日本学術振興会:科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究期間 : 2012年 -2014年
代表者 : 花枝 英樹; 芹田 敏夫; 胥 鵬; 佐々木 隆文; 鈴木 健嗣; 佐々木 寿記
本研究の目的は、世界的金融危機や東日本大震災などに見られるように、さまざまなリスクに晒されている企業が、それらのリスクや危機にどのように対処しているのかを、コーポレートファイナンスの観点から明らかにすることである。特に、平成24年度は、『財務リスク・マネジメントに関する企業の意識調査』という題目で、全上場企業に対してアンケート調査を行った。445社から回答を得たが、そのデータと公表財務データをもとに、分析を行い、「日本企業の財務リスク・マネジメント:サーベイ調査に基づく実証研究」というワーキングペーパーを完成させた。主な分析結果として、以下のことが明らかになった。まず第1に、全体をみると、金利リスク、為替リスクなどの市場リスクよりも、事業リスクを重要視している企業の方が多い。それに呼応するように、金融デリバティブの利用が回答企業の半数弱と少ない。しかし、市場リスクに晒されている企業では、金融デリバティブの利用は高まる。また、大企業ほど財務リスク・マネジメントに積極的である。第2に、財務リスク・マネジメントを行う理由に関する理論仮説の検証では、概ね理論と整合的な結果が得られた。特に、倒産リスクや資金制約がデリバティブの利用の決定に重要であることが検証された。第3に、米国等との国際比較の点では、日本企業の財務リスク・マネジメントの重要視度が低く、実際にも金融デリバティブの利用の程度が低いことが判明した。