Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
Date (from‐to) : 2020/04 -2023/03
Author : 陳 力衛(成城大学)
「『英和和英語彙』(1830)の編集に用いられた近世日本の辞書類―メドハーストの書簡に基づいて―」(『成城大学経済研究』235号、2022年2月)では、宣教師メドハーストがバタビヤでオランダ商館長から借り写した日本語の辞書や書物を特定した。
メドハーストが『英和和英語彙』(1830)の編纂に日本の書籍を利用したことはよく知られていたものの、いままで具体的に名前まで特定できている書籍は少なかった。本論は新たにメドハーストの書簡を利用して江戸時代に日本で編集された辞書8点を特定することができた。そして、それらの書籍について現在の所蔵先および状況を追跡・確認した。本論の一連の調査と研究によって、『英和和英語彙』の性格を明らかにし、その成立過程において前進することができた。
続いて、「19世紀における『訓蒙図彙』の海外流布と利用」(同236号、2022年3月)では特定した辞書8点のうちの1点である『訓蒙図彙』がいかに活用されたのかといった点について検討を加えた。
まず、オランダ商館長所蔵のものが現在ライデン大学に所蔵されていることを明らかにした。あわせて、『英和和英語彙』の「和英の部」において、『訓蒙図彙』を意義分類の手本として活用しただけではなく、動植物に関する多くの語のソースとして扱ったことを明らかにした。さらに、中国の広東に伝わった『訓蒙図彙』はメドハーストがシーボルトから受け取ったものであり、現在はアメリカに所蔵されているることを確認し、報告した。
以上のメドハーストおよび『英和和英語彙』を対象とした調査・研究により、さらに「長崎ハルマ」ローマ字本の実態に迫ることが可能となった。