日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2023年04月 -2025年03月
代表者 : 相馬 拓宜
近年、国産オリーブの栽培の機運が高まっている。15年前には、栽培地はわずか香川県と岡山県の2県であったが、現在では、南は鹿児島県から北は宮城県まで拡大している。国産オリーブの栽培は、比較的省力で栽培できることから、高齢者でも栽培可能であるとされる。また、オリーブは収穫後、製品化までに加工をする必要があり、製品の高付加価値化への期待もある。加えて、観光農園としての機能など6次産業化への期待もされている。実際に、地方自治体において産地化計画や振興計画が策定されるなど新たな特産品の創出に向けた動きがある。
他方で、オリーブの主製品であるオリーブオイルの国内の消費をみれば、拡大傾向にある。特に2010年代以降の消費の拡大が顕著であり、過去最大規模となっている。
しかし、海外産の輸入されたオリーブオイルがそのほとんど占めており、国産オリーブオイルなどは競争にさらされている。したがって、新規特産品として国産オリーブ製品が市場に浸透していくためには、差別化の方向性を検討する必要がある。そこで、本研究では地域の農業に資するとされる国産オリーブの市場拡大の要件を明らかにすることを目的とする。また、本研究は作物ポートフォリオや新規食品産業の勃興のプロセスを捉える研究としても重要となる。
本研究では、国内オリーブオイル市場などの消費動向を踏まえ、国産オリーブ生産者と国内消費者の双方から検討する。まず、国内のオリーブオイル市場の拡大を踏まえ、経年による消費動向の変容を明らかにする。次に、国産オリーブ生産者の分析では、経営実態の把握と経営効率性を評価する。最後に、消費者視点からは、製品の高付加価値化に向けた国産オリーブ製品が具備すべき属性を検討する。
上記の要件解明に向けた一連の分析から、地域に対する経済効果や地域振興策としての国産オリーブの在り方を検討するための基盤的知見の獲得を目指す。