家計消費行動における分離可能性・集合財の検証
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2019年04月 -2023年03月
代表者 : 阿部 修人; 外木 暁幸; 佐藤 秀保; 上野 有子
2019年度は、(1)POSデータを用いた分離可能性の検証、及び(2)合理的な消費決定行動と整合的なデフレーターの構築、の二点を重点的に行った。(1)に関しては、研究分担者の佐藤秀保氏が中心となり、Lewbel(1996)の手法に準拠した分離可能性の検証を行った。具体的には、チーズ、バター、クリーム、アイスクリーム、ヨーグルト、練りミルク、脱脂粉乳、育児用粉ミルク及び乳酸菌飲料を対象とし、2006年1月最初の週から2016年3月最終週までの(535週)のデータを用いた。分析の結果、すべての財カテゴリについて理論整合的な財集計は統計的に支持されないという結果が得られている。既存研究の多くは代表的な財カテゴリへの集計を統計的に支持する傾向にあり、製品レベルデータを用いた場合には既存の研究蓄積と異なる結果が得られたことになる。これは、既存のカテゴリーレベルの集計変数作成が統計的には支持されないことを意味する。(2)に関しては、阿部が中心となり分析を行った。消費財を集計する際、一般的に行われているのは、カテゴリー単位の総支出額を物価指数でデフレートし、実質消費に変換し、それをあたかも一つの財とみなすことである。デフレーターが重要な役割を果たすことになるが、デフレーターとして伝統的な消費者物価指数を用いると、物価指数に推移性がないため、得られる実質消費にも推移性がなくなり、合理的な意思決定と矛盾してしまうという問題が1970年代にサミュエルソン達によりなされている。しかしながら、推移性をみたす物価指数で、経済理論と整合的なものは知られていない。阿部はQueensland大学の共同研究者と共同で、推移性をみたし、かつ経済理論と整合的な物価指数の作成を行い、2019年に国際コンファレンスを開き、そこで報告した。これは、現在査読付き雑誌に投稿中である。