日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2019年04月 -2023年03月
代表者 : 高橋 英幸; 亀井 明子; 元永 恵子; 小島 千尋; 石橋 彩; 下山 寛之; 近藤 衣美; 赤澤 暢彦
運動による筋グリコーゲン(Gly)の減少はパフォーマンス低下や筋疲労に繋がるため、良いパフォーマンスを発揮・維持するためには、減少した筋Glyを素早く回復させる必要がある。しかしながら、競技種目特性や個人特性に応じた素早い筋Gly回復のための栄養摂取戦略で必要となる、筋Gly回復速度の部位特異性や競技種目特異性、筋Gly回復速度の個人差に影響を及ぼす要因、等に関する知見は十分ではない。
令和2年度は、新型コロナウイルス感染予防のために実験が大きく制限され、特に、実際の競技者を対象とした、競技種目特異性を検証するための実験を実施することができなかった。そのため、令和3年度に予定されていた、筋Gly回復速度と有酸素性能力との関係の検証実験を繰り上げて実施した。運動習慣のある健常男性12名を対象として、①全身性有酸素性能力(最大酸素摂取量)測定、②リン磁気共鳴分光法を用いた運動後のクレアチンリン酸(PCr)回復速度を指標とした局所性(大腿部筋)有酸素性能力測定、③疲労困憊に至る自転車運動前、運動直後、4時間後、12時間後、24時間後に炭素磁気共鳴分光法を用いた大腿部筋Gly測定を実施した。その結果、最大酸素摂取量とPCr回復速度との間に有意な相関が認められた。一方、筋Gly回復速度との関係では、最大酸素摂取量と筋Gly回復速度との間に関係は認められなかったが、PCr回復速度と筋Gly回復速度、特に、運動4時間後までの筋Gly回復速度との間に有意な相関が認められた。
本研究の結果は、これまで考えられている筋Gly回復に影響を及ぼす要因の他に、より早いPCr回復(Pi減少)と関係するグリコーゲンホスホリラーゼキナーゼやグリコーゲンシンターゼbの脱リン酸化の促進が関係している可能性、そして、筋Gly代謝に対するより大きな局所コントロールの影響を示唆するものである。