日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2019年04月 -2022年03月
代表者 : 渡邉 裕介; 小柴 和子; 中川 修; 浦崎 明宏; LAMRI LYNDA; 能丸 寛子; 原田 恭弘; 垣花 優希; 橋本 大輝; 劉 孟佳; 瀬谷 大貴; 田中 亨
本研究は①「胸部大血管形成における内皮細胞発生・管腔構造形成の重要性と制御機構の解明」と、②「心室筋の異なる領域における転写制御機構と細胞運命の解明」を目的として転写抑制に機能するHeyファミリー因子に着目して研究を進めている。
①について、本年度は胸部大血管形成における内皮細胞でのHey1遺伝子の重要性を明らかにするため、胸部大血管の由来となる胎生10.5日目胚での咽頭弓動脈の構造および遺伝子発現についても解析を進めた。その結果、内皮細胞でHey1遺伝子を欠損させたcKOマウスでは第4咽頭弓動脈の形成異常が生じ、動脈内皮細胞マーカーの発現が消失することを観察した。一方、cKOマウスの咽頭弓動脈での平滑筋細胞マーカーや神経堤細胞マーカーの発現は正常であった。前年度および今年度の結果から、内皮細胞で発現するHey1遺伝子の胸部大血管形成における重要性と転写制御機構の一端を明らかにした。本研究実績はJBC誌に投稿し受理された(Watanabe et al., 2021. 筆頭および責任著者)。
②について、本年度は胎生期心室筋で発現するHey2遺伝子の機能解析を行った。右心室から心室間領域にかけてHey2遺伝子を欠損させたcKOマウスでは、全身Hey2遺伝子欠損と同様に心室中隔欠損、三尖弁形成異常、右心室低形成を生じた。cKOマウス右心室では転写抑制に機能するTbx2の発現が異所的に誘導され、その下流遺伝子であるMycn発現が減少していた。さらに細胞増殖も低下していた。以上から、Hey2-Tbx2-Mycnの転写抑制カスケードが右心室形成に必須であることが示された。本研究実績はDev Growth Differ誌に投稿し受理された(Seya et al., 2021. 共責任著者)。