日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2019年04月 -2023年03月
代表者 : 阿部 修人; 外木 暁幸; 佐藤 秀保; 上野 有子
2020年度は新型コロナの影響もあり、予定していた国際コンファレンスの開催や海外学会への参加ができなかった。しかしながら、POSデータを用いた家計消費行動分析及び分離可能性の分析を進めると同時に、新型コロナが物価や家計消費に与えた影響も分析し、さらに独自アンケート調査を行うなど、分析は順調に進んだ。具体的な実績は下記のとおりである。(1) POSデータを用いた分離可能性の検証に関しては、佐藤が中心となり分析を進めた。乳製品の弱分離可能性を顕示選好を用いたノンパラメトリック手法を用いて検証した結果、厳密には弱分離可能性は棄却されるものの、弱分離可能と仮定しても、定量的には大きな乖離は生じないという結果を得た。この結果は、学会報告を経て、査読付き雑誌に掲載されている。(2)新型コロナがマスク価格に与えた影響について、新型コロナがもたらした人々の選好の変化を考慮した場合の生計費指数を計算し、選好シフトの影響を計測する研究では、選好シフトが生計費指数に対して多大な影響を与えていることを見出した。これは海外査読付き雑誌に投稿し、改訂要求を受けている。(3)家計内生産行動に関する分析では、サービス消費に関する家計内生産関数の形状の推計を試み、先行研究と異なり、サービス生産において、時間と支出の間には強い代替性は観察されず、むしろ補完的なものであるという結果を得た。(4)異時点間の分離可能性の検証に関して、繰越金を用い独自アンケート調査を行った。