Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research
Date (from‐to) : 2023/04 -2026/03
Author : 鈴森 康一; 増田 容一; 難波江 裕之; 郡司 芽久; 原田 恭治; 福原 洸
順調に研究は進んでいる.①動物屍解剖,②生きた動物の運動解析,③深層生体模倣)に沿って順に説明する.
①屍解剖:ニホンジカ,ウマ,ウシ等の屍解剖を行うとともに,組織(特に靭帯)の力学的特性測定を実施した.特に,筋肉や骨格とその周辺の柔軟組織との癒着状態,頸部靭帯の形態的多様性と力学特性が明らかになった.特に本年度着目した一つが,生体組織間の「癒着と潤滑」である.骨格や筋肉,二頭筋や四頭筋などの協働筋の間,一部の膜組織はそれぞれしっかりと癒着している一方で,ヒラメ筋と腓腹筋など一部の筋肉の間や,腓腹筋など一部の筋肉と骨の境界では潤滑していることがわかった.膜状の組織が幾重にも折り重なった生体内において,「癒着と潤滑」の配置を特定するために,墨汁を用いて「癒着と潤滑」の配置を特定する手法(墨汁法)を新たに確立した.
②生きた動物の運動解析:ビーグル犬の後肢の連動機構を調査するためにX線を用いて股関節・膝関節・足根関節の角度変化を測定し,股関節が130度以上の条件で膝関節と足根関節の連動機構が発現することを明らかにした.また,動作解析システムを用いて後肢骨格の関節角度の変化と表面電極を用いた筋電図の同期が可能であることを確認した.この中で,殿筋群の活動は股関節が伸展し始める最初の動作にしか影響していない可能性が示された.
③深層生体模倣:イヌの脚部および前脚肩部の筋骨格系を模倣し,脚軌跡の再現とwalkに成功した.また,膝蓋骨内包脱臼のイヌの骨格データを用い,疾病の再現が行えた.また,癒着と潤滑の模倣に関して,「癒着と潤滑」を模倣する造形法を開発した.さらに,人工筋の表面をナイロンポリ袋によって保護して潤滑させる人工筋筋膜モジュールを開発した.脚部と体幹部の接続様式を模倣し,肩周りの柔軟性が様々な移動様式に及ぼす影響をロボット実機実験により検証することが可能となった.