文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究期間 : 2011年 -2013年
代表者 : 柏田 祥策; 立田 晴記; 長坂 征治; 廣津 直樹; 坂本 正樹; 清水 和哉
(1)活性汚泥への影響:下水処理場から採取した活性汚泥およびOECDに指定の人工排水に銀ナノコロイド(SNC)を最大終濃度1mg/Lとなるように添加したところ,処理能の阻害はみられなかった。しかし,SNC由来の銀イオンのみの影響を解析したところ処理能の阻害がみられ,処理能阻害は銀イオンによるものと強く推測された。(2)水生植物への影響:イネの発芽中に銀ナノコロイドを処理して発芽率を調べた結果,SNC濃度10mg/Lまで正常に発芽した。次にイネを発芽させた後,SNCを含む水耕液で5週間栽培し,葉と根の生育量を調べた。SNCO.1mg/L以上で濃度依存的に葉および根の伸長が阻害された。特に根のNH4+の吸収速度が低下していた。(3)藻類への影響:ムレミカヅキモへのSNCの毒性(EC50)は55ppb(Ag濃度)であった。光条件を明暗周期(L14/D10)に変更して培養した場合には,生育阻害率の低下が観察され,連続照明条件下ではSNCの毒性が強化されていることが示唆された。また培養の初期生物量の増加によって阻害率が低下していた。また光電子伝達系IIが阻害されていた。(4)動物プランクトン群集への影響:SNCと硝酸銀を用いてミジンコ急性遊泳阻害試験(Daphnia magna,Daphnia galeata,Bosmina longirostris)を行った結果,D.g.とB.lが高い感受性を示した。またEC50がSNCで硝酸銀よりも3-5倍高かったので毒性の直接原因がSNCではなく銀イオンであると推察された。それぞれの物質についてはEC50(遊泳阻害)濃度でも内的自然増加率に影響がなかった。(5)メダカへの影響:銀イオン曝露区において,メダカ飼育液(ERM)を使用した胚では,心拍数低下,孵化遅延,および胚の発達阻害が確認された。SNC曝露区において,ERMを使用した場合,pH4では心拍数の低下および孵化遅延が確認され,銀に対して最も高い生物濃縮性を示した。pH7およびpH9においても心拍数の低下が確認された。