今井 悠介 (イマイ ユウスケ)
| ![]() |
17世紀のヨーロッパ近世哲学について、特にデカルトの形而上学に焦点を当てながら研究しています。とりわけ、デカルトの前の時代であるスアレスら近世スコラ哲学の系譜との差異、および同時代に勃興しつつあった「存在論(Ontologia)」の系譜との差異を検討することによって、形而上学体系としてのデカルトの哲学が西洋の形而上学の系譜の中でどのような特異性を持っているのかを研究の中心テーマとしています。その観点から、「神」や「無限」、あるいは「区別」や「実体」といった中世スコラ哲学以来の伝統的な諸主題をデカルトがどのように換骨奪胎し、自身の新たな体系に組み込んでいくのかを分析することを試みています。また、「私(Ego)」や「観念」といったデカルトが新たに切り開いた問題系も、こうした近世スコラ哲学や「存在論(Ontologia)」など伝統的なものを含めた様々な系譜との差異を足場にすることにより、体系上の機能という観点で新たな光を当てることも課題としています。こうした諸課題を通して、デカルトが開いた近世・近代の新たな思考の特質を明らかにし、近代という時代の条件の一端を明らかにすることを目的としています。
また、デカルトとほぼ同時代、17世紀に新たに勃興しつつあった学問である「存在論(Ontologia)」の研究も並行して行なっています。ヴォルフに至って確立されたとされるこの「存在論(Ontologia)」ですが、近年の研究の進展により、17世紀初頭にまで遡るその起源が明らかにされつつあります。実はデカルトの哲学とこの「存在論(Ontologia)」は複雑な関係を持っています。この関係を解き明かすために、スコトゥス主義的な起源を持ち、「最も一般的な存在者」を探求するこの学問における最も重要な著者の一人であるヨハネス・クラウベルク(Johannes Clauberg, 1622-1665)の哲学を、「存在論」の初期の代表的人物であるという観点と、また初期の代表的デカルト主義者の一人でもあるという二つの観点から分析しています。デカルト主義が、おそらく独立した起源を持つ「存在論(Ontologia)」の系譜にどのように関係してくるのか、という問いが目下の課題になっています。