日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2005年 -2007年
代表者 : 別所 正博
歩行者ナビゲーションをはじめとした位置情報サービスは,障害者の移動支援をはじめとした様々な可能性をもつ.しかし既存のGPSに依存したサービスは屋内や地下では利用できず,さらにヒトにとって意味のある「場所」を十分把握することが難しかった.このことは,ヒトにとって意味のある「場所」を扱うインフラの欠如に起因すると考えられる.
この問題の解決へ向けて,個々の「場所」に遍在的にデバイスを設置し,情報と結びつけるインフラの導入は有効な解決策となる,そこで本年度の研究では,このようなインフラをユビキタス空間識別基盤と定義し,その応用のケーススタディを行なった.
第1のケーススタディは,歩行者ナビゲーションへの応用である.ここでは,分岐や出入口などの複数の移動候補がある「揚所」で,周囲のランドマークを利用した誘導情報を提示することで,屋内外を問わず高い誘導性能を達成できることを実地検証することができた.
第2のケーススタディは,障害者の移動支援への応用である.移動に際して必要な情報は,移動者の身体属性に応じて異なる.視覚障害者の場合では,周囲のランドマークは手がかりにならず,健常者よりも細かく移動指示を行なうことが必要になる.肢体障害者の場合では,周囲のバリアの回避方法とバリアフリー設備へのアクセス方法を提示する必要がある.このことは,重要な「場所」がヒトによって異なることが本質である.ユビキタス空間識別基盤では,そのような「場所」を柔軟に定義することによって,有効なサービスを構築可能であることを検証することができた.