日本学術振興会:科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)
研究期間 : 2019年06月 -2023年03月
代表者 : 野口 晴子; 川村 顕; 阿波谷 敏英; 花岡 智恵; 朝日 透
今年度は、COVID-19感染拡大による進捗の遅れを取り戻すべく、データ・エンジニアリング領域から研究協力者を2名増員し、今年度5月に入手が完了したNDBデータの整備を開始した。具体的には、現在、NDB上にある包括医療費支払制度(以下、DPC/PDPS)レセプトを基に、「教師あり機械学習」を行っているところである。
今年度は、別途収集・許諾を得た海外のデータ、及び、年度初めに入手出来た『国民生活基礎調査』を用いて3つの研究を行った。まず、医療保険制度の持続可能性の観点から、どの先進国でも課題となっている保険収載の在り方と治療成果との関連性に係る2つの研究を行った。1つ目は、米国の抗がん剤治療への患者アクセスの格差を是正するanticancer parity lawsの導入の死亡率に対する効果を、がんの部位別に推定した最初の研究(Shen et al. “Impacts of anticancer drug parity laws on mortality rates”)、2つ目は、カナダの禁煙補助剤に対する医療保険適用拡張の患者の健康リスク行動に与えた効果に関する実証研究(Shen et al. “The effect of coverage of smoking-cessation aids on tobacco use: Evidence from Canada”)である。『国民生活基礎調査』(2013・2016年)では、1966年・「丙午」生まれの大学進学率が26。5%と過去最高になった現象を「自然実験」と見做し、学歴の高低と健康リスク行動との関連性に係る因果推論を行った(Shen et al. “Does College Education Make Us Act Healthier? Evidence from a Japanese Superstition”)。