Andreopoulos George J; Claude Richard Pierre (担当:範囲:第5章 エンパワーメントとしての人権教育―教育学についての省察― 第16章 人権擁護者のための臨床的法学教育、第26章 取り残されたアフリカで人権教育を推進する)明石書店 1999年02月 ISBN: 4750311170
東京市とロンドン・カウンティ・カウンシル(以下、LCCと略称する。)は、日英の地方教育行政機関の系譜において社会教育・成人教育活動を先駆的に開拓した。本研究は、両大戦間期の大都市貧困地域における成人・青少年の学習支援の現場を実証的に明らかにしようとするものである。2021年度は、2年度目までに明らかにした両大都市の制度的基盤の上に展開した、日英成人・地域学習(adult and community learning)支援史の研究に重点を置いた。
1921年の東京市の社会教育課の発足と1913年のLCCの夜間教育改革を土台に、両大戦間期において、東京市の社会教育活動とLCCのイブニング・インスティテュートは、専門化・体系化し、発展した。特に、東京市の7つの社会教育活動(東京市連合青年団、市民音楽、商工青年修養会、市民講座、市民体育、映画教育及び労務者輔導学級)と、LCCの7つのイブニング・インスティテュート(ウィメンズ、フリー、ジェネラル、デフ、リテラリー、メンズ並びにジュニア・メンズの各インスティテュート)は、その中核的な取り組みであった。そこで、本年度は、それらの現場の写真、史料、ポスターやチラシ等の調査・発掘を糸口に、人々の身近な地域の学びの場が、いかにして同時代の東京とロンドンに成立したのかを分析した。また、東京市の実践を方向付けた初代社会教育課長大迫元繁が、米国コロンビア大学に提出した学位論文を発見し、邦訳した。
なお、ロンドン市タワー・ハムレッツ区の生涯学習政策の統括責任者への取材を交えて、コロナ・パンデミック下のコミュニティ教育の改革動向を検証した。これは、歴史的研究に必要な現代的課題意識の明確化に資するものであった。