山本 一生 (ヤマモト イッセイ)
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【博士論文までの研究来歴】
学部在学時から修士課程において、満洲における教育の歴史を、『南満教育』という雑誌を通じて研究してきました。博士課程進学後に研究対象を山東省青島に絞り、特に第一次日本統治期(1914-22年)の日本人教育と中国人教育との関係について検討を進め、その成果を博士論文「戦前期山東省青島における近代学校形成に関する研究」(東京大学、2011年3月)にまとめました。さらに、その成果を元に『青島の近代学校-植民地教員ネットワークの連続と断絶-』(皓星社、2012年)を上梓しました。
【科研費研究】
現在は「帝国日本から戦後国民政府へ-学校教育の接収と再編-」(2021年度-2025年度科学研究費基盤C、課題番号21K02199)において、戦前-戦後を連続的に捉え、「再編」を軸に研究しております。本研究では山東省青島の学校教育を主な対象とし、「接収」と「再編」を軸に一国史観を超える視座を提示することを目指します。学校教育に注目する理由は、国家が「国民」を養成する機関として管理することで国民統合を具体化する装置であるとともに、国家と基層社会とをつなぐ役割が学校教育には求められてきたためです。つまり学校教育は国家の意思を伝達する装置であるとともに、基層社会の教育要求が表出する場でもあります。そのため、政治体制の転換によって「国家」側の意思は大きく変わります。
【現在の研究関心】
本研究の目的を達成するために、以下の3つの観点で研究を行います。その観点とは、①学校制度②教育内容③教員・学生といった人材です。①学校制度②教育内容は、いわば「ハード」です。例えば学制の適用や教科書の審査のように、国家の意思が反映されるため政治体制の転換によって大幅に改変されたと考えられます。しかし、新しい統治権力が、全ての学校制度を一から構築するとは考えられません。そこで本研究では、政治体制の転換によって「配電システム」という「ハード」としての学校がどのように「接収」され、「再編」されたのか明らかにします。一方で、③人材は「ソフト」と言える。これらは政治体制の転換などによる影響は受けにくいと考えられるため、容易には変わらないと予想されます。以上の3つの観点から、政治体制の転換によって青島の学校がどのように「接収」され、「再編」されたのか、特に連続面に着目し、その具体相を探ります。