日本学術振興会:科学研究費助成事業(特別研究員奨励費)
Date (from‐to) : 2021/04 -2024/03
Author : 松井健人
本年度は、戦後西ドイツ図書館を検討するにあたって、戦後西ドイツ図書館界でも課題となった良書基準、青少年保護といった教育的課題が戦前ドイツからどのように引き継がれていったのか、この点に着目して研究を行った。結果、戦前期・戦後期でのこれらの教育的課題の問題状況がそれぞれ詳細に判明した。また、前述の研究活動の成果について、とりわけ戦前期について、本年度は研究成果を発表していった。
本年度の研究実績は以下の通りである。ヴァイマル期の青少年の読書に関する検討を行った学会誌の査読付き研究論文一本を発表した。ならびに、ナチス・ドイツの禁書目録・推薦図書目録の一部を翻訳、整理した資料紹介を執筆した。この資料紹介は、現在学術誌に投稿中である。また、学会研究発表として、戦前期日本図書館界におけるドイツ図書館情報の受容に関して検討した発表と、ヴァイマル・ナチ期の図書目録に関する発表を行った。さらに、戦後西ドイツ図書館に関しては、図書館情報学にかかわる事典に項目を執筆した。
これらの研究活動により、戦後西ドイツ公共図書館においても重要な課題である、青少年の読書の健全性や、アメリカによる占領期ドイツの図書館政策へアプローチする下準備を整備することができた。今後は戦後西ドイツにおける図書館政策の歴史的展開、ならびに戦時から戦後にかけてのドイツ図書館界における人的連続性・非連続性に着目して研究を行う予定である。