文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(C))
研究期間 : 2004年 -2006年
代表者 : 栗原 久; 魚住 忠久; 山根 栄次; 猪瀬 武則; 宮原 悟; 阿部 信太郎; 久野 弘幸
本研究は,中等教育段階における経済教育カリキュラムの改善を図るため,諸外国における経済教育研究・実践の成果を参考として,日本の学校教育で実際に活用可能な経済教育カリキュラムのあり方を検討するのが目的である。この目的を達成するため,次の研究活動を行った。(1)諸外国における経済教育実践の状況を探る。(2)これらを相互に比較検討,グローバル化する社会に対応する経済教育の傾向を明確にする。(3)(1)(2)の研究結果を参考に,日本における経済教育カリキュラムのあり方を検討する。上の研究活動により,以下の知見を得た。1 日本の場合,教科書記述を検討する限り,中学校社会科公民的分野,高校公民科「現代社会」「政治・経済」における経済的内容の扱いに,大きな違いはない。これは,学習指導要領の指摘(たとえば,中学はミクロ,高校はマクロ)が,教科書レベルでは,かならずしも反映されていないということである。2 米国経済教育協議会は,近年,経済教育とともに,金融教育に積極的に取り組んでいる。これは,ブッシュ大統領がかかげる「オーナーシップ社会」への教育的対応である。イギリス(イングランド・スコットランド)では,選択科目である「ビジネスマネージメント」が生徒の人気を得ている。ドイツでは,例えばハンブルク市に「経済教育センター」がおかれ,若者の就労支援のためのキャリア教育が行われている。オーストラリアでは,統合カリキュラムの中で経済的内容が扱われている。3 グローバリゼーションの進展など社会の変化に対応する経済教育のあり方を検討する場合,総合的な学習の時間,数学,国語などにも経済的内容を取り入れるインフュージョンカリキュラムの編成が課題になる。