犯罪報道におけるジェンダー問題に関する実証的研究
日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2016年04月 -2021年03月
代表者 : 戸高 由美; 北出 真紀恵; 大谷 奈緒子
2019年度は5回の研究会を開催し、研究を進めた。
2018年度5月に実施した「マスコミ報道についての意識調査」のデータの一部を用いて、受け手のメディア利用と報道評価との関連を探るために、各メディアの利用状況別に「犯罪報道への意見」を検討し、いくつかの結論を得た。利用メディアおよびその利用時間ごとに「犯罪報道への意見」をスコア化することにより「受け手像」が明確になった。例えば、メディア利用時間が長くなるにしたがってスコアが高くなるのは、「社会全体の治安悪化を感じさせる」である。この意見へ特に影響しているのは新聞であり、長時間閲読者ほどそう思う傾向が強い。そのほか、事件と利用するメディアによって意見は異なることから共通項を見出すのは難しいが、興味本位を煽る報道、犯人視報道のスコアは、新聞、テレビ、インターネットニュースの順で高いことから、新聞への評価がわかった。一方、被疑者や被害者の性別による報道の違いの感じ方については、新聞とインターネットニュースの利用が影響しており、長時間利用者ほど性別による報道の違いを感じている。他方、マスコミやインターネットに対する意見は、メディアの利用時間による意見の方向性の違いはみられなかった。これらの結果成果は2019年度に執筆した2つの論文にまとめた。
また、犯罪報道とジェンダー問題に関して「法務、コンプライアンス(ジェンダーに関するガイドライン等)」「ジェンダーやダイバーシティに関する組織的な取り組み」「社会の動向とニュース制作との関わり」「インターネットによるニュースの配信」などの事項について、専門知識を有する人物やニュース制作に関与する人物へのインタビュー調査を行い、ニュース制作過程から犯罪報道の在りようを明らかにすることを試みた。2020年に入り新型コロナウイルス感染拡大により対面でのインタビューが難しくなったため調査を中断中である。