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長津 一史ナガツ カズフミ

所属・担当
社会学部社会文化システム学科
アジア文化研究所
社会学研究科社会学専攻
職名准教授
メールアドレスnagatsu[at]toyo.jp ※[at]を@に書き換えて送信して下さい
ホームページURL
生年月日
Last Updated :2018/12/08

研究者基本情報

学歴

  • 1993年04月 - 1998年03月, 京都大学, 人間・環境学研究科, 文化・地域環境学
  • 1992年04月 - 1993年03月, 上智大学, 大学院外国語学研究科
  • 1987年04月 - 1992年03月, 上智大学, 外国語学部, ロシア語学科

学位

  • 人間・環境学修士, 京都大学
  • 博士(地域研究), 京都大学

所属学協会

  • 東南アジア学会
  • 日本文化人類学会
  • 日本熱帯生態学会
  • 日本マレーシア学会

委員歴

  •   2012年 - 現在, 東南アジア学会, 選任理事
  •   2004年01月 - 2005年05月, 東南アジア史学会, 総務委員長

経歴

  •   2006年04月 - 現在, 東洋大学, 社会学部, 准教授
  •   2017年10月 - 2018年03月, シンガポール国立大学, アジア研究所, 客員上級研究員
  •   2017年04月 - 2017年09月, 京都大学, 東南アジア研究所, 客員准教授
  •   2005年05月 - 2006年03月, 京都大学, 東南アジア研究所, 助手
  •   2000年05月 - 2005年04月, 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助手
  •   1998年04月 - 2000年04月, 日本学術振興会, 特別研究員(PD)

研究活動情報

研究分野

  • 地域研究, 地域研究, 東南アジア研究
  • 地域研究, 地域研究, 東南アジア社会動態論
  • 文化人類学, 文化人類学・民俗学, 文化人類学

研究キーワード

    環境の政治学, 海民の社会史, 東南アジア海域, 国家と社会, サマ・バジャウ

論文

  • Maritime Diaspora and Creolization: Genealogy of the Sama-Bajau in Insular Southeast Asia, 長津 一史, Senri Ethnological Studies , 95, 35 - 64,   2017年12月
  • Social Space of the Sea Peoples: A Study on the Arts of Syncretism and Symbiosis in the Southeast Asian Maritime World, 長津 一史, 上智アジア学, 33, 111 - 140,   2016年03月
  • マレーシア・サバ州におけるイスラームの制度化――歴史過程とその特徴, 長津 一史, 東洋大学アジア文化研究所研究年報, 48, 279 - 296,   2014年
  • 東インドネシア、海民の社会空間――ゲセル島で村井さんと考えたこと, 長津 一史, ワセダアジアレビュー, 14, 31 - 34,   2013年
  • 東南アジアの交易をめぐる海民社会のダイナミクス, 長津 一史, 季刊民族学, 133, 47 - 51,   2010年
  • 『海民』の生成過程―インドネシア・スラウェシ周辺海域のサマ人を事例として, 長津 一史, 白山人類学, 15, 45 - 71,   2012年
  • A Preliminary Spatial Data on the Distribution of the Sama-Bajau Population in Insular Southeast Asia, 長津 一史, 白山人類学, 13,   2010年
  • サマ・バジャウの人口分布に関する覚書――スラウェシ周辺域を中心に, 長津 一史, アジア遊学, 113, 92 - 102,   2008年
  • Arti Sosial Perbatasan Negara: Kaji Ulang Mobilitas Orang Laut di Asia Tenggara Modern, 長津 一史, 東洋大学アジア地域研究センター2007年度学術フロンティア報告書, 70 - 85,   2007年
  • イスラームの制度化と宗教変容――マレーシア・サバ州、海サマ人の事例, 長津 一史, 南太平洋海域調査研究報告, 43, 45 - 69,   2006年
  • 『正しい』宗教をめぐるポリティクス――マレーシア・サバ州、海サマ人社会における公的イスラームの経験, 長津 一史, 文化人類学, 69, (1) 45 - 69,   2004年
  • 周辺イスラームにおける知の枠組み――マレーシア・サバ州、海サマ人の事例(1950-70年代), 長津 一史, 上智アジア学, 20, 173 - 196,   2002年
  • Pirates, Sea Nomads or Protectors of Islam? A Note on “Bajau” Identifications in the Malaysian Context, 長津 一史, Asian and African Area Studies, 1, 212 - 230,   2001年
  • 西セレベス海域におけるサマ人の南下移動――素描, 長津 一史, 上智アジア学, 15, 99 - 131,   1997年
  • 海の民サマ人の生活と空間認識――サンゴ礁空間t’bbaの位置づけを中心として, 長津 一史, 東南アジア研究, 35, (2) 261 - 300,   1997年
  • Research on Bajau Communities: Maritime People in Southeast Asia, Lapian, A. B. and NAGATSU, Kazufumi, Asian Research Trends: A Humanities and Social Science, 6, 45 - 70,   1996年
  • 海の民サマ人の生計戦略, 長津 一史, 季刊民族学, 74, 18 - 31,   1995年
  • スルー諸島における近代化と社会変容――漂海民バジャウの定住化をめぐって, 長津 一史, 熱帯研究Tropics, 3, (2) 169 - 188,   1994年

MISC

  • 書評:信田敏宏著『周縁を生きる人びと――オラン・アスリの開発とイスラーム化』」, 長津 一史, 文化人類学, 71, (1) 144 - 147,   2006年
  • Islamization of the Sama Dilaut in Sabah, Malaysia, 長津 一史, IIAS News Letters (Leiden: The International Institute for Asian Studies), 31,   2002年
  • 国境を利用して生きる人々, 長津 一史, アジアセンターニュース (国際交流基金), 20,   2002年
  • 海に暮らす――スルー海域サマ人の杭上家屋, 長津 一史, コミュニティ(地域社会研究所), 127,   2001年
  • 海サマとダイナマイト漁――サンゴ礁『保護』をめぐる視点, 長津 一史, 日本熱帯生態学会ニューズレター, 37,   1999年
  • 水上集落, 長津 一史, 事典東南アジア――風土・生態・環境,   1997年
  • スルー海域, 長津 一史, 事典東南アジア――風土・生態・環境,   1997年
  • 海民――移動する生きざま, 長津 一史, 総合的地域研究, 15,   1996年
  • Sama Bajau Newsletter, Lapian Adrian B. and NAGATSU Kazufumi edited, Sama Bajau Newsletter, 2,   1996年
  • Sama Bajau Newsletter, Lapian Adrian B. and NAGATSU Kazufumi edited, Sama Bajau Newsletter, 1,   1995年
  • Magambit: The Sama’s Tradi- tional Fishing Technique and its Change., 長津 一史, Sama Bajau Newsletter, 1,   1995年05月

書籍等出版物

  • 海民の移動誌―西太平洋の海域文化史(小野林太郎・長津一史・印東道子(編))
    長津 一史
    共編者東南アジアにみる海民の移動とネットワーク――西セレベス海道に焦点をおいて、148-177ページ昭和堂  2018年03月
  • 生態資源――モノ・ヒト・場を生かす世界(山田勇・赤嶺淳・平田昌弘(編)))
    長津 一史
    分担執筆ひと・海・資源のダイナミクス――東南アジア海域世界におけるバジャウ人と商業性, 55-82ページ京都:昭和堂  2018年05月
  • 東南アジア地域研究入門3—政治(山本信人(編))
    長津 一史
    分担執筆境域、71-91ページ慶應義塾大学出版会  2017年02月
  • 小さな民のグローバル学――共生の思想と実践をもとめて(甲斐田万智子・佐竹眞明・長津一史・幡谷則子(編))
    長津 一史
    共編者海民の社会空間――東南アジアにみる混淆と共生のかたち、111-140ページ上智大学出版会  2016年01月
  • Proceedings of Asian CORE Workshop on Interface, Negotiation, and Interaction in Southeast Asia, edited by Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University
    長津 一史
    分担執筆Jalan Tikus on the Sea: Persisting Maritime Frontier and Multi Layered Networks in Wallacea, pp. 55-71Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University.  2013年10月
  • 民族大国インドネシア―文化継承とアイデンティティ(鏡味治也(編))
    長津 一史
    分担執筆異種混淆性のジェネオロジー――スラウェシ周辺海域におけるサマ人の生成過程とその文脈, 249-284ページ東京: 木犀社  2012年
  • 民族大国インドネシア―文化継承とアイデンティティ(鏡味治也(編))
    長津 一史
    分担執筆インドネシアの2000年センサスと民族別人口, 37-48ページ東京: 木犀社  2012年
  • 開発の社会史――東南アジアにおけるジェンダー・マイノリティ・境域の動態(長津一史・加藤剛(編))
    長津 一史
    分担執筆開発と国境――マレーシア境域における海サマ社会の再編とゆらぎ, 473-517ページ東京: 風響社  2010年
  • 開発の社会史――東南アジアにおけるジェンダー・マイノリティ・境域の動態(長津一史・加藤剛(編))
    長津 一史
    分担執筆序 島嶼部東南アジアの開発過程――周縁世界の経験とアクチュアリティの理解に向けて, 7-31ページ東京: 風響社  2010年
  • 開発の社会史――東南アジアにおけるジェンダー・マイノリティ・境域の動態
    長津一史・加藤剛(編)
    編者東京: 風響社  2010年
  • 朝倉世界地理講座3 東南アジア(春山成子・藤巻正巳・野間晴雄(編))
    長津 一史
    分担執筆島嶼部東南アジアの海民――移動と海域生活圏の系譜, 250-259ページ東京: 朝倉書店  2009年
  • 多言語社会インドネシア――変わりゆく国語,地方語,外国語の諸相(森山幹弘・塩原朝子(編))
    長津 一史
    分担執筆境域の言語空間――マレーシアとインドネシアにおけるサマ人の言語使用のダイナミクス, 183-212ページ東京: めこん  2009年
  • Crossing Disciplinary Boundaries and Re-visioning Area Studies: Perspectives from Asia and Africa, edited by Maruyama Junko, et al.
    長津 一史
    分担執筆Cross-Border Movements and Convertibility of Maritime Networks: A Case of the Sama-Bajau in the Sulu-Makassar SeaKyoto: Graduate School of Asian and African Area Studies/ Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University  2006年
  • 海外の宗教事情に関する調査報告書(文化庁(編))
    長津 一史
    分担執筆マレーシア島嶼部(サバ州), 187-210ページ東京: 文化庁  2005年
  • 変容する東南アジア社会―民族・宗教・文化の動態(加藤剛(編))
    長津 一史
    分担執筆<正しい>宗教の政治学――マレーシア国境海域におけるイスラームと国家, 245-293ページ東京: めこん  2004年
  • 海域アジア(叢書現代東アジアと日本4)関根政美・山本信人(編)
    長津 一史
    分担執筆越境移動の構図――西セレベス海におけるサマ人と国家, 173-202ページ東京: 慶應義塾大学出版会  2004年
  • 海のアジア3 島とひとのダイナミズム(尾本惠市・濱下武志・村井吉敬(編))
    長津 一史
    分担執筆海と国境――移動を生きるサマ人の世界, 173-202ページ東京: 岩波書店.  2001年
  • フィールドワーク最前線――見る・聞く・歩く(山田勇編)
    長津 一史
    分担執筆セレベス海域サマ人の移動と交流小史――ココヤシを運んだ海民たちを追って, 153-172ページ東京:弘文堂  1996年

講演・口頭発表等

  • Sea Peoples’ Creolism and its Political Settings in Southeast Asian Maritime World, 長津 一史, The 12th International Conference on Hunting and Gathering Societies,   2018年07月27日, International Society for Hunter Gatherer Research
  • Islamization Compared: Processes of Becoming “Pious Bajau” in Malaysia and Indonesia, 長津 一史, Asian Research Institute Cluster Seminar: Religionization at Margins in Insular Southeast Asia: Introducing Recent Southeast Asian Studies in Japan,   2018年03月20日, Asia Research Institute, National University of Singapore, This seminar aims at introducing recent Southeast Asian studies in Japan focusing on the religionization of marginalized peoples, such as minorities or peoples in the peripheries in Insular Southeast Asia. In the last few decades, the national religious authorities have shaped public affairs and deeply intervened in the every-day religious lives in Malaysia and Indonesia, while global non-governmental missionaries have extended their outreach activities to the least visited communities in the Philippines and Indonesia. Experiencing these modern religionization process, religious life of the marginalized peoples has changed more drastically than that of the mainstream societies. The reason is that the religious order of the modern nation-states or global missionaries is configured on the basis of the ideals, values and concepts of the mainstream societies which are often far different from those of the marginalized peoples. How have such marginalized peoples reorganized their religious lives in the religionization process? This general question will be addressed in the following three presentations in this seminar: Islamization of the Bajau in Sabah, Malaysia and eastern Indonesia; Christianization of the Sama Dilaut/Bajau in Mindanao, the Philippines; and cultural reorientation of “Bissu” or androgynous priests among the Bugis, in South Sulawesi, Indonesia.
  • Maritime Movements and Ethic Reformation of the Bajau in Indonesian Maritime World, 長津 一史, International Science Conference on Bajo Society,   2017年05月08日, 招待有り, Hasanuddin University
  • Bajau as Maritime Creoles: Dynamic of the Ethnogenesis in Southeast Asian Maritime World, 長津 一史, The 6th International Symposium of Jurnal Antropologi Indonesia,   2016年07月28日, University of Indonesia
  • 東南アジア海民論と二つの比較―地域研究的越境の試みとして, 長津 一史, 第95回東南アジア学会研究大会(大阪大学),   2016年06月05日, 東南アジア学会,  わたしは近年、東南アジア海民論の試論として二つの論文[長津 2012, 2016]を書いた。そこでは、東南アジアの海民がしばしばクレオール集団を構成してきたことに着目し、そうした民族生成が生じる場の政治過程やその社会空間について考えた。政治過程については周縁性・違法性・自立性を、社会空間については持続的な混淆と在地の共生を、それぞれの特徴として挙げた。本報告では、わたしがそうした海民論を考えるなかで、どのような比較を設定していたのか、また東南アジア海民論のさらなる展開をみすえたとき、どのような比較が地域研究として意味を持ちうるのかを検討してみたい。  取りあげるのは、わたしが調査を続けてきたバジャウ人である。報告ではまず、バジャウ人の民族生成に焦点をおいた上記の海民論を紹介する。そのうえで、そこでの議論が、第一に地域内比較を手法として展開されたこと、第二に地域間比較を念頭において構想されたことを示す。  第一の地域内比較とは、フィールドワークに基づく約60の海民集落間、あるいはそれらが位置する海域圏間の比較を指す。この空間軸での比較と変化を手がかりとする時間軸での比較こそが、上記の海民論の基点、つまりバジャウ人をクレオール海民という視点で動態的に理解することを可能にした。  第二の地域間比較は、メタ地域間比較とグローバル地域間比較にわけられる。メタ地域間比較とは、東南アジアあるいはアジアの異なる「地域」、具体的にはジャワや東アジアの「陸域世界」との比較を指す。この比較では、1980年代以降の東南アジア海域世界論における陸地中心史観に対する批判をわたしの海民論に接合している。その内容は、アカデミズムにおける地域認識の相違を批判的に提示することを企図している。この容易ならざる比較をここで無謀にも取りあげるのは、それを射程におくことなしに、地域研究における東南アジア海民論の意義を示すことができないからである。  もうひとつのグローバル地域間比較とは、海民や海域世界を一般概念・類型として措定し、その内容や歴史過程を地域ごとに比較考察するかたちの比較である。それは、海民や海域世界の地域性/通地域性(普遍性)、時代性/通時代性(プロトタイプ性)を明らかにすることを目指す試みである。グローバル地域間比較については、東アジア海域世界を対比事例として簡潔に展望を述べる。
  • The Making of ‘Pious Bajau’: Two Cases of Islamization at Margin in Malaysia and Indonesia, in Panel “Ethnic Re/formation at Margins: Negotiations with Global Institutions, NGOs and Missionaries in Insular Southeast Asia.” (Organizer: Kazufumi, Naga, 長津 一史, Consortium for Southeast Asian Studies in Asia (SEASIA) “Southeast Asian Studies in Asia” Conference. Kyoto: Kyoto International Conference Center.,   2015年12月12日, Consortium for Southeast Asian Studies in Asia (SEASIA), This presentation examines the “Islamization” of the Bajau, a maritime minority, in Malaysia and Indonesia by placing the process in local, national and global contexts. “Islamization” here refers to the process through which the Bajau have regarded themselves as “authentic” Muslims and also gained status as such in local society. The Bajau were once known as sea nomads and have so far constituted a distinctive maritime population in the region. Their settlements are dispersed widely from the southern Philippines, Sabah in Malaysia, to eastern Indonesia. Although they were once considered illegitimate Muslims by the neighboring dominant groups due to the latters’ prejudice, the Bajau are now reputed as pious Muslims in some regions. The processes of Islamization took place partially in connection with the global trend of Islamic resurgence starting in the 1970s. The processes have been, however, well modified in accordance with the local ethnic relations or the national religious policies, as well. In what contexts have the Bajau become “pious Muslims”? How similar or different are the contexts in Malaysia and those in Indonesia? These questions form the basis of the present study. Specifically, it analyzes and compares two cases of Islamization of the Bajau in Semporna, a border town in Sabah, Malaysia and in Sapekan, a remote island of East Jawa, Indonesia.
  • いかに『ふつう』の大学生を東南アジアに向かわせるか──古紙・古着・コーヒーの臨地教育とその道のり, 長津 一史, 第94回東南アジア学会研究大会(早稲田大学)統一シンポジウム「フィールドに学ぶ東南アジア--体験学習から研究者・実務家養成まで」(組織者:島上宗子・長津一史),   2015年12月06日, 東南アジア学会, 本報告では、報告者が東洋大学において約10年間関わってきた学部レベルの臨地(フィールド)教育プロジェクトを題材に、①その系譜・企図、②学生の反応、③課題と可能性の3点について話す。 報告者は、2006年、東洋大学社会学部に着任した。報告者は、この教育組織に東南アジアに関わる臨地教育を持ち込むことを目論んだ。しかし、そこには当時、海外臨地教育を支える制度基盤は存在せず、さらに学生の大半は東南アジアについての知識も関心も持っていなかった。こうした状況で考えついたのが、「ふつう」の学生でも見聞きしたことがあるような東南アジアに関わる問題と日本を、身近なモノを媒介に結びつけ、そこに臨地教育を組み入れることであった。1980〜90年代、市民運動に取り組む東南アジア研究者が、バナナやエビを題材として「南北問題」にアプローチした手法を真似たのである。具体的には、まず熱帯林伐採を念頭において「紙と古紙」を、ついで日常生活のグローバル化を念頭において「古着」をそれぞれテーマとする教育プログラムを組織した。別の教員は、社会運動のグローバル展開を念頭に「コーヒーのフェアトレード」を取りあげた。いずれのプログラムも日本と東南アジアの双方に体験学習の場を設定した。 こうして約10年の間に、東南アジアに関わる臨地教育をカリキュラム化することに成功した。とにもかくにも学生の東南アジアに対する関心を喚起することはできた。しかし、東南アジアでの体験学習にまで参加する学生の数はいまだ少数にとどまる。ボランティアの枠組みを超えて東南アジアに関心を持ち、自ら調査に取り組むような学生は現れていない。報告者の教育能力の不足もある。しかしおそらく問題は、東南アジアさらには海外自体への学生の興味関心が過去10年ほどの間、低下し続けていることに深く関わる、つまり構造的な性格を帯びている。一歩先の臨地教育に向かう道のりは、決して単調ではない。 東南アジア地域研究の専門家がおこなう臨地教育では、その人の地域に根ざした総合的な知識と広範なネットワークが大いに役立つ。その内容は、既成のスタディ・ツアーとは一線を画したレベルで構想されうる。ただし、専門家の関心の押しつけに学生は近づかない。学部学生向けの臨地教育は、自らの専門と、かれらを惹きつけることができそうな関心との妥協点に設定されることになる。東南アジア研究者は、自らのキャリアを活かしつつ、「ふつうの」大学生に向けてどのような臨地教育プログラムを構想しうるのか。本報告では、いま述べた東洋大学の臨地教育を事例としてこの問いを検討してみたい。
  • 海民の生成と社会空間――東南アジアにみる混淆と共生のかたち, 長津 一史, 「国を越える人々――越境の文化論」北九州:北九州市立大学北方キャンパス,   2015年11月23日, 北九州市立大学アジア文化社会研究センター, 21世紀にはいり、社会のグローバル 化が深化しているといわれている。 グローバル化という言葉には、その前 提として、国境を定める近代国家という社会システムの存在が不可分なもの として含まれている。しかし、その一 方で近代国家の成立以前より人々は移 動と越境を繰りかえしてきた。そして、 現代社会は、こうした越境の人々を巻 き込みながら、新しい文化複合を生み 出している。今回のシンポジウムでは、漂海民・華 人・島嶼民を対象にフィールドワーク をおこなっている3人の研究者が、それぞれの研究成果をもとに、近年の社 会変容も含め、近代的な国民国家の背 後に伏流する越境の文化を語る。
  • Orang Bajau sebagai Kreol Maritim: Ethnogesnesis dan Kontek Sosio-ekologinya di Laut Wallacea, 長津 一史, Seminar Nasional: Peranan Geografi dalam Mendukung Kedaulatan Pangan, Cibinon: Badan Informasi Geospasial,   2015年04月07日, 招待有り
  • 研究工具としての空間情報――インドネシア・フィリピンにおける民族動態を題材に, 長津 一史, 東南アジア学会関東例会,東京:東京外国語大学本郷サテライト.,   2014年11月22日
  • The Bajau as a Maritime Creole: Periphery, Mobility and Ethnic Process in Wallacean Sea, Southeast Asia, 長津 一史, International Borneo Research Council Conference (BRC 2014), Kota Kinabalu: Universiti Malaysia Sabah (UMS),   2014年08月05日, The Borneo Research Council (BRC)
  • Ethnogenesis of the Bajau as a Maritime Creole and its Socio-ecological Contexts in Wallacean Sea, Southeast Asia, 長津 一史, The 14th IUAES: International Union of Anthropological and Ethnological Sciences, Chiba: Makuhari Messe,   2014年05月29日, IUAES (International Union of Anthropological and Ethnological Sciences), This paper deals with the ethnogenesis of the Bajau as a maritime creole in Insular Southeast Asia. It aims at examining highly hybrid natures of their ethnic background and socio-ecological contexts of the environment where the mobile aquatic population have maintained such hybrid natures.
  • New Maneuver through Old Network: Maritime Folks’ Trading of Sea Turtle and Used Clothes in Wallacea, 長津 一史, Asian CORE Program Seminar “Interface, Negotiation, and Interaction in Southeast Asia, Kyoto: CSEAS, Kyoto University,   2014年02月11日
  • 「趣旨説明」および「民族生成をめぐる国家と地域の文脈――マレーシアとインドネシアのバジャウ人」, 長津 一史, 第22回日本マレーシア学会研究大会シンポジウム「比較のなかのマレーシア――民族と宗教に関する国家・地域間比較への展望」,   2013年12月, 日本マレーシア学会,  サマ・バジャウ(以下、バジャウ)人は、マレーシアのサバ州・インドネシアの東部・フィリピンの南部の三カ国に跨って居住する。本報告では、このバジャウ人の民族集団としての生成過程のダイナミクスについて、比較の視点から検討する。  3か国すべての人口をあわせたバジャウ人の総人口は約110万人。100万人程度の人口規模の民族が、これほど広域に拡散している例は、島嶼部東南アジアでは他にみられない。広大な海域での拡散居住とあわせてバジャウ人に特徴的なことは、3か国いずれの人口もバジャウ総人口のうちの一定の割合を占めていること、つまりバジャウ人はいずれかの国に集中的に分布しているわけではないことである。本シンポジウムのテーマとの関わりで興味深いのは、バジャウ人の社会的・文化的位相や、民族集団としての生成・再編の様式が上記の3か国で様々に異なっていることである。また、バジャウ人の民族再編は、1990年代以降のグローバル化ないしインドネシアの民主化の潮流のもと、従来にないかたちで展開しつつある。そのあり方にも国家間での差異がみられる。  本報告の目的は、3か国を単位とする国家間比較を念頭におきつつも、まずはインドネシアとマレーシアの事例を取りあげて、バジャウ人の民族生成・再編の過程を比較検討することにある。具体的には、まず1)インドネシアにおけるバジャウ人の生成・再編の過程を、植民地化以前から国民国家成立以降までの時間軸で通観し、その連続性と非連続性を検討する。ついで2)1の過程をマレーシアにおけるバジャウ人の生成・再編の過程と対照させ、両者の過程にみられる異同(主にマレーシア側の独自性)を示す。そのうえで、3)1990年代以降のグローバル化状況における民族再編メカニズムの、インドネシア、マレーシアそれぞれ独自性と通地域的な共通性をも展望してみたい。
  • From Tortoise Shell to Grouper: Marine Resource Exploitation and the Making of Maritime Creole in Wallacea, 長津 一史, International Workshop: World History for Current Issues: Environmental Issues, Globalization, and Conflicts,   2013年10月, 招待有り, Global History Collaborative, My research is concerned with the marine resource exploitation and its significance in the making process of “maritime creoles” in Wallacean Sea. In Insular Southeast Asia, sea-oriented peoples of varied origins have occasionally emerged or formed a maritime creole. The Malay are a well-known sea-oriented ethnic group of which ancestors are of highly hybrid in nature. The Balangigi who were once recorded as pirates in the western literature may also be such a creole group. The proposed research pays special attention to the Sama-Bajau as the maritime creole. Through the analyse, it aims at understanding 1) patterns of their marine resource exploitation, 2) structures of the fishing and trading networks of the marine products and 3) socio-ecological characteristics at a certain maritime environment where the maritime folk have maintained and reconstructed highly hybrid natures in relation to the formation of their community and identity. With an approximate population of 1,100,000, many of the Sama-Bajau live along coasts and on islands. Their settlements are dispersed widely over the southern Philippines, coasts of Sabah, Malaysia, and eastern Indonesia. They constitute one of the most distinctive maritime folks in Insular Southeast Asia. It is in my understanding less significant to seek their “true” origin from the historical essentialists’ viewpoint, as the Sama-Bajau and the neighbouring communities are supposed to have constantly converted their ethnic identification from non-Sama-Bajau into Sama-Bajau, or vice versa. Their marine resource exploitation and network formation are considered to be a key to understanding the making process of the Sama-Bajau as a maritime creole. The discussion will focus on the use and trade of sea turtle (Eretmochelys imbricate and Chelonia mydas), tropical trepang (Holothuriidae spp.) or live groupers (Plectropomus leopardus and others), which have been exported exclusively to the Chinese markets. The Sama-Bajau have long and most intensively been involved in the fishing of these products in Southeast Asia. The study pays particular attention to the cases of the Sama-Bajau in Kangean islands, East Jawa and the other parts of eastern Indonesia, although it partially refers to the cases of the Sama-Bajau in Sulu Archipelago, the Philippines and Sabah, Malaysia. The Kangean islands are situated at the nodal point of major sea routes, i.e. Jawa Sea, Makassar Straits and Flores Sea. The study is mainly based on the statistical and spatial data, such as censuses or GIS, and the fieldworks which I have conducted among the Sama-Bajau villages since 1995.

競争的資金

  • 境域からみたアジア地域像の再構築―豪州・インドネシアの比較研究を基点として, 日本学術振興会, 科学研究費補助金挑戦的研究(萌芽), 長津 一史
  • 東南アジア島嶼部における国境管理レジームと境域社会の変容―地域間比較の視点から, 日本学術振興会, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 長津 一史
  • 消費様式から見た国民文化形成の文化人類学的研究:インドネシア等の生活用品調査から, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 鏡味 治也, 本研究は、インドネシアを主な研究対象地、隣国のマレーシア、シンガポール、フィリピンを比較対照の事例として、各国内での消費様式や生活必需品の共通度、普及度を検証し、それが国民文化や民族文化の形成に果たす役割を明らかにすることを目的とする。2年目にあたる本年度は、初年度に作成した生活用品リストを、昨年度の試行調査にもとづき夏前に国内で研究打合せを行って修正し、夏以降参加者が手分けしてインドネシア等で資料収集調査を行った。それをもとに年度末の国内打合せでWeb上での収集データの共有方法を検討した。本年度の研究打合せおよび海外調査も、研究代表者・分担者のほか、研究協力者として阿良田麻里子(国立民族学博物館・外来研究員)と森田良成(天理大学国際学部・非常勤講師)を加えて実施した。資料収集調査は昨年度とは異なるインドネシア国内7カ所で実施したほか、北タイのチェンマイでもデータ収集を試みた。2年目となり、調査品目をスリム化し、かつ聞きやすいように関連項目のくくり方を工夫したおかげで、昨年度よりは効率的にデータ収集が行えた。そのいっぽうでは、次第にあまりなじみの無い地域でのデータ収集も増えてきたため、集まる情報がなじみのある地域でのそれに比べて薄くなりがちだという反省も聞かれる。生活用品の聞き取りを通じて、その家族の生活誌が浮かび上がる面白さは着実に調査者に実感されるが、そろそろ集積したデータを比較して、地域ごと、民族ごと、あるいは国ごとの差異と共通性を浮かび上がらせる段階に来ており、次年度はそれに取り組む予定である。
  • ユーラシア大陸辺境域とアジア海域の生態資源をめぐるエコポリティクスの地域間比較, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(A)), 山田 勇, 本研究の目的は、ユーラシア大陸辺境域の「生態資源」に焦点を当て、1)生態資源をとりまく変容過程を明らかにし、2)生態資源への国家規制と住民の対応を調査し、小地域の投げかける新たな方向性を見いだし、合わせて、3)生態の全く異なる二地域における共通性を探ることによって両地域の実像を浮かび上がらせることにある。現地調査としては、フィリピンのビコールやビサヤにおいてジンベイザメについての実態調査、および、鯨類(cetacean)と板鰓類魚類(elasmobranch)といった稀少資源の利用と保全の両立の可能性を検討するために同地域でグリーンツーリズムについても調査を実施した。これらの調査研究は、「食」の生産から消費までを俯瞰し、生活様式・生活環境の変遷をたどりながら、生態資源や現代社会を複眼的にとらえる試みでもある。また、東ジャワ州カンゲアン諸島サプカンにても、海産資源、特にウミガメ(タイマイ、アオウミガメ)に焦点を当て、その利用形態の変遷を調査し、政治・経済構造と比較しつつ分析をおこなった。一方、陸域における稀少生態資源については、ラオスのルアンパバーン市とヴィエンチャン市での染織工房技術と綿織物生産者の現状、エチオピア北部アファール州での異常稀少に伴う牧畜民伝統技術と生業の崩壊、マレーシア・サラワク州での都市移住者の出身村での資源管理・利用などについて調査を実施した。稀少生態資源についての情報収集は、H24年度は主に国際会議に出席することによって実施した。パナマで7月に開催された国際捕鯨委員会会議(IWC64)に参加し、捕鯨に関するエコポリティクスの動向を探った。更に、バンコクで2013年3月に開催された第16回ワシントン条約締約国会議CITES CoP16に参加し、稀少資源保全の世界的枠組みについて最新情報を収集した。沈香をめぐる中国を中心にした動きが活発になった。
  • 地域情報学の手法を用いた海域東南アジアにおける境域社会の動態の解明, 文部科学省, 科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究), 長津 一史, 研究メンバーは、5月、東洋大学アジア文化研究所において、本プロジェクトの目的、方針、計画を確認し、今年度の調査と作業の予定について検討した。打合せでは、海民・海域の時空間情報データ・ベースと資料集『海域東南アジアの境域社会の動態に関する資料集成』の項目選定作業も行った。8月には、全員でアテネオ・デ・マニラ大学フィリピン研究センター、フィリピン統計局(NSO)、フィリピン地図局(NAMRIA)を訪問し、同国の海民に関わる電子版センサス、人口移動・資源利用・民族間関係に関わるその他のデータ、地図データに関する調査を実施、必要なデータを購入した。同時に、海民研究の専門家に、関連する時空間データの整備・利用環境を尋ね、また情報共有のための手法について検討した。代表者の長津は、インドネシアの統計局(BPS)においても同国の海民に関する時空間データを収集した。年間を通じた活動として長津は、島嶼部3ヵ国全体の海民に関わる人口動態を、植民地期および近年のセンサスを用いて画像化・空間情報化した。これに人口移動や文化要素の分布等をあわせ、島嶼部三カ国全体の海民の社会文化動態に関する基礎データの整理を進めている。青山は、フィリピン・メディア(とくに新聞)に表象されるサマ人関連の情報を収集し、そのデータ・ベースの構築に着手した。赤嶺は、自らがこれまで収集してきたサマ諸語の言語データと画像資料の電子化を行った。言語データはエクセルに、画像資料はJPEGにそれぞれ変換した後、撮影日、撮影場所、説明の3点についてのデータを整理中である。これらの作業に基づく各自の成果は、8月のアテネオ・デ・マニラ大学の研究会(全員)や、2月の京都の国際研究会(長津、赤嶺)で、それぞれ報告された。
  • 生活権としての「在地商業権」-生態資源の循環性と多様性に着目して, 文部科学省, 科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究), 赤嶺 淳, 環境主義の時代とも称される今日、鯨類やマグロ類といった水産資源の管理をめぐる問題など、環境保護が高度な国際政治課題となっている。本研究は、もともと野生生物の利用に依存してきた人びとが、そうした地域資源(コモンズ)を商い、自立する権利、すなわち生活権を「在地商業権」(ICR: Indigenous Commercial Rights)と呼び、ICR概念の精緻化・妥当性を検討するとともに、こうした野生生物の持続可能な利用を保障する制度設計をおこなった。
  • 東南アジアにおける人の移動と帰還移民の再統合に関する社会人類学的研究, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 伊藤 眞, グローバル化した世界での移民経験は、男女を問わず契約労働者の人生設計に多様な選択肢を与えつつある。帰還移民の中には、海外で取得した資金を新築などの一時的な消費で終わらせることなく、新しいビジネスに投資する者、あるいは、社会福祉活動に参与することで資金を生かそうとする者も現れている。かつての出稼ぎ型移民労働に比 べ、 現 在の移民労働はよりシステム化された制度の中にありながら、新しい起業家たちを生み出す機会を提供していることが、本調査研究を通じて明らかにされた。
  • 生態資源管理と文化多様性保全をめぐる当事者間対話の構築-東南アジア多島海を中心として, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 赤嶺 淳, ワシントン条約(CITES)の附属書 I および II に掲載された水棲動物を分析した結果、これまで食用に商業的に利用されてきた水産物の記載が、2000 年以降に目立つ傾向があきらかとなった。このことは、野生生物保護と食料安全保障とが対立しうる課題であることを意味している。類似の事例として、国立公園内で保護されているアフリカゾウが、国立公園に隣接する畑作地を荒らし、農作物被害をもたらしている例を指摘できる。生物資源の持続可能な利用について、より多角的な検討が必要である。
  • トランスナショナル・コミュニティの地域間比較-境域アジアの移住と生活の動態研究, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 松本 誠一, 本研究では、東アジアと東南アジアそれぞれの境域における在地トランスナショナル・アクターの移動と生活実践に関するデータを収集し、同時に彼らの移動をめぐる社会ネットワークの形成・再編の様式をミクロ・メゾ・マクロなレベルで比較検討することを試みた。その具体的事例に基づく考察では、移動生活を実践するための生態環境や、国家体制、国境の歴史の深浅が両境域間で明白に異なり、その差異がトランスナショナルな生活実践のあり方やその歴史的展開の違いとして現れていることが示された。
  • 海域東南アジアにおけるグローバル・アクターと周縁社会-開発過程の国家間比較, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(C)), 長津 一史, 本研究の目的は、島嶼部東南アジアの三ヵ国、フィリピン、マレーシア、インドネシアの周縁民族としてのサマ(バジャウ)人社会における開発過程のダイナミクスを比較検討することである。サマ人社会における開発は、1960年代から主に国家主導で進められてきたが、1990年代以降、開発がグローバルな関係性のもとで展開するようになると、三ヵ国いずれのサマ人も脱周縁化を明確に志向し、そのための社会運動を組織するようになった。本研究は、サマ人の開発過程にみるこうした社会現象の内容とその歴史的文脈を明らかにした。
  • アジアにおける稀少生態資源の撹乱動態と伝統技術保全へのエコポリティクス, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(A)), 山田 勇, 本課題の目的は、稀少資源の枯渇、稀少資源を利用する伝統的な技術体系の状況とその変遷を把握し、生態資源の新しい保全の方策とその概念化を試みることにある。4年間の調査結果の詳細は「4.研究成果」を参照されたい。全体的に言えることは、世界各地で稀少資源の減少と劣化は進行し、それに伴って稀少資源を利用する伝統的な技術体系も急激に失われており、これらには国際的な経済バランスや政治構造が大きく関わっているということである。また、生態資源の新しい保全策としては、「法的制度を伴った生態的力関係」を意味する「エコポリティクス」という新しい概念が打ち立てられた。
  • 文化の世代間継承に関する文化人類学的研究:インドネシアの事例から, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(A)), 鏡味 治也, インドネシアを事例に、首都と地方と辺境、民族伝統の違い、都市部と農村部や男女の違いに注目しつつ文化継承の実態を組織的に調査しデータを収集した。教育の普及やメディアの発達、生業の変化が文化継承のあり方や継承されようとするものに変化をもたらしていることを確認し、首都や都市部では民族文化も国民文化化するいっぽう、地方や辺境では民族間関係により民族意識の先鋭化が顕著なことが把握され、とりわけライフコースの変化が文化継承のあり方を規定していることが明らかになった。
  • オープン・アクセスに関する地域間比較-アジア境域世界における資源利用の動態, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(C)), 赤嶺 淳, 東南アジアと日本の島嶼社会を包摂するアジア海域において、人口とモノ、資本、情報がはげしく越境する社会を「境域世界」としてとらえ、なかでもマグロ類、ハタ類、ナマコ類といった希少生態資源の採取と流通・消費に着目して、境域世界圏の生成過程に関する歴史的展開を文献と口承史から明らかにするとともに、ワシントン条約や生物多様性条約に代表される環境保護をうたう国際条約の浸透の結果、無形文化でもある島嶼社会における漁撈文化の多様性が失われつつある現状を記述した。
  • スルー海域の海サマ社会における開発過程の国家間比較-経済・宗教・民族間関係の動態, 文部科学省, 科学研究費補助金(若手研究(B)), 長津 一史, 本研究では、マレーシア・サバ州東岸およびインドネシア・スラウェシ島周辺の海サマ人社会に焦点をおき、経済活動の変化、宗教実践の変化、民族間関係の再編という三つの側面から捉えられたサマ人と開発との動態的関わりを、1970年代半ばから現在までの約30年の時間の幅で比較考察した。研究方法は定着調査と広域概査をあわせたフィールドワーク、ならびに史資料調査である。
  • 東南アジア・中東地域の国家制定法と伝統的秩序規範の協働関係に関する法文化的研究, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(B)), 後藤 武秀, 日本を含めてアジア全般において、古代より中国文化の影響下に形成されてきた「伝統的秩序規範」と近代以降のヨーロッパ文化の影響によって整備されてきた「国家制定法」がいかに対抗・協調しつつ、当該社会において協働関係の形成過程について主に法史学的観点から研究されてきた。しかし近現代のアジアにおいて中国文化やヨーロッパ文化の影響外にあって、独自の法文化を形成してきた「イスラーム法」が大きな影響力について法律学ではあまり正しく認識されていない。中東はもちろんのこと、昨今ではインドネシア、マレーシア、バングラデシュといった東南アジアにおいては中東以上にイスラーム教徒人口を抱え、その隣国の仏教国たるミャンマー、タイにおいても都市部におけるイスラーム教徒人口が増大してきている。本研究プロジェクトは、こうした様々な社会経済活動において「イスラーム法」の影響を看過することはできないという状況を具体的に解明することができた。本研究プロジェクトは広範なアジア地域のうち、イスラーム法の影響の強い、東南アジア・中東地域に対象を限定して、「国家制定法」と「伝統的秩序規範」とを比較しながら、それがどのような協調関係にあるか、その関係がどのように変化してきているのかを、法文化的に解明していくことに努めた。より具体的には、東南アジアの中でもイスラーム法の影響を強く受けているインドネシア、マレーシア、ミャンマー、中東地域ではアラブ圏、トルコ圏、イラン・インド圏のように重点領域を設定して、個別研究と共に相互の学間的方法論に基づく比較検討や地域的・時系列的関係を明らかにしていくことに重点をおいた。その際にイスラーム法に注目する以外に、とりわけ伝統中国法ないし華人社会の伝統的家族秩序と近代法との協働関係を形成している台湾・香港等の東アジア地域の華人社会の法文化に関する史的研究との比較についても、あわせて研究して成果をあげることができた。
  • 定着性沿岸資源管理をめぐる政治性と当事者性の地域間比較研究, 文部科学省, 科学研究費補助金(萌芽研究), 赤嶺 淳, 地球上のさまざまな地域で定着性沿岸資源のおおくは、これまで地域社会による固有ルールによって共同資源管理がなされてきた。しかし、市場圧力はもとより、生態環境の悪化、過疎化や高齢化などの要因から地域による共同管理の枠組みがうまく機能していていないケースもみうけられる。他方、生物多様性保全への国際的な関心のたかまりから、非当事者である人びとが、地先資源の管理についても発言権をましているのが、現実である。たしかに1970年代以降の環境主義の時代において生物多様性の保全を目的とした資源利用への規制は、説得力をもつようにみえる。それは、生物多様性の恩恵を享受するのが「人類」であるからである。しかし、問題は、抽象的な人類ではなく、個別文化をせおった人びとが、ひとしく生物資源の多様性の恵みをあずかることができるような社会システムが存在していない点にある。本研究では、上記の視野にたち、沿岸資源の代表として近年、中国で消費が拡大している干ナマコに着目し、東南アジア、日本、香港、中国におけるフィールドワークから、国境をこえた生産者や流通業者、消費者といった資源利用者らを「当事者」ととらえ、それぞれのアクターが、資源利用に関して、どのような認識をもち、どのような実践をおこなっているか、それぞれのアクターをむすぶノードの実態をあきらかにした。とくに、従来は商業機密により、香港を中心とする流通ネットワークについては、詳細が把握されていなかったが、本調査により、香港の乾燥海産物輸出入組合が、定着性沿岸資源の持続的利用を意識し、世界の取引先をまきこみ、漁業者らへの資源管理の必要性をうったえていることが明らかになったことは、本研究の大きな成果のひとつである。今後は、香港を中心としたこれらの流通ネットワークの史的発展をふまえた詳細な検討が必要である。
  • 島嶼部東南アジアの開発過程と周縁世界:マイノリティ・境域・ジェンダー, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(A)), 加藤 剛, 1960年代以降、開発主義的政策のもとで著しい変容を遂げた東南アジアの多くの国では、1970年代以降、周縁世界も開発政策の対象とされるようになった。しかしながら、政治的な影響力を持たない周縁世界は、開発によって急激な変容を遂げたにも関わらず、これまであまり研究の対象になることがなかった。本研究は、開発主義を指向する権威主義的政権が比較的長く続いた島嶼部東南アジアの三ヶ国、すなわちインドネシア、マレーシア、フィリピンを対象とし、理念、政策、実践としての開発と、社会(マイノリティ)、空間(境域)、性差(ジェンダー)の三位相から捉えられた周縁世界との関わりを、40年ほどの時間幅のなかで考察することを目的とした。研究活動は、研究組織メンバーによるフィールドワークと、日本国内における資料収集ならびに年一回の合同合宿研究会であった。三年間の成果は、個々の公表論文以外に、大部の報告書としてまとめられた。以下、報告書の概要である。〔島嶼部東南アジアの開発過程の概観〕の担当者は、各国の開発政策におけるマイノリティ、境域、女性の位置づけの変遷を歴史的に跡づけ、開発と周縁世界に関する資料集をまとめた。〔マイノリティ〕の担当者は、スマトラ島における移動焼畑民・プタランガンの土地利用と土地権、マレー半島における先住民と学校教育、ルソン島における山岳少数民族の植林運動をテーマとし、マイノリティ社会における開発の影響について報告した。〔境域〕の担当者は、リアウ州における地域アイデンティティの変容、ダバオ市におけるキリスト教援助団体の社会的影響に着目し、開発の拡大にともなう境域社会の変容について報告した。〔ジェンダー〕の担当者は、インドネシアの公的言説における家族像と女性観、フィリピンからの再生産労働者としての女性の海外送り出しに焦点をおき、開発政策における女性の位相について報告した。
  • ウォーラセア海域における生活世界と境界管理の動態的研究, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(A)), ABINALES P N, 本研究はフィリピン南部を含むウォーラセア海域世界の20世紀における構造と動態を、海外での臨地調査と公文書館などでの文献・資料調査を通じて、(1)海域住民の生活世界、(2)その生活世界のつながりとしての海域ネットワーク、(3)生活世界とネットワーク双方を支配・管理する政治制度、の3点に注目することにより明らかにしようとした。初年度は上述の(1)〜(3)について各メンバーが個別調査を行ったほか、スラウェシ島沿岸部において合同広域調査を遂行した。その結果、当該海域における生活世界とネットワーク、そして政治制度の間の相互作用に関するアウトラインを描出することができた。次年度はマクロな政治的文脈における、ウォーラセア海域の生活動態に調査の重点を置きながら、(1)〜(3)について引き続き個別調査を行ったほか、西ティモール沿岸域において合同調査を、そしてインドネシア科学院のメンバーとの間で意見交換を行った。その結果、当該海域における住民登録・出入国管理の変遷、ならびに生業活動、人口移動、資源利用形態の変化を国家の開発政策等と相関させながら明らかにすることができた。最終年度も引き続き(1)〜(3)についての個別調査を行い、そしてジャカルタのインドネシア科学院で平成16年3月に開催された国際ワークショップにおいて成果報告を行った。そこでは、20世紀という時間枠の中でウォーラセア海域の各小海域圏が住民の杜会経済的空間として編成・再編成されてきた歴史過程を、近代国家による領域管理の進展と相関させながら跡づけることを共通の課題とした。そして最終的な成果として、本研究の当初の目的であるウォーラセア海域の構造と動態を明らかにするべく、上述の(1)〜(3)の視点を3ヵ年の調査結果をもとに総合化し、ワークショップでの報告ならびに議論をまとめ、成果報告書として編纂した。
  • 東南アジア社会変容過程のダイナミクス:民族間関係・移動・文化再編, 文部科学省, 科学研究費補助金(基盤研究(A)), 加藤 剛, 3年間にわたり日本人7名と外国人研究者2名のメンバー全員が各自定点調査を中心に調査研究に携わることができた。研究代表者と分担者は、いずれも本科研以前から行ってきた定点調査に加え、空間的にも時間的にもこれを広げ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ミャンマー、ラオスにおける現地調査と、アメリカをも含めた文献調査を行ってきた。その中で、民族間関係や移動の歴史過程に関する基礎的な研究に加えて、宗教の動態、文化の再編課程についての聞き取りと一次資料収集に当たり、かつ従来よりも時空の広がりを目指すことで比較の視点をも可能にしてきた。また、各年度の初めに前年度の成果と今年度の予定を持ち寄り議論する中で、相互に枠組みを確認しあい、全体として一つの方向性を目指した。世紀の変わり目を迎え現在に至る30年あまりの東南アジアは急速な社会変容は資本、人、文化のグローバルな流動性によって引き起こされたもので、国民国家の枠組のみではもはやとらえることができない。そうした現代東南アジア社会の急速な変容を二十世紀の歴史的脈絡に位置づけるとともに、民族間関係、移動、文化再編という国境を越えるカギ概念を元に再検討し、多民族・多宗教からなる東南アジア社会の変容過程のダイナミクスを総合的、学際的に把握することにある。最終的に各調査地における社会変容をより大きな政治的枠組みとの相関においてとらえつつ、従来各自の関心であったよりローカルな問題を、そうした相関の中でより体系的に大きな政治経済社会変動の中で理解できたことにより、本科研の目的に各自の問題意識を絡め、相互に比較しうる成果を出してきたことであろう。それぞれが、世紀の変わり目である現在とそこへいたる民族間関係の位相を国民国家の形成とその民族政策のなかでとらえた上で、宗教や市場経済導入などといった要因により、実は国家の枠組みのみではとらえきれない動態が見いだされることを描いている。
  • 国境海域における人口移動の研究
  • 東南アジア海域の社会動態に関する研究

教育活動情報

担当経験のある科目

  • 文化人類学, 東洋大学
  • アジア社会文化論, 東洋大学
  • 社会文化システム論演習, 東洋大学
  • 比較宗教論, 滋賀県立大学
  • 東南アジア・イスラームの社会史, 東京大学
  • 東南アジア少数民族論, 上智大学