租税に対する政策選好:納税意識と税制改正の影響に関する計量分析
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2018年04月 -2022年03月
代表者 : 玉岡 雅之; 川瀬 晃弘; 横山 直子; 宮崎 智視; 中澤 克佳; 大野 裕之; 亀田 啓悟
2019年度は第1回目のアンケートを実施し,2020年度に実施する第2回目のアンケートの設計を行った.
まず,「『機会があれば税金を過少に申告する』という意見についてあなたはどのように考えますか」という,World Value Survey(WVS)のcheatingに関する質問を和訳して項目とした.結果,「決して正当化されない」との回答をした個人の比率は46%に上ることが示された.正しく税を申告しようという意思を持つ回答者は半数以上を占めているものの,「日本はtax moraleが高い」との東京都主税局(2017)でも紹介されたWVSの結果よりは低いことに注目すべきである.
消費税増税に対する賛否に関するについては,ほぼ50%の人が「反対」「どちらかといえば反対」と回答している.一方,「どちらかといえば賛成」の比率は25.2%であり,「強く賛成」とする人は5.4%に止まっている.また,各個人が望ましいと思っている消費税率についての分布をみると,半数近くの人が0%から5% の範囲に分布している.現状の8%という回答を選んだ人の比率は9.32%,10%という回答の比率は20.54%であり,今回引き上げる水準までは許容範囲,と考えている回答者も一定数存在していることが明らかとされた.また,15%という回答が8.38%,20%という回答も5.03%と,一部のヨーロッパの国と同じくらいの水準を許容する人も少なからずいることも付言したい.
「高いtax moraleと強い租税抵抗」という,ある種の「taxpayer paradox」が,今回のアンケート調査からも裏付けられることが分かった.実際に,cheatingを良しとしない回答者が7割近くに上り,かつ同じくらいの人が税を正しく申告することに注意を払っていることが明らかとされた,