日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2019年04月 -2023年03月
代表者 : 西野 淑美; 石倉 義博; 平井 太郎; 秋田 典子; 永井 暁子; 荒木笙子
本研究の目的は、災害時に地理的に同一条件にあった住民が、各世帯の社会的な要因と復興事業の状況により、どのように異なる生活再建行動をとるのかを明らかにすることである。東日本大震災時の岩手県釜石市A町内会会員のうち40数世帯に2012年から原則毎年繰り返して聞き取り調査(縦断調査)を実施し、2019年までに8回の対面調査を重ねてきた。どのような条件の世帯がどのような時期にどのような形態の住宅再建を行ったのか、またどのような判断のもとでそのような選択を行ったのか、選択が変わった場合は何があったのか。このような問いに、回顧法の調査ではなく各時点での証言をもとに答えることができるデータを蓄積し、これまで6冊の報告書にまとめてきている。2016年にはA町内会震災時全会員を母集団とした質問紙調査も実施した。
しかし、2020年夏に予定していた第9回の聞き取り調査は、コロナ禍により断念せざるを得なかった。その後も2022年の春まで、まとまった調査時間を確保できそうな時期には繰り返し感染拡大の波が訪れた。現地とのやりとりからは、東京方面からの訪問は不適切と受け止められるおそれが高いことがわかり、2021年度中も現地訪問が叶わなかった。そのため、当初2021年度までの予定だった本研究の補助事業期間を、2022年度まで延長する申請を行い、認められた。
震災復興の区画整理後の新生した町に各世帯がどのように定着し、コミュニティがどのように変化してきたのか、元の街を離れた世帯はどのような状況にあるのか、2019年より後の時期の詳細な情報を得る必要がある。よって、2022年夏には現地を訪問して、できれば対面で、難しければオンラインに対応できる世帯のみオンラインで、第9回の聞き取りを行いたいと考えている。また、並行して書面での質問紙調査の実施や、釜石市役所関係者への聞き取りも検討している。