アジア地域の農村部における遠隔教育の実態調査
日本学術振興会:科学研究費助成事業 国際学術研究
研究期間 : 1992年 -1993年
代表者 : 加藤 秀俊; 苑 復傑; 西野 文; 王 淑英; 苅谷 剛彦; 吉本 圭一; 山中 速人; 天野 郁夫; 鄭 在貞; 尹 秀一; 須藤 護; 谷沢 明; 稲葉 継雄; 馬越 徹; 広瀬 洋子; 岩永 雅也; 高橋 和夫; 高橋 一男; 西村 重夫
遠隔学習は世界において高等教育をあらゆる人々に施す方法として有意義なものである。遠隔教育において、地域センターのような地方の学習センターは学生にとって重要な学習の機会を提供している。学習センターは重要であるにもかかわらず、私達はそれらの実態(役割や効能など)についての充分な知見を持ち合わせていない。それに、各国の異なった学習システムの相違についても実態把握が充分になされていない。
そこで、本研究では、学習センターの役割と機能に焦点をあてて、研究しようとするものである。学習センターの教員スタッフや事務管理スタッフに対するインタビューや異なった学習センターのシステムに関する比較研究によって、私達は学習センターの役割や効能,学習者が居住している地域社会に対する影響などを調査研究した。特に、アジアの社会経済発展、あるいは、社会移動に対して、遠隔教育がどのようなインパクトを与えるかに、焦点を絞って、実態調査を行った。遠隔高等教育機関の在学生や卒業生,社会経済開発に携わる政府関係者、諸外国で学習したり仕事に従事している人達に対するインタビューを通して、遠隔教育が当該社会におけるどのような社会経済的影響があったかを分析した。
過去2年間、本研究では、次のとおり、アジア地域において遠隔高等教育を実施している大学の比較研究を展開してきた。
まず、平成4年度は韓国とマレーシアにおいて調査・研究を行った。
マレーシアでは、平成4年9月2日から9月26日にかけて、マレーシア科学大学の遠隔教育部学生及び卒業生を対象にインタビュー調査と、教育システムと学習センターに関する評価調査とをアロ-・スター、イポ、コタ・バル、クアンタン、クアラルンプール、クチン、コタ・キナバルの各学習センターでインタビュー調査を行い、さらに当該国における伝統型大学教育の状況の把握のため、最も歴史の長いマラヤ大学においてヒアリングと資料収集を行った。
韓国では、平成3年度に予備調査、平成4年度に本調査を韓国放送通信大学の在学生及び卒業生を対象にインタビュー調査と、教育システムと学習センターに関する評価調査とを平成4年8月24日から9月14日にかけてソウル、プサン、テク、クワンチュ、チュンチョン、チョンチュ、チェチュ、アントンの各学習センターでインタビュー・アンケート調査及び資料収集を行った。
平成5年度は中国において、在学生及び卒業生を対象にインタビュー・アンケート調査及び教育システムと学習センターに関する評価調査を、平成5年11月初旬から下旬にかけて、北京、四川、南京、上海、瀋陽、広州の6地点12機関(各地の広播電視大学と重点普通大学)にて行い,中国の高等教育システムにおいてもっとも伝統的な重点普通大学と革新的かつ周辺に位置する広播電視大学とを比較した。
いずれの調査においても、有意義な調査結果が得られ、その成果は遂次刊行しており、また,本調査は平成元年度から平成3年電にも,同様の趣旨でアジア・太平洋地域(タイ、インドネシア、インド、パキスタン、フィージ-、バヌアツ、ソロモン諸島、ナウル、キリバス、ツバル、ニウエ、トンガ、西サモア、クック諸島)においても調査しており、今後はさらに包括的な研究を行いその成果を刊行していく予定である。