研究者総覧

今井 悠介 (イマイ ユウスケ)

  • 文学部哲学科 准教授
  • 井上円了哲学センター 研究員
  • 文学研究科哲学専攻 准教授
Last Updated :2025/04/19

研究者情報

学位

  • 博士・文学(2022年03月 東京大学)

科研費研究者番号

  • 70838531

J-Global ID

プロフィール

  •  17世紀のヨーロッパ近世哲学について、特にデカルトの形而上学に焦点を当てながら研究しています。とりわけ、デカルトの前の時代であるスアレスら近世スコラ哲学の系譜との差異、および同時代に勃興しつつあった「存在論(Ontologia)」の系譜との差異を検討することによって、形而上学体系としてのデカルトの哲学が西洋の形而上学の系譜の中でどのような特異性を持っているのかを研究の中心テーマとしています。その観点から、「神」や「無限」、あるいは「区別」や「実体」といった中世スコラ哲学以来の伝統的な諸主題をデカルトがどのように換骨奪胎し、自身の新たな体系に組み込んでいくのかを分析することを試みています。また、「私(Ego)」や「観念」といったデカルトが新たに切り開いた問題系も、こうした近世スコラ哲学や「存在論(Ontologia)」など伝統的なものを含めた様々な系譜との差異を足場にすることにより、体系上の機能という観点で新たな光を当てることも課題としています。こうした諸課題を通して、デカルトが開いた近世・近代の新たな思考の特質を明らかにし、近代という時代の条件の一端を明らかにすることを目的としています。
     また、デカルトとほぼ同時代、17世紀に新たに勃興しつつあった学問である「存在論(Ontologia)」の研究も並行して行なっています。ヴォルフに至って確立されたとされるこの「存在論(Ontologia)」ですが、近年の研究の進展により、17世紀初頭にまで遡るその起源が明らかにされつつあります。実はデカルトの哲学とこの「存在論(Ontologia)」は複雑な関係を持っています。この関係を解き明かすために、スコトゥス主義的な起源を持ち、「最も一般的な存在者」を探求するこの学問における最も重要な著者の一人であるヨハネス・クラウベルク(Johannes Clauberg, 1622-1665)の哲学を、「存在論」の初期の代表的人物であるという観点と、また初期の代表的デカルト主義者の一人でもあるという二つの観点から分析しています。デカルト主義が、おそらく独立した起源を持つ「存在論(Ontologia)」の系譜にどのように関係してくるのか、という問いが目下の課題になっています。

研究キーワード

  • デカルト   形而上学   近世哲学   Ontologia   クラウベルク   近世スコラ哲学   存在論   フランス哲学   哲学   

研究分野

  • 人文・社会 / 哲学、倫理学 / 西洋近世哲学

経歴

  • 2023年04月 - 現在  東洋大学文学部 哲学科准教授
  • 2023年04月 - 2024年03月  学習院大学非常勤講師
  • 2022年09月 - 2023年03月  帝京大学非常勤講師
  • 2021年04月 - 2023年03月  静岡県立大学非常勤講師
  • 2017年04月 - 2023年03月  慶應義塾大学文学部訪問研究員
  • 2016年04月 - 2021年03月  成城大学非常勤講師
  • 2017年04月 - 2020年03月  日本学術振興会特別研究員PD(慶應義塾大学)
  • 2015年07月 - 2017年03月  東京大学大学院人文社会系研究科哲学研究室特任研究員
  • 2011年04月 - 2014年03月  日本学術振興会特別研究員DC1(東京大学)

学歴

  • 2011年04月 - 2017年03月   東京大学大学院   人文社会系研究科   基礎文化研究専攻 哲学専修分野 博士課程
  • 2008年04月 - 2011年03月   東京大学大学院   人文社会系研究科   基礎文化研究専攻 哲学専修分野 修士課程
  • 2005年04月 - 2008年03月   東京大学   文学部   基礎文化研究専攻 哲学専修分野
  • 2003年04月 - 2005年03月   東京大学   教養学部   文科三類
  • 2000年04月 - 2003年03月   私立 桐朋高等学校

所属学協会

  • 哲学会   日仏哲学会   日本哲学会   

研究活動情報

論文

  • クラウベルクとデカルトにおける「存在するもの」について––「存在論(Ontologia)」とデカルト哲学の交錯––
    今井悠介
    白山哲学 58 167 - 198 2024年03月
  • デカルト形而上学研究––存在論の系譜、主にクラウベルクとの対比のもとで––(博士学位論文)
    今井悠介
    2022年03月
  • 17世紀初頭の「存在論(Ontologia)」の生成と展開について––ティンプラー、ロルハルドゥス、ゴクレニウス、クラウベルク––
    今井悠介
    成城大学共通教育論集 13 51 - 69 2021年03月
  • クラウベルク『オントソフィア』の改訂とデカルト主義 ––「一般的なもの」から明晰判明性へ––(印刷中)
    今井 悠介
    〈ヨーロッパ世界の哲学〉研究 1 2020年
  • 今井 悠介
    理想 699 32 - 42 理想社 2017年09月 [招待有り]
  • 存在論とデカルト哲学の抗争—クラウベルク『オントソフィア』における端初と体系の問題—
    今井 悠介
    哲学雑誌 128 800 159 - 174 2016年10月 [査読有り]
  • 【書評】林洋輔『デカルト哲学と身体教育』
    今井 悠介
    フランス哲学・思想研究 21 297 - 301 2016年09月 [招待有り]
  • 思惟における分離可能性と区別—近世スコラとデカルトの区別論—
    今井 悠介
    フランス哲学・思想研究 20 98 - 107 2015年09月 [査読有り]
  • On Descartes' Clear and Distinct Perceptions and its Relation to Ideas
    今井 悠介
    Proceedings of The 8th BESETO Conference of Philosophy 83 - 89 2013年10月
  • デカルト哲学における明晰判明性の概念について
    今井 悠介
    論集(東京大学大学院哲学研究室) 32 65 - 78 2013年06月 [査読有り]
  • 今井 悠介
    論集(東京大学大学院哲学研究室) 31 127 - 140 東京大学大学院人文社会系研究科 2012年06月 [査読有り]
  • 今井 悠介
    論集(東京大学大学院哲学研究室) 30 118 - 131 東京大学大学院人文社会系研究科 2011年06月 [査読有り]

書籍

  • デカルト『方法序説』注解
    [訳] 山田弘明; クレール・フォヴェルグ; 今井悠介 (担当:共訳範囲:)ニコラ・ポワソン 知泉書館 2022年12月
  • デカルトの生涯
    [訳]香川知晶/山田弘明/小沢明也/今井悠介 [序・注解]アニー・ビトボル-エスペリエス (担当:共訳範囲:)アドリアン・バイエ 工作舎 2022年02月

講演・口頭発表等

  • クラウベルクとデカルトにおける「存在するもの」について––「存在論(Ontologia)」とデカルト哲学の交錯––
    今井悠介
    第33回白山哲学会(東洋大学) 2023年10月 口頭発表(一般)
  • 存在論(Ontologia)とデカルトにおける存在するものについて  [招待講演]
    今井悠介
    京都ヘーゲル讀書會 令和四年度 冬季研究例會(オンライン開催) 2023年01月 口頭発表(一般)
  • 「原因からの論証」と存在論の体系––クラウベルク『オントソフィア』初版(1647年)の体系構成について––  [招待講演]
    今井 悠介
    「近代初期における学知の方法と論証」研究会(京都私学会館) 2019年08月 口頭発表(一般)
  • 矛盾律は第一の原理であるのか?––スアレス・デカルト・クラウベルク––  [通常講演]
    今井 悠介
    第1回初期近代哲学ワークショップ(神戸大学東京オフィス) 2019年03月 口頭発表(一般)
  • 「存在-神-論」という枠組みについて––デカルト研究の観点から––  [招待講演]
    今井 悠介
    国際哲学研究センター(IRCP)主催連続研究会「近世哲学への新視点II」第3回 2019年02月 口頭発表(一般)
  • クラウベルク『オントソフィア』とデカルトのEgo  [招待講演]
    今井 悠介
    東洋大学近世哲学研究会 2018年02月
  • デカルトにおけるEgoの問題と存在論の無  [通常講演]
    今井 悠介
    日本哲学会 第76回大会 2017年05月
  • La séparabilité dans la pensée et la distinction: La scholastique moderne et la théorie cartésienne de la distinction  [招待講演]
    今井 悠介
    Table ronde sur la mathématique, physique et métaphysique chez Descartes 2016年09月
  • クラウベルクと哲学の端緒—『オントソフィア』の存在論—  [通常講演]
    今井 悠介
    哲学会 第五十四回研究発表大会 2015年11月
  • 存在論と第一哲学:クラウベルクとデカルト哲学の出会い  [通常講演]
    今井 悠介
    バロック・スコラ哲学研究会(慶應義塾大学) 2014年09月
  • On Descartes' Clear and Distinct Perceptions and its Relation to Ideas  [通常講演]
    今井 悠介
    The 8th BESETO Conference of Philosophy 2013年10月
  • デカルトにおける三種の区別の議論とその背景  [通常講演]
    今井 悠介
    日本哲学会 第72回大会 2013年05月
  • デカルト哲学における明晰判明性の問題  [通常講演]
    今井 悠介
    日仏哲学会 2012年秋季研究大会 2012年09月

MISC

  • 書評「上野修、鈴木泉編『スピノザ全集III エチカ』、Jean-Luc Marion, Questions cartésiennes III、『ダンジョンズ&ドラゴンズ デラックス・プレイ・ボックス』」
    今井悠介 フィルカル(株式会社ミュー) 8 (1) 42 -43 2023年04月
  • 書評「アントワーヌ・アルノー『ポール・ロワイヤル論理学』、Howard Hotson, The Reformation of Common Learning、スチュワート・ウッズ『ユーロゲーム』」
    今井悠介 フィルカル(株式会社ミュー) 7 (1) 18 -19 2022年04月
  • 書評 ドゥニ・カンブシュネル『デカルトはそんなこと言ってない』(津崎良典訳)
    今井悠介 図書新聞 (3533) 2022年03月 [招待有り]

受賞

  • 2015年09月 日仏哲学会 若手研究者奨励賞(第二回)
     
    受賞者: 今井 悠介

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 初期「存在論」の体系性の成立についての生成史的研究
    日本学術振興会:科学研究費助成事業(若手研究)
    研究期間 : 2025年04月 -2030年03月 
    代表者 : 今井悠介
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業(若手研究)/課題番号 19K12930
    研究期間 : 2019年04月 -2023年03月 
    代表者 : 今井 悠介
     
    17世紀初頭-18世紀半ばにかけて成立した学問である「存在論(オントロギアOntologia)」の生成、およびその展開を分析することで、「あらゆる存在者に備わる一般的性質」を探求するこの学問の可能性と射程を明らかにすることが本研究の目的であるが、本年度の成果は以下の通りである。 1)ヴォルフの「存在論(Ontologia)」における主要著作である、『第一哲学あるいは存在論(Philosophia Prima sive Ontologia)』(1730年)のテキストを、初版のラテン語原典に基づいて検討した。特に、「プロレゴメナ」における明晰判明性概念や、原理である矛盾律の導入における思惟への依拠など、初期存在論と比べデカルト主義的と思われる要素を中心に検討を加えた。対比項として念頭に置いたのは、初期存在論の中心的哲学者の一人であるクラウベルクの主著『オントソフィア』である。成果として、ヴォルフでは「知解可能なもの」や「存在者」などの基礎概念に先立って、矛盾律や充足理由律などの原理がまず論証されるが、この構造はティンプラーやアルステッド、クラウベルクら初期存在論と全く異なっていること、またそれが、ヴォルフが展開した旧来のスコラ的「存在論」批判と密接に結びついていることが明らかになった。また、原理の論証に「経験」が用いられるが、その「経験」はクラウベルク『オントソフィア』初版で用いられる経験概念と異なっていることが明らかになった。他方で明晰判明性概念に関しては、基本的な方向性としては『オントソフィア』第2版以降のものに合致していることが確認できた。 2)ヴォルフの「存在論」に関して、J. EcoleやJ-P. Paccioniらの先行研究を批判的に検討し整理した。ヴォルフの「経験」概念に関してはチルンハウスとライプニッツの影響を踏まえて考慮する必要があるという課題が浮き彫りになった。
  • 日本学術振興会:特別研究員奨励費(PD)/ 課題番号 17J08686
    研究期間 : 2017年04月 -2020年03月 
    代表者 : 今井 悠介
     
    「存在論」との比較によって近世形而上学の構造改革、およびその系譜におけるデカルト哲学の特性を明らかにすることを目的とする本研究であるが、本年度の成果は以下の通りである。 1) デカルト形而上学と存在論の体系比較のための基礎的作業として、「存在-神-論」というハイデガー由来の解釈枠組の検討を行った。その結果、ハイデガーの内部でも「存在-神-論」概念は時期により変遷があり多義的であることが明らかになった。その意味は「自己原因」、「哲学に神が入ってくること」、「存在論と神学の二重的基礎付け関係」に大きく分けられる。また、「存在-神-論」解釈を用いる論者の解釈を整理した。それぞれの解釈の利点を総合すれば近世形而上学のテキスト解釈において「存在-神-論」概念は有益であるという結論が得られた。 2) 第一原理としての矛盾律の扱いを、スアレス、デカルト、クラウベルクの哲学でそれぞれ検討した。その結果、三者とも矛盾律にやや否定的な評価を下しているが、その理由は各々異なり、それが体系構成の差異に結びついていることが明らかになった。また、スアレス-クラウベルクが形而上学の体系として類似した系統に属することを確証し、デカルトがそうした体系とは異なる体系を取っており、そしてそれは第一原理の規定と関係があることを明らかにした。 3) 17世紀末以降の存在論の系譜であるヴォルフ、バウムガルテンの哲学と存在論、およびデカルト主義の関係についての研究を行った。昨年度の研究によって、クラウベルクの「存在論」的哲学にはデカルト主義の影響が従来想定されていたよりも小さいこと、また従来想定されていたのと異なる部分において(明晰判明性、具体例の重視など)影響が表れていることを明らかにしたが、ヴォルフ、バウムガルテンではクラウベルクより明確にデカルト主義が取り込まれていること、またその取り込まれた箇所の一部を明らかにした。
  • 日本学術振興会:特別研究員奨励費(DC1)/ 課題番号 11J10398
    研究期間 : 2011年04月 -2014年03月 
    代表者 : 今井 悠介
     
    本研究は、アリストテレス-スコラ的な類種概念による秩序から別の秩序への転換という視点を軸に、デカルト存在論の特質を描くことを目的とする。本年度は以下の研究を実施した。1/存在論を形作る概念枠組みの変化を研究するため、前年度に引き続き主にスアレス、エウスタキウスらデカルト以前の近世スコラ哲学者との比較を行った。スアレスの区別論において、他の諸々の区別を三つの区別のみに帰着させるという構造化がなされ、この構造化・単純化を引き継いだのがデカルトであることを明らかにした。エウスタキウスにおいてはこのような構造化がなされておらず、デカルトのものと異なっている。以上の系譜関係は認められつつも、普遍自体の考察を素通りし、区別の徴表の議論を実体論に先立たせ、その前提とさせるデカルトの議論構成において、スアレスの体系構成の換骨奪胎が起こっており、存在論の議論構成においてもドラスティックな変化が起きたことを明らかにし、以上の成果を日本哲学会において発表した。2/デカルトの強い影響を受けた近世スコラ哲学者であるクラウベルクの検討、およびアルノー、ニコルの『ポールロワイヤル論理学』の検討を行った。クラウベルクにおいて、アリストテレスのカテゴリー論批判の議論とデカルト哲学の摂取が結びつく次第を検討し、また、『ポールロワイヤル論理学』において、オルガノン的枠組みとデカルト哲学の概念群がどのように架橋されているのかを検討した。その結果、デカルト哲学の概念群が、オルガノン的枠組みの一部を刷新し、後の哲学者の体系構成に変化を与えるものであったことを明らかにした。3/デカルトの存在論に関するマリオン、クルティーヌらの先行研究を整理し、デカルト哲学の体系構成の検討を行った。また、本有性、明晰判明性等々の概念群の関係を整理することで、観念の理論がデカルト存在論とどのように関係するかという問題の一端を明らかにした。

担当経験のある科目

  • 哲学史AB(教養科目・近世合理論の哲学史)
    東洋大学
  • 哲学AB(教養科目・デカルト『省察』入門)
    東洋大学
  • 井上円了と東洋大学(全学総合)
    東洋大学
  • 近世近代哲学史概説AB(近世〜現代西洋哲学史)
    東洋大学
  • 哲学講義(デカルト『省察』入門講義)
    学習院大学
  • 思潮文化論II(学部教養科目・哲学入門)
    帝京大学
  • 西洋古典語語学A・B(初級ラテン語文法)(静岡県立大学)
  • ヨーロッパ思想A・B(古代・中世哲学史)(静岡県立大学)
  • 哲学入門(全学共通科目・哲学)
    成城大学
  • ヨーロッパの思想講義II(仏)(学部専門科目・17〜20世紀のフランス哲学史)
    成城大学
  • ヨーロッパの思想特殊講義II(仏)(学部専門科目・デカルト哲学講義)
    成城大学

その他のリンク

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