果との質的関連を解き明かそうとした。その結果、「現在求められていると思われるリテラシー構造が,子どもたちの生活変化の中で必ずしも成長・発達しておらず、だからこそそこに家族や地域の生活立て直しという課題や、学校教育にとっての重大課題が生じている」という結論を得た。
第三は、現場教師との共同で、実践的観察法によって、教室の学力的に問題をかかえる子どもの継続的分析を行った。そこでは、学力の遅れは、経済的・文化的階層に規定されながらも、学力のゆがみ・学習への抵抗感は、子どもへの過剰な学習要求によって引き起こされている場合が多いことが示された。
こうした研究により、リテラシー概念から今日の学力、とりわけ、基礎学力を生活体験との関わりから再定義することが求められている。