今年度は、当初本プロジェクトが想定した最終年度に当たるが、2020年度に引き続きコロナ禍が続き、満足のいく研究を行うことができなかった。特に清滝プリンストン大学教授、Dekle南カリフォルニア大学教授、川上東洋大学教授との複数財生産企業に関する財構成の変化に関する研究は、オンラインという限られた時間での検討しかできなかった。このため暫定的な結果を専門誌に投稿したが更なる改良の必要性を指摘されている。
コロナ禍の中でそれぞれの研究活動が制約される中、先ほどの清滝・Dekle・川上・宮川論文だけでなく、川上氏が企業活動基本調査を使って研究した「組織効率性と多角化」に関する論文、そして地域別の財価格と地域生産性格差を研究した徳井・牧野論文についてそれぞれの進捗状況を、2022年1月22日にオンラインで報告した。ここでは乾学習院大学教授や権日本大学教授ら、この分野の専門家にも参加していただき、コメントをもらった。
この他では宮川が、複数の資本財を前提とした投資行動と生産性変動の関係を実証した論文(Miyagawa, Tonogi and Ishikawa (2021))がJournal of the Japanese and International Economiesに掲載された。また2021年5月には、宮川が編集した『コロナショックの経済学』が中央経済社から刊行された。この本の中には、宮川・徳井他が、地域産業連関表を使って書いた「コロナショックの産業面・地域面への影響」や川上氏の「コロナショックによる労働市場の変化」などが収められている。