研究者総覧

中村 昇平 (ナカムラ ショウヘイ)

  • 国際学部国際地域学科 助教
  • アジア文化研究所 研究員
Last Updated :2025/05/16

研究者情報

通称等の別名

    旧姓:中村

学位

  • 博士(文学)(2018年03月 京都大学文学研究科)
  • 修士(文学)(2012年03月 京都大学文学研究科)
  • 学士(社会学)(2010年03月 同志社大学社会学部)

ホームページURL

科研費研究者番号

  • 60913275

J-Global ID

プロフィール

  • 1986 年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。2024年3月まで「中村」姓を使用。



    • 中村昇平,2024,「民族とエスニシティ──『民族』の境界はどう決まるのか」『東南アジアで学ぶ文化人類学』昭和堂,51-66頁.書誌情報電子書籍

    • 中村昇平,2024,「『成熟』とは何か?」「民族──多様性の中の統一」『ジャカルタ・アトラス──地図でみる都市の成熟』総合地球環境研究所 「ジャカルタ・アトラス」制作チーム,12-15頁,88-89頁.電子書籍【全文無料公開】

    • 中村昇平,2021,「何も起こらない日常に変化をみる──生活世界の改変と継続の不可分性」『日常的実践の社会人間学──都市・抵抗・共同性』山代印刷出版部,79-94頁.書誌情報電子書籍

    • 中村昇平,2021,「民主化期のインドネシアにおける大衆動員のあり方──ジャカルタ地方政治のポピュリズム化とブタウィのエスニシティ組織」『東南アジア研究』58 巻 2 号.本文PDF

    • 中村昇平,2019,『ムラからカンプンへ──京都郊外の先住者がみたジャカルタ郊外の集落 ブックレット《アジアを学ぼう》53』風響社.書誌情報

    • 中村昇平,2018,「都市先住者のエスニシティ──『バタヴィア先住民』ブタウィの集落と帰属意識」京都大学文学研究科博士論文.要約・講評PDF

    • Shohei Nakamura, 2017, "Identitas Etnis dan Perasaan Berkelompok Perkampungan Masyarakat Betawi," 60 Tahun Antropologi Indonesia: Refleksi Kontribusi Antropologi untuk Indonesia, Depok: Pusat Kajian Antropologi Universitas Indonesia(中村昇平,2017,「ブタウィ住民のエスニック・アイデンティティと集落の集団意識」『インドネシア人類学の60年──インドネシアへの人類学の貢献を再考する』インドネシア大学人類学研究センター), pp.392-406.本文PDF

    • 中村昇平,2015,「近隣コミュニティへの帰属意識とエスニシティの観念──ジャカルタにおけるブタウィの日常的認識枠組みから」『京都社会学年報』23 号.本文PDF

    • 中村昇平,2014,「ブタウィ・エスニシティの歴史的変遷過程──現代ジャカルタでバタヴィア先住民が示す『異質な他者』への寛容性の起源」『ソシオロジ』59 巻 1 号.本文PDF


     


    都市郊外の「ムラ的共同性」から帰属意識のダイナミズムを再考する研究


    Kampung Utanの事例研究


     インドネシア、ジャカルタ郊外のデポック市にあるカンプン・ウタンという集落を対象として、参与観察とインタビューによる調査を行っている。特に、武術と演劇にみられる身体技法の変化に着目して、集落コミュニティへの帰属意識の生成過程を考察している。互いの身体の動きに場あたり的に呼応し合うことでそれまでになかった一連の動きを即興的に生み出すことが奨励される実践の中では、誰が創造の主体なのかが曖昧なまま、「集落の伝統」に新たな要素(newness)が付与され続ける。この変容過程に巻き込まれることで、参与者の中には集落の伝統を「自分のもの」ととらえる意識が自然と生じる。この過程を考察することで、身体感覚を根拠として集落コミュニティへの帰属意識が生成される過程を説明することが研究の目的である。さらに、この武術が「ブタウィ文化」に共通のフォーマットで繰り返し演じられることに着目して、ブタウィ人(orang Betawi)という民族集団(suku bangsa/etnis)への帰属意識を感覚(sense)の観点から説明することを目標としている。


    樫原(かたぎはら)の事例研究


     京都市郊外の樫原地域を対象として、参与観察とインタビューによる調査を行っている。もとは洛外の農村で、近世に本陣を中心とした宿場町として栄えた旧山城国葛野郡岡村を母体とする樫原学区では、古民家(町家)のならぶ街並みや里山的な自然環境によって構成される歴史的景観を保全するためのまちづくり活動が行われている。景観保全を目的としたまちづくりは、かならず建築環境や自然環境の大幅な改築・改造を前提として構想されるが、これは近年になって生じた傾向ではない。家屋が建造当初から生活環境に合わせて姿を変え続けていること(便所・風呂と渡り廊下の設置、竈から台所への改造、和室から洋式応接間への改造、緩い傾斜の階段への取り替え、断熱材の敷設など)、また、自然環境が生活の必要に合わせて姿を変え続けてきたこと(川の埋立と街道の敷設、用水路の建設、ため池の造成、はげ山への竹の植林など)を、住民は村の歴史と自身の生活経験から知っており、そのことに意識的である。この研究では、私有財産である家屋や共有財産であるため池の利活用が、学区制度上の住民自治組織(自治会・自治連合会)や行政との関わりの中で公共に開かれていく過程を考察する。この考察をとおして、ムラや地域への帰属意識や愛着が感覚をともなって醸成される過程を明らかにするのが研究の目的である。


    今後の研究では、これらの事例研究を軸に以下の論点を考察する


    感覚にもとづいた民族意識の理解


    村落コミュニティへの帰属意識の重層性


    環境保全や伝統継承をめぐる当事者・受益者の範囲


    都市空間とその利用主体の範囲


    調査者のネイティブ性


    グローバル・ノースをモデルとした開発主義的前提によらない都市の理論化


    特定の場所での生活経験にもとづいた都市の理論化


    支配への従属と自律の余地

研究キーワード

  • 郊外   京郊農村   京都   クレオール   武術   インドネシア   都市   ブタウィ   ジャカルタ   カンプン   集落   エスニシティ   

研究分野

  • 人文・社会 / 社会学 / エスニシティ研究
  • 人文・社会 / 地域研究 / インドネシア研究
  • 人文・社会 / 文化人類学、民俗学

経歴

  • 2024年09月 - 現在  立命館大学国際関係学部任期制教員B
  • 2021年04月 - 現在  国立民族学博物館共同研究員
  • 2023年04月 - 2024年09月  国士舘大学政経学部非常勤講師
  • 2022年04月 - 2024年09月  東洋大学国際学部任期制教員
  • 2021年04月 - 2023年03月  京都大学東南アジア地域研究研究所連携研究員
  • 2021年04月 - 2023年03月  近畿大学総合文化研究科非常勤講師
  • 2021年09月 - 2022年02月  龍谷大学国際学部非常勤講師
  • 2021年09月 - 2022年02月  立命館大学国際関係学部非常勤講師
  • 2021年04月 - 2021年09月  近畿大学総合社会学部非常勤講師
  • 2018年04月 - 2021年03月  金沢大学人間社会研究域客員研究員
  • 2018年04月 - 2021年03月  日本学術振興会特別研究員(PD)
  • 2019年09月 - 2021年02月  立命館大学政策科学部非常勤講師
  • 2019年09月 - 2020年02月  神戸学院大学現代社会学部非常勤講師
  • 2019年09月 - 2020年02月  京都市立芸術大学美術学部非常勤講師
  • 2018年04月 - 2018年09月  仁愛大学人間学部非常勤講師
  • 2016年08月 - 2018年08月  インドネシア大学人文学部訪問研究員
  • 2016年01月 - 2016年03月  インドネシア大学人文学部訪問研究員
  • 2012年04月 - 2015年03月  日本学術振興会特別研究員(DC1)

学歴

  • 2012年04月 - 2018年03月   京都大学大学院   文学研究科   行動文化学専攻 社会学専修 博士後期課程
  • 2010年04月 - 2012年03月   京都大学大学院   文学研究科   行動文化学専攻 社会学専修 博士前期課程
  • 2006年04月 - 2010年03月   同志社大学   社会学部   社会学科

所属学協会

  • 日本文化人類学会   関西社会学会   国際社会学会   

研究活動情報

論文

書籍

  • 箕曲在弘; 二文字屋脩; 吉田ゆか子; (編) (担当:分担執筆範囲:第3章 民族とエスニシティ──「民族」の境界はどう決まるのか)昭和堂 2024年03月 ISBN: 9784812223062 vii, 305p 51-66頁 
    ジャカルタのブタウィ人を事例に、民族集団の境界には、国家政策によって規定される側面と、生活に根ざした文化実践がその規定を変化させる側面があることを説明した。加えて、こうした性質は、ブタウィ人が植民地都市に生成したクレオール民族だから備えている特殊な性質なのではなく、民族に関わる現象一般に通じる要素だと論じた。教員向け付録「ディスカッション授業実践ガイドブック」では、本章の内容を日本の民族状況の理解へと繋げるための注意点を解説した。そこでは特に、地方自治体より細かい範囲で民族関係を捉えることの重要性を説いた。 担当部分: 第3章「民族とエスニシティ──「民族」の境界はどう決まるのか」pp.51-66 編者:箕曲在弘・二文字屋脩・吉田ゆか子 全vii, 305p.
  • 三村豊; 新井健一郎; 小泉佑介; (編) (担当:分担執筆範囲:「成熟」とは何か?;民族──多様性の中の統一)総合地球環境研究所 「ジャカルタ・アトラス」制作チーム 2024年03月 ISBN: 9784910834344 162p 12-15頁,88-89頁 
    本書は、21世紀最初の20年間のジャカルタ都市圏の変化を、インドネシア政府の基幹統計の一つ、村落潜勢力統計(PODES)の地図化とその分析によって明らかにしたものである。統計データによるマクロな情報を、チリ情報学や地理学の研究者が豊富なフィールドワーク経験を持つ研究者とチームを作り、分析・解釈している。これにより、生活の細部に注目したミクロ的な視点と首都圏全域を俯瞰するマクロ的な視点を、地図とその解釈を通して融合した点も特徴である。 担当部分: 「『成熟』とは何か?」pp.12-15「民族──多様性の中の統一」pp.88-89 編者:三村豊・新井健一郎・小泉佑介 全162p.
  • 落合恵美子; 森本一彦; 平井晶子; (監訳) (担当:共訳範囲:21.語られない秘密──インドネシアのレズビアン運動(R.r Sri Agustini))有斐閣 2022年03月 ISBN: 4641174695 478 
    インドネシアのレズビアンをとりまく社会状況の変遷や社会運動の経緯を概説したR.r Sri Agustini の論文を翻訳した。原著は2008年『雑誌女性』(Jurnal Perempuan)58号「レズビアンの 性」(Seksualitas Lesbian)特集号に掲載された論文”Rahasia Sunyi: Gerakan Lesbian di Indonesia”。 担当部分:21.語られない秘密──インドネシアのレズビアン運動(R.r Sri Agustini) 監訳者:落合恵美子・森本一彦・平井晶子 全478p.
  • 松田素二; 阿部利洋; 井戸聡; 大野哲也; 野村明宏; 松浦雄介; (編) (担当:共著範囲:第5章 何も起こらない日常に変化をみる──生活世界の改変と継続の不可分性)山代印刷出版部 2021年03月 ISBN: 4991147379 372 79-94 
    ジャカルタ郊外のカンプン・ウタン集落におけるゴンベル流派の武術実践を考察した。一方向的な教授とは対照的な、双方向的な探索と創造を旨とする学習実践から、常態的な改変を伝統の存続に不可欠の要素とみなす生活意識と、個人の独創性と集団の独自性を矛盾なく共存させる集合的意識が醸成されていることを論じた。この考察から、日々の微細な創造性が生み出す変化が集落の生活世界の連続性をかたちづくっていることを説明した。 (以下、「序論」より引用) 「インドネシア・ジャカルタの先住都市民ブタウィが、急激に変容するメトロポリスの世界をどのように飼いならしていくかを、伝統的慣習のリバイバルとしての武術実践を切り口に解明した労作。統治権力に全面的に服従しながら、その管理と統制の目が及ばない領域を、日々の生活実践の帰結として意図せず維持していく様子を活写している。」
  • 中村昇平 (担当:単著範囲:)風響社 2019年10月 ISBN: 4894894165 54p 
    《共感の「比較」都市研究》 本書は「都市の比較」でもなく、「社会の比較」「文化の比較」でもない。異なる生活経験を持つものの出会い、そこに生まれる共感を手がかりに、眼前の社会事象を捉えようとする、新たな試みである。 ********************************************* はじめに 一 集落(カンプン)と出会うまで 1 調査開始までの経緯 2 「民族意識」の軸が見つからない 3 断片的に見えてきた「集落」──大衆組織の調査と武術練習会への参加 二 集落の調査という経験──ムラを通してカンプンをみること 1 「カンプン」はなぜ見えにくかったのか 2 「ムラ」と「カンプン」のあいだの共感可能性 3 「ムラ」と「カンプン」のあいだの根本的差異 三 共感と比較 1 共感と都市の比較 2 共感と社会の比較 おわりに 注・参考文献 あとがき ********************************************* …… 本書ではまず、私が調査を開始してから集落(=カンプン)と出会うまでの経緯を振り返る。ジャカルタにかつて多くの集落が存在していたことは知られていたが、都市研究の領域では住民コミュニティとしての実態を伴った集落としての「カンプン」は近代化と都市開発の中で消え去ったものだと考えられていた。第一節では、「民族意識」に着目することで先住者のあいだに「集落意識」が存続していたことが明らかになっていく過程を振り返る。 カンプンの「見えにくさ」は私にとっても例外ではなかったが、都市研究の観点からではなく民族・エスニシティ研究の観点からジャカルタを調査したということを差し引いても、私自身にとってある種の「見えやすさ」があったことは無視できない。「集落先住者」の意識に注目して行なったジャカルタ郊外での調査経験は、調査者である私自身が京都郊外に先住者として育った経験と切り離して考えることができない。第二節では、集落がなぜ私にとっては見えやすいものだったのかを、私自身の経験に触れながら説明する。 都市郊外のムラに先住者として生きた経験は、調査対象とする人びとの生活経験を理解する上で大きな助けとなった。その一方で、私の経験と調査地の人びとの経験とのあいだに根本的な差異があったこともまた事実であり、その差異は消えることも埋まることもなかった。私の調査対象への理解は、そうした差異を意識し続けた上で、両者の人生経験や人間性の中に断片的な重なりや部分的な共感を探っていくかたちで形成されていった。第三節では、そうした私自身の調査経験にどのような意味があったのか、現時点でできる限りの整理をしてみたいと思う。 さらには、本書が、日本に生まれ育った、あるいは日本に生活の拠点を置いて長く暮らした者が、他国で当地の人々と人間関係を築き、相互理解を深めるための参考例となれば幸いである。…… *********************************************
  • 市野澤潤平; 東 賢太朗; 橋本和也; (監訳) (担当:共訳範囲:第11章 観光がアメリカ合衆国南西地方インディアンの芸術と工芸に与えた影響(ルイス・I・デイッチ))ヴァレン・L・スミス; (編) ミネルヴァ書房 2018年06月 ISBN: 4623083659 468 285-306 
    本書は、観光人類学の嚆矢であると同時に、「ホストとゲスト」という枠組みを世に問うた観光学の古典としても名高い。 移動、余暇、非日常性などの人類学理論から観光を考える視座を提示した上で、世界各地におけるホストとゲストの関係や観光開発による文化変容をつぶさに描き出す。 [原著 Valene L. Smith Ed.,1989, Hosts and Guests: The Anthropology of tourism, 2nd Ed.,University of Pennsylvania Press.]
  • Achmad Fedyani Saifuddin; Sri Paramita; Budhi Utami; Prisinta Wanastri; M. Arief Wicaksono; (編) (担当:共著範囲:Identitas Etnis dan Perasaan Berkelompok Perkampungan Masyarakat Betawi(ブタウィ住民のエスニック・アイデンティティと集落の集団意識))Pusat Kajian Antropologi, Universitas Indonesia(インドネシア大学人類学研究センター) 2017年12月 ISBN: 9786025100215 484 392-406 
    Dengan mempertimbangkan penelitian lapangan di wilayah Jakarta dan sekitarnya, artikel ini akan membahas pentingnya rasa berkelompok kampung dipandang dari segi identitas etnis. Seperti berbagai etnis lain, identitas kesukuan Betawi juga berdasarkan dengan pengakuan adanya perbedaan atau keanekaragaman di bawah satu kategori umum yaitu suku bangsa Betawi. Bila diamati rekognisi dan represintasi keseharian berkenaan dengan identitas kesukuan masyarakat Betawi, maka terlihat bahwa identitas etnis dan pengakuan kampung saling berkaitan dengan erat, sehingga adanya kampung asli di wilayah Jakarta dan sekitarnya merupakan pernyataan untuk pengakuan sebagai orang beretnis Betawi. Demikian pula perbedaan intra-etnis yang tersebut di atas seringkali disadari, ditunjukkan, dan diakui sehubungan dengan pengakuan terhadap keunikan kampung masing-masing. Tujuan pertama dari kajian ini adalah memaparkan dengan penelusuran kasus bagaimana perasaan berkelompok kampung itu muncul, bertahan, dan berubah seiring dengan berkembangnya kegiatan sosial serta kehidupan keseharian perkampungan. Tujuan kedua adalah menggambarkan kedudukan individu terutama di dalam pola kehidupan sosial perkampungan, sebagai ganti mengasumsikan perseorangan yang bertentangan langsung dengan kategori abstrak seperti etnis. Dengan demikian akan diperjelaskan bahwa pandangan sperti di atas memperbolehkan baik pengamat maupun pelaku untuk mempertimbangkan secara realistis kemampuan perseorangan untuk meluaskan dan memanfaatkan kreativitas masing-masing di dalam pembentukan, pertahanan, dan perubahan tradisi atau kebudayaan, bahkan konsep atau identitas etnis.

講演・口頭発表等

  • 中村昇平
    現代民俗学会第71回研究会「海外フィールドから見た日本──逆さ読みの日本文化論の試み」 2023年12月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) 京都大学稲盛財団記念館 現代民俗学会
     
    本発表では京都郊外の農村「樫原」(かたぎはら)のまちづくり活動の過程で現れる、地縁コミュニティへの帰属意識の重層性を考察する。樫原(旧名岡村)は江戸期に宿場町として栄えた一方、昭和期以降は住宅開発が盛んとなった地域である。そうした経緯から、生活の中で「新」「旧」住民の境が意識される局面がしばしばある。こうした境界は、住民組織の構成や、日常の具体的な相互行為の場面で顕在化するが、そのいずれも、一義的なものではなく、重層的な現れ方をする。 本発表では特に、旧来は村の共有地で、近年農業用水としての利用を終えた農業用ため池「弁天池」の利活用が公共に開かれていく過程に注目して、この重層性を考察する。弁天池を巡っては、祭礼組織・共有地管理組織・住民自治会・地方自治体など、包含する構成員の範囲が異なる複数の組織が関係するため、当事者意識(利活用にあたって誰の意向が尊重されるべきと考えるか)が重層的に現れる。この考察を通して、「ネイティブ」の線引きを固定化したり「調査者−被調査者」の線引きを特権化したりすることなく、重層的に捉える意義を論じる。
  • 中村昇平; 鈴木赳生
    関西社会学会第74回大会 2023年05月 口頭発表(一般) 京都先端科学大学 関西社会学会
     
    本発表は、R.ブルーベイカーが提起した認知的視座(cognitive perspective)を中心に、ミクロな次元の民族現象を脳の認知機能に還元して分析する視点を批判する。その上で、情動(affect)の視点の有用性を明らかにすることで、感情や感覚が民族現象を考察する際の中心課題のひとつであると示すことが目的である。 人種エスニシティ研究においては、F.バルト[1969]の議論を受け、構築主義的視点が支配的なパラダイムとなって久しい。本質主義的視点を批判し民族境界の流動性に注目した構築主義的視点は、民族集団の定義が状況依存的に構築されるものだと看破した[Wimmer 2013]。しかしそこでは、虚構であるはずの「民族」がそれでもなお個々人に具体的な実体のごとく経験される現実が説明されない。 この点を批判し代替となる理論的方向性を明確に打ち出したのが、ブルーベイカーの認知エスニシティ論だった。彼は、境界への注目も本質論と同じく、最終的には民族を集団的に実体視する「分析上の集団主義」(analytical groupism)の問題を抱えていることを指摘した。認知的視座はこの問題を乗りこえ、実生活における個人の経験の次元で民族認識が構築されるミクロなメカニズムを解明するべく提起された。 しかし、集団の区別(差別)に関する人間の認識を脳の認知機能に還元する視座に立ち、非構造化インタビューや言説分析を中心とするミクロな民族現象の分析[Brubaker et al. 2006]は、実際のところ、認識論的な次元にとどまらざるをえない。言い換えれば、いかなる文脈でいかなる言葉がいかなる固定化した語りと結びついて作動するかという、「民族」の言語的カテゴリ化機能の側面しか説明することができない。他方で人文地理学の都市論では、人種エスニシティの分析に情動の観点を取り入れ、物質性と身体性に着目することの必要性が論じられてきた[Thrift 2007]。しかしそこでも、事例の分析や記述の方法が広く援用可能な形で整理されてはこなかった。 これに対して本発表は、脳の認知機能への還元主義を批判し、情動の概念を手がかりとして感情や感覚の次元に踏み込んだ分析の方針を提起する。実生活の中で感情や感覚が喚起される場面を考察する際に、明示的に言語化して認識される側面だけでなく、身体的・物質的側面に着目する必要性を論じる。インドネシアとカナダの事例から、生活の中で情動が喚起される経験が契機となって集団への帰属意識や愛着が醸成される過程や、情動の喚起が集団的差異の認識に直感的根拠を与える過程を分析する。この分析をとおして、民族が人びとの心を捉える過程や民族の区別が形成されるミクロな過程を、具体的に記述するための方法を提示する。 Barth, Fredrik (ed.), 1969, Ethnic Groups and Boundaries: The Social Organization of Culture Difference, Universitetsforlaget. Brubaker, Rogers, 2004, Ethnicity without Groups, Harvard University Press. Brubaker, Rogers, Margit Feischmidt, Jon Fox, and Liana Grancea, 2006, Nationalist Politics and Everyday Ethnicity in a Transylvanian Town, Princeton University Press. Thrift, Nigel, 2007, Non-Representational Theory: Space, Politics, Affect, Routledge. Wimmer, Andreas, 2013, Ethnic Boundary Making: Institutions, Power, Networks, Oxford University Press.
  • 2022年度第1回白山人類学研究会 2022年04月 口頭発表(一般) 東洋大学 白山人類学研究会
     
    本発表では、先住性を手がかりとして、ジャカルタと京都郊外の事例から日本・インドネシア比較村落論に新たな視点を提示することを目指す。インドネシア諸地域の地縁コミュニティを日本の村落との比較から論じる研究では、行政村(desa administratif)と慣習村(desa adat)のズレがインドネシア諸社会の特徴とみなされる傾向にあった。こうした比較の視点は、行政制度上の村落と自然村との重なりが日本の村落の特徴であることを前提とし、また、そうした観念を強化するものとして機能してきた。逆に、ジャカルタの住民コミュニティを日本との比較から論じる研究の中では、慣習村や自然村に準ずる自生的地縁コミュニティの不在が前提とされ、専ら行政制度上の住民組織(行政村/RW/RT)が考察の単位とされてきた。 本発表では、ジャカルタ郊外の集落「カンプン・ウタン」と京都郊外の村落「樫原」をとりあげる。カンプン・ウタンは慣習村とは呼べないが、先住者のみによって構成される地縁コミュニティとみなされており、その地理的範囲は行政村(kelurahan Krukut)の範囲とズレている。樫原では行政村(樫原学区)の範囲と自然村(旧名「岡村」)の範囲は概ね重なっているが、先住者の地縁コミュニティと新住民も含めた住民コミュニティを別物とみなす観念が存在する。本発表では、両地域で先住者が運営する住民組織や社会活動を概観することで行政村とのズレを示した上で、それぞれ「身体技法」と「居住環境」に着目することで、住民の身体感覚にまで踏み込んで先住者コミュニティへの愛着を考察する可能性を論じる。この考察を通じて、ジャカルタの住民コミュニティを自生的集落に着目して考察する意義と、日本の住民コミュニティを行政村と自然村のズレに着目して考察する意義を示すことが本発表の目的である。
  • 中村昇平
    宮城学院女子大学附属キリスト教文化研究所多民族グループ第6回公開研究会「ルーツを考えるⅡ」 2022年03月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) 宮城学院女子大学附属キリスト教文化研究所 宮城学院女子大学附属キリスト教文化研究所
     
    フィールドワークにおいて、特に、参与観察やインタビューを中心として「異文化を理解する」ことに主眼が置かれる調査の過程では、調査者はしばしば、慣れ親しんだ既知の情報を手がかりとしなければ異文化状況を理解するための思考を始められないという、逆説的な場面を経験する。「参与」しながら「観察」するという一見矛盾する営みの中で起こるこの種の場面は、それが馴染みのない「異文化」を(より具体的には、異なる背景をもつ他者を)理解したいという切実な欲求から生じるものであるからこそ、「自文化」をより一層深く再考する機会となり、自身の拠って立つ常識やこれまでの人生経験を異なる視点から捉える契機ともなりうる。 発表者は2012年以来、インドネシア、ジャカルタをフィールドとして、人種エスニシティ研究の観点から調査研究を進めてきた。その過程で、ジャカルタで人々が日々重んじる帰属意識を理解するにあたって、自身の背景である京都郊外の村落への帰属意識を再考する必要に迫られることがしばしばあった。こうした経験の累積は、一方で、ジャカルタの民族意識を理解する際に集落(kampung)への帰属意識に着目する契機となったが、他方で、自身の出身村落における住民の愛着や帰属意識を考察する際の視点にも影響を与えた。本発表では、発表者自身の調査経験を共有することを通じて、この種の経験がもつ意味について問題提起(話題提供)をしたい。
  • 中村昇平
    インドネシア研究懇話会(KAPAL)第3回研究大会 2021年12月 口頭発表(一般) オンライン開催 インドネシア研究懇話会(KAPAL: Kelompok Pemerhati dan Peneliti Indonesia di Jepang)
     
    ジャカルタ周辺では、近隣地域の生活に根差した「集落武術」ともいえる実践が広く営まれてきた。これは、オランダ植民地期、バタヴィア時代からの先住者集団であるブタウィ民族の文化実践として認知されている。ジャカルタ発祥の武術は、しばしば「ブタウィのシラット」(silat Betawi)や「こぶし遊び」(maen pukul)と総称されるが、その起源や内実は流派によって異なる[Nawi 2016]。植民地期から続く集落(kampung)を単位とした帰属意識を色濃く残す地域では、様々に異なる流派の武術が、集落独自の伝統として営まれている。 ただし、そうした武術流派が全て当地発祥というわけではなく、継承の過程で他地域に伝播し、各地で継承されるようになった場合も多い。そのような場合、流派自体の発祥が別の集落にあると認識された上で、各地で継承される分派がその集落に固有の伝統として認識される。 本発表では、広範囲に伝播して多地域で継承されるようになったメジャーな流派をいくつか取り上げて紹介した上で、こうした広域的な流派が伝播と伝承の過程でローカルな集団に固有の伝統であると認識されるに至る要因を考察する。具体的には、デポック市のカンプン・ウタンで継承されるゴンベル流派を事例としてとりあげる。 ゴンベル流派自体は別地域(東ジャカルタ、チラチャス)の発祥であることが広く知られているが、カンプン・ウタンの実践者たちは自分たちの分派を、カンプン・ウタンに固有の伝統として位置付けている。本発表ではこのことを、分派内の学習の実践と分派間の交流の実践に着目して考察する。前者では、既存の技芸の習得よりも新しい技の創出が重視され、後者では、競技や競合ではなく共通性・差異の確認作業を媒介にした社交が重視される。この分析を通して、身体技法の差異化と共有をめぐるコミュニケーションの実践が、地域の固有性を醸成する媒体となっていることを論じる。 【文献】1. G.J. Nawi 2016 Maen Pukulan: Pencak Silat Khas Betawi. Yayasan Obor Pustaka.
  • 中村昇平
    Ritsumeikan SDGs Lecture Series: The 4th Lecture 2021年12月 口頭発表(招待・特別) オンライン開催 立命館大学産業社会学部国際調査・教育センター
     
    Doing fieldwork in a foreign environment is central to the academic disciplines of sociology and anthropology. Socio-cultural anthropologists in particular, have put a special emphasis on the method called “participant observation," which basically means that you participate in the daily activities of the local folks in the field while observing carefully what is happening around you. This apparently self-contradicting endeavor (of "participating" and "observing" at the same time) often entails a moment of mutual reflection. When you try to understand people of a different socio-cultural background, you sometimes have to make yourself understood by telling stories of your own background before you go about asking questions to those people. In so doing, you not only think about their culture, but also undergo a process of self-reflection. And, this is also the case the other way around. This process of mutual self-reflection inevitably brings about a transformation in perspectives. Just as much as it changes the way you understand the world around you, it does affect the perspectives of the people you spend time with in the field. I am going to exemplify this process of mutual reflexivity by speaking about my own experience of living and doing fieldwork in Jakarta, Indonesia and Kyoto, Japan.
  • 鈴木赳生; 中村昇平
    第94回日本社会学会大会 2021年11月 オンライン開催 日本社会学会
     
    1.目的・方法 さまざまな人種民族的背景をもった人々の対立や共存の問題が「多文化」研究としてテーマ化され、すでに久しい。多文化主義の可能性と限界が盛んに論じられた1980~90年代、排他的ポピュリズムが勢いを増して多文化主義の失敗が宣言されるに至った2000~10年代まで、「多文化」はつねに論争の的であった。だがこの政治性を色濃く帯びた論争史のなかで、「多文化」はしばしば、現実の社会状況から遊離した論争のアイコンとして取沙汰されてきた。 この人目を引く論争の陰にあるのは、日常的に経験される多文化状況に根ざした地道な研究群である。そこでは、異質な人々が「ともに投げ込まれた」(Massey 2005=2014)ポストコロニアルな生活空間においていかに対立・交渉をくり返しともに生きていくか、という「多文化の問い」(Hall 2000)が実地に問われてきた。こうした蓄積こそ経験的多文化研究に活用しうるものだが、未だ十分に精緻なレビューが不足している。本研究プロジェクトはこの状況を受けて、日常経験としての「多文化」をめぐる研究群を分野横断的に拾いあげて整理し、その到達点と課題を明らかにすることを目指す。本報告はその手始めとして、1.多文化都市の公共空間に焦点を当てたAmin(2002)以降の地理学的研究群と、2.それを参照しながら「日常多文化主義」(Wise and Velayutham eds. 2009)として展開されてきた社会学的研究群、というふたつの系譜をたどる。 2.結果・結論 上述のふたつの系譜は、人々が異質な他者とともに生きなければならない現実をいかに引き受けているかを知る糸口として、他者との日常的「出会い」(encounter)に着目し、そこでの接触や交渉を記述しようと試みてきた。だがそこで考察の手がかりとされる「出会い」は、ともすれば定義が曖昧なままブラックボックス化されてしまう。つまり、多文化的日常の出会いとしてさまざまな事例が集められる一方で、それらが概念レベルでどのように意味づけられるのか、いかなる出会いがどのような点で重要なのかといった概念の内実に不透明さが残るのである。 これに対して本報告は、出会いが表象(representation)よりも現前(present)の次元に焦点を当てていることを確認したうえで、その内実を①公共空間/②身体経験という二側面に切り分けて分析的に明確化する。従来の多文化研究はおもに、文化的に形成された人種民族的なカテゴリ/アイデンティティなど、現前を再構成する表象の領域に照準を合わせてきた。これに対して本報告が取りあげる研究群では、現前の領域における、表象的区分のみに還元されない接触・交渉の経験に焦点が置かれる。都市の日常生活の舞台となる①公共空間(公共交通機関、市場・商店、公園、etc.)においては、表象領域では区分されるような他者同士(「入植者」/「先住民」、etc.)が実際に出会い、一定の②身体経験が共有される。この現前領域におけるカテゴリ越境的経験は、表象領域における区分からまったく自由なわけではないが相対的に自律したものとして、異質な他者同士の関係構築の糸口となるのである。
  • 中村昇平
    東南アジア学会オンライン例会 2021年09月 口頭発表(一般) オンライン開催 東南アジア学会
     
    カンプン・ウタンで集落の民俗芸能として実践される武術を取り上げ、感覚やアフェクトに着目して人種・エスニシティを論じる議論に位置付けてその意義を論じた。言語的相互行為が前景化する身体技法を考察する際にも感覚とアフェクトを弁別することの重要性を指摘した上で、民族意識と不可分の対として認識されるブタウィ人の集落意識が、アフェクトを根拠とした身体感覚の交感を通して「自然な」ものと認識される過程を説明した。
  • インドネシアの「路地」と「村」の暮らし──大都市ジャカルタの片隅で出会う集落先住者の世界  [招待講演]
    中村昇平
    「本の世界に入り込もう」第1回 2021年07月 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等 樫原本陣 樫原本陣「まちの本陣」プロジェクト
     
    京都市で唯一現存する本陣遺構である樫原本陣を地域住民の集う場とするプロジェクトの一環として、書籍の内容を紹介してその「世界に入り込む」という一般向けイベントの主旨に合わせて、バリの村落とジャカルタの路地を取り上げた2つの書籍の内容を紹介した上で、ジャカルタ郊外に今も残る集落の事例を取り上げ、本の内容からもう一歩踏み込んだ自生的住民コミュニティの世界を紹介した。
  • 民族意識のローカルな表出──ジャカルタ郊外の武術実践からみる自生的集落の世界  [招待講演]
    中村昇平
    「ジャカルタ大都市圏の広域人口動態分析に向けたマクロ・ミクロの融合的研究」第4回研究会 2021年07月 口頭発表(招待・特別) オンライン開催 京都大学東南アジア地域研究研究所国際共同研究拠点タイプⅣ萌芽型「ジャカルタ大都市圏の広域人口動態分析に向けたマクロ・ミクロの融合的研究」
     
    地図情報・統計データなどのマクロなデータと参与観察などのミクロなデータを組み合わせてジャカルタ大都市圏の生活実態を多角的に解明するという研究会の主旨に合わせて、参与観察で得た考察をマクロな社会状況と結びつける視点を提示した。ジャカルタ大都市圏における自生的集落の社会組織と、集落の民俗芸能として伝承される武術・演劇の慣行への参与観察から、制度上の民族や村落では捉えきれない民族・集落の枠組を説明した。
  • 中村昇平
    カルチュラル・タイフーン2021 2021年06月 口頭発表(一般) オンライン開催 カルチュラル・スタディーズ学会
     
    ジャカルタ郊外で集落の民俗芸能として実践される武術と演劇を取り上げ、観客に「みせる」という芸能の側面がもつ意味を論じた。実践的な合理性よりも、体の仕組みを前提とした、言葉による明示的な論理の投げかけ合いに重きを置く娯楽としての武術が、演劇の場面でも日常的に使用されることで、いかに観客に「みせる」かという目的が前景化し、いかに相手を「たおす」かが建前上の目的ですらなくなったことを説明した。
  • 中村昇平
    日本文化人類学会第55回研究大会 2021年05月 口頭発表(一般) オンライン開催 日本文化人類学会
     
    集落の民俗芸能として実践されるブタウィ人の武術の事例を、アフェクトに着目して人種・エスニシティを論じる議論の流れに位置付け、その意義を論じた。言語的相互行為が前景化する身体技法を考察する際にも、感覚とアフェクトを弁別することの重要性を指摘した上で、民族意識と不可分の対として認識されるブタウィ人の集落意識が、アフェクトを根拠とした身体感覚の交感を通して「自然な」ものと認識される過程を説明した。
  • 間身体的交感をめぐるコミュニケーションの作法──ジャカルタ郊外における民俗芸能としての武術実践とブタウィ人の集団意識
    中村昇平
    社会人間学研究会 第1回例会 2021年04月 オンライン開催 社会人間学研究会
     
    ブタウィ人にとって、武術実践の多様性と集落の独自性の認識が、民族の画一性の意識といかに両立するかを説明した。武術を不可欠の要素とする演劇や、技の学習・創造、技の差異と共通性をめぐるコミュニケーションの実践から、国家が押しつけた抽象的枠組である「民族」が、生活の現実に根差した「自然な」ものとして意識されるのはなぜか説明し、当該実践が公定の集団枠組に回収されない集団意識の基礎を成していることを論じた。
  • ナショナルな物語に回収しきれないローカルな伝統──インドネシア・ジャカルタ郊外の集落武術から  [招待講演]
    中村昇平
    伝統武術のグローバル化連続講演会 2020年12月 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等 オンライン開催 静岡県立大学国際関係学部
     
    インドネシアの首都ジャカルタ周辺では、近隣地域の日常生活に根差した「集落武術」ともいえる実践が広く営まれてきました。これは、オランダ植民地期、ジャカルタがまだバタヴィアと呼ばれていた時代からの先住者集団であるブタウィ民族の文化実践として知られています。郊外には、植民地期から続く集落(kampung)を単位とした社会組織や帰属意識を色濃く残す場所もまだあり、そうした地域では、かつてブタウィ語で「拳遊び」(maen pukul)と総称された様々に異なる流派の武術が、集落独自の伝統として、それぞれの集落の先住者によって今に至るまで営まれています。 本講演では、カンプン・ウタンと呼ばれる集落の伝統武術実践を取り上げ、国家が振興した民族や文化の観念には回収できないローカルな実践の意味を考察したいと思います。当地の武術実践は、二人一組で手を取り合って技を探し出すことをその核心とし、常態的な改変が伝統の存続にとって不可欠であるという明確な意識のもと行われています。この考察から、日々のなにげない実践の積み重ねが、地方文化や国民的スポーツの振興を通して国家レベルで推進される「民族」「文化」の概念化の統制のおよばない領域を生活の中に確保する基盤となる可能性を論じます。
  • 中村昇平
    インドネシア研究懇話会(KAPAL)第2回研究大会 2020年11月 口頭発表(一般) オンライン開催 インドネシア研究懇話会(KAPAL: Kelompok Pemerhati dan Peneliti Indonesia di Jepang)
     
    本発表は、ブタウィの事例から、国家が規定する民族(suku bangsa/etnis)の範疇を 生活意識との関係で考察する。特に、デポック市カンプン・ウタンの武術と演劇の実践 から、集落(kampung)と民族の帰属がいかに齟齬なく意識されるのかを説明する。 ブタウィ人の間で武術は広く実践されてきた。空手や合気道に似たものから象形拳まで様々な流派があり、各々に異なる起源の地をもつ。こうした流派の差異は一般に、集落のアイデンティティと結びつくものと見なされている。 発表者は、ブタウィ人の民族意識に関して、文化政策の中で規定された民族の枠組が 住民に広く受容された一方で、抽象的範疇に回収しえない、集落の生活世界に根ざした 集団意識の差異があることを論じてきた。カンプン・ウタンでは、集落先住者の住民組 織が集落の集団枠組を認識面で支える要素になっている[中村 2017; 2018]。 習得過程を通して身体技法や感覚の変容を伴うものでありながら、大衆に親しまれてもいる武術実践は、帰属意識に日常次元で実感を抱く要素となっている。そこで本発表では特に、武術実践と、その一環として日常的に実践される演劇に着目する。 カンプン・ウタンで「集落の伝統」とされるのはゴンベル(gombel)と呼ばれる武術 流派である。この流派は東ジャカルタの発祥だが、各地に伝播したことで地域差が生じ た。この差異は、異端として否定的に語られることはなく、歴代の教授者の創造性と結び付けられ、地域ごとの個性として尊重される。 一方、武術実践者の日常の活動に、パラン・ピントゥと呼ばれる演劇がある。武術の演舞を不可欠の構成要素とする演劇の形式は文化政策によって標準化され、「ブタウィ文化」を象徴する芸術実践として振興された。単一のプロットに従って上演される演劇は、 武術の流派が異なっても「同じブタウィの風習」と認識されやすい。 本発表では、武術の地域差が個人の創造性と関連づけられることで集落の帰属意識を支える一方、武術の技が「ブタウィ文化」共通の演劇形式の中で演舞されることで、集落と民族の帰属意識が日常実践の中で齟齬なく醸成され、維持されることを論じる。 【 文 献 】 1. Shohei Nakamura 2017 “Identitas Etnis dan Perasaan Berkelompok Perkampungan Masyarakat Betawi,” Prosiding Konferensi 60 Tahun Antropologi Indonesia/ 2. 中村昇平 2018「都市先住者のエスニシティ─「バタヴィア先住民」ブタウィの集落と 帰属意識」京都大学博士論文
  • 日本文化人類学会第54回研究大会 2020年05月 口頭発表(一般) オンライン開催 日本文化人類学会
  • 中村昇平
    インドネシア研究懇話会(KAPAL)設立記念大会 2018年12月 口頭発表(招待・特別) 京都大学稲盛財団記念館 インドネシア研究懇話会(KAPAL: Kelompok Pemerhati dan Peneliti Indonesia di Jepang)
  • 中村昇平
    関西社会学会第69回大会 2018年06月 口頭発表(一般) 松山大学 関西社会学会
  • Shohei Nakamura
    Konferensi 60 Tahun Antropologi Indonesia 2017年09月 口頭発表(一般) インドネシア大学 インドネシア大学人類学研究センター
  • Yang Diperhidupkan Akan Bertahan: Makna Tradisi dan Pandangan terhadapnya bagi Masyarakat Sebuah Kampung Betawi(活性化されるものが継続する──あるブタウィ集落の住民にとっての伝統の意味とそこに対する見方)  [招待講演]
    Shohei Nakamura
    Acara Diskusi KOMPAK dan Cak Tarno Institute 2017年09月 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等 Cak Tarno書店 Cak Tarno書店
  • Ethnicity, Hamlets, and the Sense of Belonging in the Case of Betawi  [通常講演]
    Shohei Nakamura
    Discussion about Cultural Revival and New Technology on the Phase of Post Modernity in Indonesia 2017年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) インドネシア大学 インドネシア大学人類学研究室
  • 都市先住者のエスニシティ──「バタヴィア先住民」ブタウィの集落と帰属意識  [招待講演]
    中村昇平
    東南アジアの海とひと研究会 第10回研究会 2017年07月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
  • Excavating Spontaneity: The Batavian Indigenous and their Urban Hamlets  [通常講演]
    Shohei Nakamura
    Kyoto University-Nanjing University Sociology and Anthropology Workshop 2017 2017年05月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) 南京大学 南京大学
  • Perasaan Berkelompok Perkampungan Urban dan Identitas Etnis di Jabodetabek(ジャカルタ大都市圏における都市集落の集団意識とエスニック・アイデンティティ)
    Shohei Nakamura
    Dialog antar Peneliti Muda dari Indonesia dan Jepang(インドネシア科学院 インドネシア・日本若手研究者間ダイアローグ) 2016年09月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) インドネシア科学院(LIPI) インドネシア科学院(LIPI)
  • Shohei Nakamura
    6th International Symposium of Journal Antropologi Indonesia 2016年07月 口頭発表(一般) インドネシア大学 Jurnal Antropologi Indonesia
  • Shohei Nakamura
    Third ISA Forum of Sociology 2016年07月 口頭発表(一般) ウィーン大学 International Sociological Association
  • Studi Perbandingan Pola Kehidupan Kampung Jepang dan Jabodetabek  [通常講演]
    Shohei Nakamura
    Diskusi Kelompok Terarah LKI 2016年03月 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等 インドネシア大学 インドネシア大学人文科学部インドネシア研究所(LKI FIBUI)
  • 民主化過程の周縁で──インドネシアの民主化においてエスニシティを資源とした大衆組織がもつ意味  [通常講演]
    中村昇平
    東南アジア都市政治研究会 2015年05月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) 京都大学 京都大学東南アジア研究所共同利用・共同研究拠点「東南アジア研究の国際共同研究拠点」萌芽型研究『東南アジアの首都における「開発の政治」と「支持調達の政治」』
  • Shohei Nakamura
    日独6大学アライアンス(HeKKSaGOn)4th Japanese-German University Presidents' Conference 2015年04月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) 東北大学 HeKKSaGOn University Consortium
  • Shohei Nakamura
    World Congress 2014 2014年07月 口頭発表(一般) パシフィコ横浜 International Sociological Association
  • Shohei Nakamura
    Inter-congress 2014 2014年05月 口頭発表(一般) 幕張メッセ International Union of Anthropological and Ethnological Sciences
  • 大規模エスニック組織にみられる多元的な集団帰属意識──インドネシア、ジャカルタにおけるブタウィ・エスニシティの大衆組織から  [通常講演]
    中村昇平
    東南アジア学会関西地区例会 2014年04月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) 京都大学 
    ジャカルタ先住の民族集団とされジャカルタ大都市圏に500万の人口を抱える「ブタウィ」の名を掲げ、下層住民に治安と職を提供することを目的とした社会組織として2001年に発足したブタウィ統一フォーラム(FBR: Forum Betawi Rempug)は、その後急速に勢力を伸ばし現在では170万の登録成員を抱える。FBRはその規模と活動の性格から、権威主義体制崩壊後の民主化と地方分権化の文脈において多方面から注目を集めてきた。しかし先行研究の多くはFBRを一枚岩的に捉える傾向が強く、そのため成立の経緯や動員原理、および組織構成などが一元的にしか理解されてこなかった。本発表では、ジャカルタ大都市圏全域を基盤とした一般的なエスニシティ意識とより小規模な地域を基礎とした帰属意識との重層性を前提とした分析を行うことで、組織の機構的側面に関する多面的な理解を目指す。さらに、国家レベルにおける福祉行政が事実上機能し得ない状況においてFBRや類似の社会組織が国家の社会福祉機能を補完することで大衆の生活世界の拡充に寄与し、新しい社会秩序の生成に貢献する可能性についても言及したい。
  • 中村昇平
    日本文化人類学会第47回研究大会 2013年06月 口頭発表(一般) 慶應大学 日本文化人類学会
  • 中村昇平
    関西社会学会第63回大会 2012年05月 口頭発表(一般) 皇学館大学 関西社会学会
  • 中村昇平
    日本文化人類学会2011年度第2回近畿地区研究懇談会・修士論文発表会 2012年03月 口頭発表(一般) 京都私学会館

MISC

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2023年04月 -2028年03月 
    代表者 : 田川 昇平
     
    本研究の目的は、一般的な集団意識が日常次元の包摂/排除の局面に結びつく過程と、社会的排除・分断が顕在化する局面で分断を越えた社会関係を創出して包摂と連帯を可能にする過程を説明することにある。均質化と標準化に特徴付けられるエスニシティ観念とは異なる次元における連帯の創出を人々の実践の中に見出し、新自由主義の浸透によって個人が分断・流動化される現代社会における連帯の可能性を提示することが最終的な目標である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2023年04月 -2027年03月 
    代表者 : 鈴木 赳生; 田川 昇平
     
    本研究は、「日常」の視点から民族研究を再構築し、現代の民族的対立状況に応じる新しいアプローチを提示する。ヘイト・スピーチや排外主義のような対立が人種・民族にもとづく排除として社会問題化されるとき、それが連綿とつづく日常生活の中で生じる問題だということはしばしば忘れられてしまう。だが対立が顕在化する局面だけでなく、それが人々のどのような生活経験や日常的感覚から生じているのかを解明しなければ、現代の民族的対立状況を根底から理解し解きほぐすことはできない。本研究は、「民族」の日常経験に光を当ててきた研究蓄積の統合と事例研究によって、日常民族研究のアプローチを確立し現代的課題の解決へ寄与する。
  • 京都大学東南アジア地域研究研究所:共同利用・共同研究拠点 「グローバル共生に向けた東南アジア地域研究の国際共同研究拠点」
    研究期間 : 2024年 -2026年 
    代表者 : 吉田 航太; 三村 豊; 林 憲吾; 新井 健一郎; 小泉 佑介; 田川 昇平; 久納 源太; 塩寺 さとみ; 加反 真帆; 岡本 正明
     
    本研究では、インドネシアのジャカルタ首都圏において大きな変動の中にある小規模経済活動が生み出す地域的多様性をマクロ・ミクロの融合的な視点から明らかにするものである。経済センサスおよび人口センサスのデータから小規模産業の業種別の分布・変化を明らかにし、さらに、ミクロな現地調査から近年のE-commerce等のデジタル化の影響を探る。経済活動から見た地域社会の多様性を示すことで、首都圏社会構造の変化を捉える動態的なモデルの構築を目指す。
  • 国立民族学博物館:共同研究(一般)
    研究期間 : 2020年10月 -2024年03月 
    代表者 : 片岡 樹; 市野澤 潤平; 川瀬 由高; 川田 牧人; 桑山 敬己; 黄 潔; 島村 恭則; 清水 展; 中谷 文美; 中村 昇平; 平野 美佐; 松村 圭一郎; 飯田 卓; 平井 京之介
     
    本共同研究の目的は、国外フィールドでの民族誌的経験を通して、文化人類学による日本社会/文化理解の新たな視角を提案することである。異文化理解とは異文化を自文化と参照する営為であるため、それは必然的に一種の自文化論となる。本共同研究では、国外での民族誌的研究の経験を重ねてきた研究者たちが、暗黙裡の参照項として措定してきた日本文化を対象化することで、国外フィールド発の日本研究の新たな可能性を提示したい。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
    研究期間 : 2019年10月 -2023年03月 
    代表者 : 岡本 正明; 足立 真理; 西島 薫; 森下 明子; 長谷川 拓也; 林 憲吾; 島上 宗子; Wahyu Prasetyawan; Abdur Rozaki; Maxenisius Tri Sambodo; Kurniawati Hastuti Dewi; Syarif Hidayat; Andi Rahman; Erwiza Erwin; 亀田 尭宙; Iqra Anugrah; 長津 一史; 間瀬 朋子; Frans Ari Prastyo; Abdul Hamid; 中村 昇平
     
    本共同研究では、日本とインドネシアの地域研究者がビッグデータなどを用いながら共同研究を行い、ドナーが途上国に一律に適用しがちなグッド・ガバナンスの概念をインドネシアの自治体の事例から再検討した上で、それぞれの地域社会に依拠・適合した地方ガバナンスのモデル構築を目指している。そのため、今年度は、インドネシアでビッグデータ分析を行える機関を選択して、調査方法について議論を始めた。代表者、分担者、研究協力者による国内会合も行った。地域研究者にとっては、ビッグデータ分析の利用は新しい手法であるため、その可能性について意見交換を行った。IT専門家と協議をして、オンライン情報としては、SNSとオンライン・ニュースを活用することとした。SNSのなかでも、データへのアクセスが比較的容易であり、また、政治行政分析では使いやすいため、ツイッターを使うこととした。本研究が自治体レベルの分析のため、オンライン・ニュースについては地方紙のオンライン版を積極活用する必要があるため、現地の機関にその情報収集を依頼した。また、どちらのデータについても、10年間分のデータを収集して分析できるかについて現地のビッグデータ分析機関と交渉中である。具体的な調査対象としては、自治体が重視している4セクター(教育、公衆衛生、インフラ整備、開発)をとりあげることとした。また、どの自治体を対象とするのかについては、ビッグデータ分析できるだけのオンライン情報の量を確保できるかが重要なポイントとなっており、その点についても、現地の機関に各自治体についてのオンライン情報量を分析してもらうことにした。
  • 在ジャカルタ大衆組織構成員の階層・社会意識調査──インドネシア大衆組織の大規模な階層・社会意識調査に向けて
    京都大学東南アジア地域研究研究所:共同利用・共同研究拠点「東南アジア研究の国際共同研究拠点」
    研究期間 : 2021年06月 -2022年03月 
    代表者 : 足立真理; 岡本正明; 久納源太; ムハマド・ハリピン; 本名純
  • 京都市:誘導型まちづくりプランニング支援事業補助金
    研究期間 : 2020年08月 -2021年03月 
    京都市で唯一の本陣遺構である樫原本陣は、旧山陰街道沿いに立地する地域のシンボル的な歴史的建造物である。この樫原本陣の立つ街道筋は、界隈景観整備地区にも指定され、町家が立ち並ぶ街並みが残る趣のある地域である。 この樫原本陣を地域住民や近隣大学の大学生、まちづくり活動団体等が様々な活動に活用できる「集い場」として改修を行い運営する事業に取り組むことを検討する。 想定している「集い場」の機能として、「展示」「会議」「会合」「イベント」など、地域の様々な活動に活用できる場として改修する予定である。 これに加えて、本事業を通じて、より多様な地域住民の活動ニーズを把握して、集い場としての利用イメージを広げ、そのために必要な空間・設備を具体的に検討することを本事業の目的とする。また、この取り組みを通じて、「集い場」の利用者となる地域住民の方々に本事業に対する認知度を高め、利用ニーズの向上を図ることも想定する。 本事業により、樫原本陣を地域の集い場として再生することで、地域コミュニティの活性化や交流促進、地域と大学の連携促進、地域住民による多様な活動ニーズの実現の場「まちの本陣」として再生することを目指している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
    研究期間 : 2018年04月 -2021年03月 
    代表者 : 中村 昇平
     
    本研究の目的は、一般的集団意識が日常次元の包摂/排除の局面に結びつく過程、および、分断を越えた社会関係を創出して包摂と連帯を可能にする過程を説明することにある。均質化と標準化に特徴付けられるエスニシティ観念とは異なる次元における連帯の創出を人々の実践の中に見出し、新自由主義的統治の浸透によって個人が分断され流動化される現代社会における連帯の可能性を提示することが最終的な目標である。
  • 松下幸之助記念財団:松下幸之助国際スカラシップ
    研究期間 : 2016年08月 -2018年03月 
    代表者 : 中村 昇平
     
    本研究は、集落先住者を中心に運営される自発的な社会組織や社会活動の推移の中で、集落(カンプン)のコミュニティ意識が形成・維持・変容する過程を考察した。この考察を通して、エスニシティの可変性や柔軟性の起点を、戦略的/能動的に行為する主体として想定された個人の内部にではなく、個人が時に能動的に参与し、時に巻き込まれる中で形成され、変容していく集落コミュニティの生活の中に見出すことが本研究の目的である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
    研究期間 : 2012年04月 -2015年03月 
    代表者 : 中村 昇平
     
    本研究の目的はインドネシア、ジャカルタに住むブタウィ人を対象に、参与観察法とインタビューを中心とした調査を行うことで、社会組織レベルでのエスニシティ生成と維持/変容のメカニズムを、個人の視点にまで踏み込んで詳細に明らかにすること、そして、日常生活のなかで、一般の集団成員がどのような場面でどのように自己表象を行うかを、同一の枠組みのもと詳細に記述することである。

担当経験のある科目

  • 立命館大学国際関係学部 This course investigates the ways in which urban communities have been treated in different academic disciplines. Drawing insights from sociology, human geography, socio-cultural anthropology, and other related disciplines, it examines the structure of knowledge production in urban studies and how those studies have treated case studies from different parts of the globe. In so doing, this course aims to explore a perspective with which to construct a place-specific knowledge about urban communities. By introducing the kind of case studies that demand researchers to look carefully at the scales smaller than sub-national geographical units (local municipalities), it focuses especially on the mundane social phenomena that help construe the everyday realities of residential communities.
  • 立命館大学国際関係学部 Drawing insights from sociocultural anthropology, sociology, human geography, history, and other related disciplines, this course is designed to introduce perspectives with which to look into micro-level social phenomena. After a brief overview of the ways in which “areas” or “regions” have been defined and imagined, this course proposes two orientations for area studies, namely, one that takes into account the scales larger than state and/or region, and the one that focuses on areas smaller than the state. With the global-scale perspective in mind, the course will henceforth predominantly focus on micro-scale perspectives and how such views can lead to a place-based, vernacular ways of knowledge production. The class is composed of lectures and discussions. Coursework involves reading, observing, interviewing, and writing. Active engagement in all the above-¬mentioned tasks is expected.
  • 立命館大学国際関係学部 This course aims to understand the history and current social issues regarding village communities and residential associations in Japan. And it aims to come up with solutions based on the Problem-Based Learning (PBL). The course includes lectures, group work and presentations. The course will provide some basic insights about rural and urban communities in Japan: their historical development and the challenges they face right now. Students will focus on one of the social issues to elaborate it as well as to suggest a possible solution to it. The ultimate objective of this course is to cultivate students' skill to work together and create outputs effectively and efficiently from multifaceted perspectives and a deep understanding of other cultures. Not only identifying the problems, but also suggesting and working out solutions with other students from different cultural backgrounds are key elements in this course.
  • 立命館大学国際関係学部 本科目では、東南アジアをとりまくさまざまな社会事象について、トピックごとに学ぶ。具体的には、親族・ジェンダー・民族・歴史・国家・経済・法・呪術・芸能・紛争・移民・観光・開発などの諸側面において生じている社会事象や社会問題について、文化人類学的な視点から学習する。文化人類学の知見を参照しながらトピックごとに学ぶことで、東南アジア諸国で現実に起こる様々な社会事象・社会問題を身の回りの経験にひきつけて考察できるようになることを目標とする。
  • 東洋大学国際学部 本学科では、国内外での「地域づくり」の知識と、「現場」でそれを実行できる人材の育成を教育目標とし、その実践力を身につけるために正課内に現場・実務経験を伴う科目群を設置しています。地域社会実習は、いずれもこの科目群に位置づけられており、授業の一環としての参加・単位修得が可能となっています。これらの活動に参加することは、本学科における学びを生かすという面でも高く期待されており、社会の現場に出ることで得られる経験や社会的・人的ネットワークは大きく、主体性、協調性、コミュニケーション力の向上にも寄与することが見込まれます。 専任教員からの指導を受け、かつ報告書や成果発表会でのアウトプットの機会を活用することで、より学びを深め、かつ実習先への持続的な貢献を目指します。
  • 東洋大学国際学部 本科目は、真のグローバル人材を育成することを目的とし、現場主義に立脚した「地域づくり」を学ぶとともに、学生一人ひとりが「哲学」を獲得することを目指し設立したものである。 本科目では、京都市郊外の「樫原」(かたぎはら)地域を対象として、住民コミュニティに関する調査を実施するとももに、まちづくり活動に実際に参加し、それらの成果を報告書にまとめる。樫原(旧名岡村)は江戸期に宿場町として栄えた農村であった一方、昭和の高度成長期以降は住宅街としての開発が盛んとなった地域である。そうした経緯から、この地域では、旧来の村的なコミュニティと、新住民を含めた町内会的なコミュニティが重なるようにして存在している。この調査をとおして、異なる立場の住民をいかに取り込んで地域を発展させることができるのかを考える。 研修をとおして、地域コミュニティの問題への理解を深め、現場での実践的行動力、課題解決力、および、コミュニケーション能力の向上を図ることを目的としている。
  • 東洋大学国際学部 都市人口の約6割が集中するというアジアのメガシティ、バンコク。急速な都市成長とともに地方からの労働者で形成されてきたスラムは1200箇所に上る。1990年代以降の大規模な住宅政策や貧困削減活動などを受け、コミュニティとして結束し自身の問題を解決したスラムもあれば、一方で更なる都市化とグローバル化の影響を受け、コミュニティとしての機能を失いさらに問題を深刻化させていくスラムもある。今後スラム問題にどうアプローチしどう解決していくかは、大きな都市課題であるといえる。 本研修では、バンコクのチャオプラヤー川沿いに位置するヤナワー区のスラムコミュニティにて密着型フィールドワークを行い、(1)アジア途上国の都市開発のダイナミクスを体感するとともに、(2)スラム問題およびコミュニティマネジメントの実態および課題を理解し、(3)都市におけるスラム問題改善についてコミュニティレベルでの提案を行う。それにより、都市問題の理解を深め、課題解決力およびコミュニケーション能力の向上を図ることを目的としている。
  • 海外英語実習(ShIP フィリピン USC)
    東洋大学国際学部 Fundamental Aim of Short Intensive Program (ShIP) aims to improve four skills of English (as score of TOEFL-ITP: 20, IELTS: 0.5, or TOEIC:70). ShIP provides approximately 105 hours for studying English to increase the scores. “Short Intensive Program Ⅴ”is a supportive program for ShIPⅠ to Ⅳ and drives preparation for studying English, PBL and reviewing student’s understanding.
  • 東洋大学国際学部 この授業では、大学での学修において必要となる基礎的な技法の理解と修得を目指します。特に、国際地域学科で学ぶために必要な、情報を収集し、問題点を整理し、意見を発信し、他者と議論するための基礎的な力を修得することを目標としています。 具体的には、資料の収集、グループ討論、レポートの作成、プレゼンテーションの作成、口頭発表等の実践を通して、資料の収集や文献調査、分析、文章・口頭表現に必要な基礎的な技術と能力を養います。特に、研究課題の設定、先行研究の整理、質的調査法による現地調査、研究成果の発表(口頭発表・報告書執筆)というプロセスを経験することで、主体的に問題を発見し、解決策を示す能力を養います。
  • 文化人類学A
    国士舘大学政経学部
  • 東洋大学国際学部 本講義は真のグローバル人材を育成することを目的とし、現場主義に立脚した「地域づくり」を学ぶとともに、学生一人ひとりが「哲学」を獲得することを目指し設立したものである。 テーマの決定、調査計画、フィールドワーク、成果発表は学生主体で行なわれる。調査対象地は茨城県日立市中里地区であ り、グリーンツーリズム、空き家活用、都市人口交流、農業と六次産業などのテーマが想定される。 15人の学生を数グループ(1グループ3人以上)に分け、対象地における活動を学んだうえで、各グループの調査計画に基づきフィールドワーク(聞き取り、参与観察、など)を行う。まとめた成果は現地、授業で発表し、優れたグループは秋学期の公開報告会で発表する。また、学期末には報告書を発行する。担当教員はフィールドワークの事前・事後学習として、地域課題に関する基礎知識の提供、社会調査手法など適宜指導を行うが、フィールドワークの引率は原則行わない。
  • Project Studies入門
    東洋大学国際学部 当科目はProject Studies科目である国際地域学研修、フィールド調査実習(SFS)および地域社会実習(インターンシップ・ボランティア)等の課外活動に取り組むための事前学習として位置付けられています。学生としての対外的な基礎マナーを身につけるとともに、PBL活動およびキャリアビジョン形成のための基礎知識を習得することを狙いとします。 本講義は二部制となっています。 前半は、国際地域学科におけるキャリア・ビジョンを概観したうえで、学生生活において戦略的に課外活動に取り組み実践するための基本的な知識を身につけるとともに、大学生として社会や地域に出て行く上での基本的なルールを学び、マナーを身につけることを目的としています。 後半は、留学や海外研修などに関心のある学生に向けて、安全対策と危機管理、および課題解決型学習(Problem-based Learning: PBL)を用いた基礎的な現地調査の手法に関する講義を行います。 講義の中で、随時PS科目の具体事例紹介や手続き等についても説明していきます。
  • 東洋大学国際学部 本学科では、国内外での「地域づくり」の知識と、「現場」でそれを実行できる人材の育成を教育目標とし、その実践力を身につけるために正課内に現場・実務経験を伴う科目群を設置しています。地域社会実習は、いずれもこの科目群に位置づけられており、授業の一環としての参加・単位修得が可能となっています。これらの活動に参加することは、本学科における学びを生かすという面でも高く期待されており、社会の現場に出ることで得られる経験や社会的・人的ネットワークは大きく、主体性、協調性、コミュニケーション力の向上にも寄与することが見込まれます。 専任教員からの指導を受け、かつ報告書や成果発表会でのアウトプットの機会を活用することで、より学びを深め、かつ実習先への持続的な貢献を目指します。 なお、対象となるプログラムは本学科が推奨する実習先のみです。ToyoNet-ACEの「インターンシップ・ボランティア/地域社会実習」ページで随時案内していますので確認ください。
  • 文化人類学B
    国士舘大学政経学部
  • 国際地域学基礎演習Ⅱ(プロジェクトゼミナール)
    東洋大学国際学部
  • 海外英語実習(ShIP カナダ TRU)
    東洋大学国際学部 Fundamental Aim of Short Intensive Program (ShIP) aims to improve four skills of English (as score of TOEFL-ITP: 20, IELTS: 0.5, or TOEIC:70). ShIP provides approximately 105 hours for studying English to increase the scores. “Short Intensive Program Ⅴ”is a supportive program for ShIP Ⅰ to Ⅳ and drives preparation for studying English, PBL and reviewing student’s understanding.
  • 都市社会学特論B
    近畿大学総合文化研究科
  • 都市社会学特論A
    近畿大学総合文化研究科
  • 英語で学ぶ日本の社会A
    龍谷大学国際学部
  • Japanese Society
    立命館大学国際関係学部
  • Japanese Society
    龍谷大学グローバル教育推進センター
  • 多文化共生論
    近畿大学総合社会学部
  • General Education Course III(Introduction to Socio-cultural Anthropology)
    立命館大学政策科学部
  • アジア社会研究
    神戸学院大学現代社会学部
  • 社会学2
    京都市立芸術大学芸術学部
  • 現代社会研究
    仁愛大学人間学部
  • 社会調査法(社会調査士科目B)
    仁愛大学人間学部

社会貢献活動

  • 一般財団法人 樫原本陣跡保存会
    期間 : 2022年03月 - 現在
    役割 : 企画
  • 樫原町家灯篭会
    期間 : 2019年04月01日 - 現在
    役割 : 企画
    種別 : 対話型集会・市民会議

メディア報道

  • ローカルな大衆演劇と地域の人びとの暮らし(連載 インドネシアの文化的多様性 第3回)
    報道 : 2021年08月25日
    執筆者 : 本人
    発行元・放送局 : 一般財団法人 日本インドネシア協会
    番組・新聞雑誌 : 『月刊インドネシア』2021年9月号(通巻879号)
    pp.27-29 会誌・広報誌
  • ローカルな大衆音楽と地域に固有の歴史性(連載 インドネシアの文化的多様性 第2回)
    報道 : 2021年06月25日
    執筆者 : 本人
    発行元・放送局 : 一般財団法人 日本インドネシア協会
    番組・新聞雑誌 : 『月刊インドネシア』2021年7月号(通巻877号)
    pp.27-31 会誌・広報誌
  • 漫談から見るインドネシアの多様性(連載 インドネシアの文化的多様性 第1回)
    報道 : 2021年05月25日
    執筆者 : 本人
    発行元・放送局 : 一般財団法人 日本インドネシア協会
    番組・新聞雑誌 : 『月刊インドネシア』2021年6月号(通巻876号)
    pp.20-23 会誌・広報誌
  • 報道 : 2021年01月30日
    執筆者 : 本人
    発行元・放送局 : インドネシア研究懇話会(KAPAL)
    番組・新聞雑誌 : 【大会見聞記】
     インターネットメディア
  • 報道 : 2020年02月09日
    執筆者 : 本人
    発行元・放送局 : インドネシア研究懇話会(KAPAL)
    番組・新聞雑誌 : 【カバル・アンギン(風のたより)】
     インターネットメディア 中村昇平 (日本学術振興会 特別研究員PD) 久納源太 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 院生) ジャカルタで本屋といえば、グラメディアをはじめとした大手書店がまず思い浮かぶ。スハルト退陣後、出版業界は自由度を増した。しかし、実際には大手書店が出版・販売両面で市場シェアの大半を占め、以前にはそうした書店の片隅にあった専門書のスペースも段々と狭くなっているように見える。その一方で、市場規模からいえば小規模な出版社や書店が、学術書・専門書の刊行と流通においてはますます重要な役割を担うという状況がある。今回我々は、ジャカルタにおける学術出版の事情を知るために、コムニタス・バンブー社(Komunitas Bambu)とチャ・タルノ書店(Cak Tarno)という二つの小規模出版社・書店を訪れた。前者は直訳すると「竹林コミュニティ社」、後者は「タルノさんの書店」を意味する(「チャ」は東ジャワで用いられる敬称)。
  • 報道 : 2017年01月18日
    発行元・放送局 : シノドス
     インターネットメディア インドネシアの首都ジャカルタで、2016年11月4日と12月2日の二度にわたって「イスラム擁護アクション」と題された大規模なデモ・集会が行われた。11月4日のデモには5〜10万、12月2日の集会には20〜40万のイスラム教徒が参加したと言われている。 これら2つの「アクション」が開催された原因は、中華系インドネシア人であり、キリスト教徒でもあるバスキ・チャハヤ・プルナマ州知事(通称アホック)に、イスラム教に対する宗教冒涜の疑いがかかったことだった。当初は、少なからぬ報道がイスラム過激派、ジハーディスト、果てはテロ組織との結びつきを強調して今回の事件を報じた。中には、国全体がイスラム過激派に乗っ取られる危険を示唆し、インドネシアの民主主義と寛容性が試されている、と警鐘を鳴らすものもあった。 インドネシアは国民の8割以上をムスリムが占め、バスキ知事のようなキリスト教徒は少数派である。また、32年に及んだスハルト権威主義体制期には中華系住民への弾圧が行われており、現在でも差別意識が根強く残っている。加えて、2017年にジャカルタ州知事選挙を控えていることから、強硬派のイスラム系組織によるバスキ氏の退任を求める運動やデモは激しさを増していた。 しかし11月4日以前の運動はイスラム急進派・強硬派とその支持者のみが参加するものであり、広範な大衆の支持を得てはいなかった。なぜ今回に限ってこれほどの人数が集まったのだろうか。以下ではまず事件の概要を紹介し、11月4日以降に動員が大規模化した要因を説明する。その上で、一連の事件がインドネシア社会にとってもつ意味を考察したい。

学術貢献活動

  • 『白山人類学』誌査読
    期間 : 2023年04月01日 - 2025年03月31日
    役割 : 査読
    種別 : 査読等
    主催者・責任者 : 白山人類学研究会
    白山人類学研究会が発行する査読付学術誌『白山人類学』への投稿論文の査読を担当した。
  • 期間 : 2023年12月16日
    役割 : パネル司会・セッションチェア等
    種別 : 学会・研究会等
    主催者・責任者 : インドネシア研究懇話会(KAPAL: Kelompok Pemerhati dan Peneliti Indonesia di Jepang)
    立命館大学 インドネシア研究懇話会(KAPAL: Kelompok Pemerhati dan Peneliti Indonesia di Jepang)第5回研究大会(於立命館大学)の自由研究発表セッションDで司会を務めた。
  • Crossroads in Cultural Studies 2018 Pre-Conference パネル司会
    期間 : 2018年08月11日
    役割 : パネル司会・セッションチェア等
    種別 : 学会・研究会等
    主催者・責任者 : Association for Cultural Studies
    上海大学 カルチュラル・スタディーズ分野の国際学会Association for Cultural Studies主催の研究大会、Crossroads in Cultural Studies 2018(於上海大学)の若手研究者向けプレ・コンファンレスにおいてパネルB3 Reencountering a Global Flow of Ideas in Knowledge Productionの司会を務めた。

その他

  • 2018年06月 - 2018年06月  専門社会調査士(第A-000591号)
  • 2010年06月 - 2010年06月  社会調査士(第009478号)

その他のリンク

researchmap