日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2021年04月 -2024年03月
代表者 : 峰松 明也子; 太田 昌子; 矢野 友啓
令和3年度は、疲労骨折リスクの高い女性長距離陸上選手において、食事条件(エネルギーおよび栄養素摂取量、摂取時刻)を揃え、運動(一過性の持久性運動)を制限する「運動制限期」、制限せず運動部としての活動を行う「運動実施期」で血漿Hcy濃度を調査した。「食事」と「運動」は血漿Hcy濃度に影響を与える因子である。アスリートは、一般成人よりも習慣的に高タンパク質な食事を摂取し、高強度な運動を実施することが予想される。そのため、食事および運動が与える血中Hcy濃度の変化は大きいと仮定した。
全被験者6名中4名において、「運動制限期」の血漿Hcy濃度は、「運動実施期」よりも有意に低かった。また、全被験者の平均においても同様に「運動制限期」の血漿Hcy濃度は、「運動実施期」よりも有意に低かった。さらに、疲労骨折のカットオフ値として報告された値と比較した場合、「運動実施期」は有意に高く、「運動制限期」は有意に低かった。 結論として、女性長距離陸上選手において、食事条件を一定としたとき、運動(一過性の持久性運動)の実施は、翌日の空腹時血漿Hcy濃度を上昇させることが分かった。
血中Hcy濃度に対する食事や運動の影響に焦点を当てている研究はあるものの、結果は矛盾しており決定的ではない。それは、被験者間での食事内容の一致がなされていない、運動の強度、期間、種類等、方法論が非常に多様であり、一貫性のある結論を導くことが困難なためである。それに比べ、被験者は寮生活を送るアスリートに限定し、食事条件(栄養素摂取量、摂取時刻)を揃え、実施運動が明確になっている条件下で血中Hcy濃度の変動を追うことができる点が本研究の独自性である。