研究者総覧

長津 一史 (ナガツ カズフミ)

  • 社会学部国際社会学科 教授
  • アジア文化研究所 研究員
  • 社会学研究科社会学専攻 教授
Last Updated :2024/04/06

研究者情報

学位

  • 人間・環境学修士(京都大学)
  • 博士(地域研究)(京都大学)

科研費研究者番号

  • 20324676

J-Global ID

研究キーワード

  • 国境   開発の社会史   サマ・バジャウ   海民の社会史   国家と社会   東南アジア海域   Maritime Southeast Asia; Nation-State and Society   

研究分野

  • 人文・社会 / 地域研究 / 東南アジア社会動態論
  • 人文・社会 / 地域研究 / 東南アジア研究
  • 人文・社会 / 文化人類学、民俗学 / 文化人類学

経歴

  • 2019年04月 - 現在  東洋大学社会学部教授
  • 2017年10月 - 2018年03月  シンガポール国立大学アジア研究所客員上級研究員
  • 2006年04月 - 2018年03月  東洋大学社会学部准教授
  • 2017年04月 - 2017年09月  京都大学東南アジア研究所客員准教授
  • 2005年05月 - 2006年03月  京都大学東南アジア研究所助手
  • 2000年05月 - 2005年04月  京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科助手
  • 1998年04月 - 2000年04月  日本学術振興会特別研究員(PD)

学歴

  • 1993年04月 - 1998年03月   京都大学   人間・環境学研究科   文化・地域環境学
  • 1992年04月 - 1993年03月   上智大学   大学院外国語学研究科
  • 1987年04月 - 1992年03月   上智大学   外国語学部   ロシア語学科

所属学協会

  • 日本マレーシア学会   日本文化人類学会   東南アジア学会   日本熱帯生態学会   

研究活動情報

論文

書籍

  • 飯笹佐代子; 鎌田真弓 (担当:分担執筆範囲:海のフロンティアと越境移動―マカッサンがオーストラリアに向かうまで)昭和堂 2024年04月 ISBN: 4812223059 360 69-85
  • 長津, 一史 (担当:分担執筆範囲:サバの人びと―定期市タムと民族間の共生)明石書店 2023年09月 ISBN: 9784750356396 376p 121-126
  • 長津一史 (担当:分担執筆範囲:バジャウ人の移動する生き様)西日本出版社 2022年03月 ISBN: 9784908443695 279p 136-147
  • Kazufumi Nagatsu (担当:分担執筆範囲:Maritime Diaspora and Creolization: A Genealogy of the Sama-Bajau in Insular Southeast Asia (Simplified and revised version).)National University of Singapore Press (NUS Press) 2021年07月 ISBN: 9813251255 448 323-357
  • 大学的オーストラリアガイドーこだわりの歩き方(鎌田真弓(編))
    長津一史 (担当:分担執筆範囲:タマリンドが語るもうひとつのオーストラリア史)昭和堂 2021年06月 ISBN: 9784812220160 ii, 278, 9, 9p, 図版4p 98-100
  • 長津一史; 間瀬朋子 (担当:分担執筆範囲:アジアとオーストラリアを繋ぐ人びとー海域世界の視座から)昭和堂 2021年06月 ISBN: 9784812220160 ii, 278, 9, 9p, 図版4p 81-97
  • 国境を生きるーマレーシア・サバ州、海サマの動態的民族誌
    長津 一史 (担当:単著範囲:)木犀社 2019年02月 481 
    21世紀前半のいま、ボーダーレス化で存在意義を失うはずだった「国境」は、国境を越えようとする人とかれらを押し戻そうとする人、国境を開こうとする人と閉じようとする人がせめぎ合う場で、あらためて焦点化されるようになっている。わたしたちの世界にかくも深く関与しつづける国境とは、そもそも何なのだろうか。それはどのような意味を持っているのだろうか。本書では、国家や国際機関の視点からではなく、マレーシア・サバ州とフィリピンとのあいだの国境を生きる海民=海サマの視点から、いま述べた問いを探っていく。具体的には、マレーシア国家に編入された後のかれらの、①民族の生成、②開発過程、③イスラーム化にともなう宗教変容の三つの課題が、1990年代末におこなわれた綿密なフィールドワークに基づいて論じられる。
  • 生態資源――モノ・ヒト・場を生かす世界(山田勇・赤嶺淳・平田昌弘(編)))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:ひと・海・資源のダイナミクス――東南アジア海域世界におけるバジャウ人と商業性, 55-82ページ)京都:昭和堂 2018年05月 ISBN: 9784812217030 296 55-82
  • 海民の移動誌―西太平洋の海域文化史(小野林太郎・長津一史・印東道子(編))
    長津 一史 (担当:共編者(共編著者)範囲:東南アジアにみる海民の移動とネットワーク――西セレベス海道に焦点をおいて、148-177ページ)昭和堂 2018年03月 ISBN: 9784812217184 400 1-37ページ
  • 東南アジア地域研究入門3—政治(山本信人(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:境域、71-91ページ)慶應義塾大学出版会 2017年02月 ISBN: 9784766423969 344 71-91
  • 小さな民のグローバル学――共生の思想と実践をもとめて(甲斐田万智子・佐竹眞明・長津一史・幡谷則子(編))
    長津 一史 (担当:共編者(共編著者)範囲:海民の社会空間――東南アジアにみる混淆と共生のかたち、111-140ページ)上智大学出版会 2016年01月 111-140ページ
  • Proceedings of Asian CORE Workshop on Interface, Negotiation, and Interaction in Southeast Asia, edited by Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:Jalan Tikus on the Sea: Persisting Maritime Frontier and Multi Layered Networks in Wallacea, pp. 55-71)Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University. 2013年10月 55-71
  • 民族大国インドネシア―文化継承とアイデンティティ(鏡味治也(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:異種混淆性のジェネオロジー――スラウェシ周辺海域におけるサマ人の生成過程とその文脈, 249-284ページ)東京: 木犀社 2012年
  • 開発の社会史――東南アジアにおけるジェンダー・マイノリティ・境域の動態(長津一史・加藤剛(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:開発と国境――マレーシア境域における海サマ社会の再編とゆらぎ, 473-517ページ)東京: 風響社 2010年
  • 開発の社会史――東南アジアにおけるジェンダー・マイノリティ・境域の動態
    長津一史; 加藤剛 (担当:編者(編著者)範囲:)東京: 風響社 2010年
  • 朝倉世界地理講座3 東南アジア(春山成子・藤巻正巳・野間晴雄(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:島嶼部東南アジアの海民――移動と海域生活圏の系譜, 250-259ページ)東京: 朝倉書店 2009年
  • 多言語社会インドネシア――変わりゆく国語,地方語,外国語の諸相(森山幹弘・塩原朝子(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:境域の言語空間――マレーシアとインドネシアにおけるサマ人の言語使用のダイナミクス, 183-212ページ)東京: めこん 2009年
  • Crossing Disciplinary Boundaries and Re-visioning Area Studies: Perspectives from Asia and Africa, edited by Maruyama Junko, et al.
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:Cross-Border Movements and Convertibility of Maritime Networks: A Case of the Sama-Bajau in the Sulu-Makassar Sea)Kyoto: Graduate School of Asian and African Area Studies/ Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University 2006年
  • 海外の宗教事情に関する調査報告書(文化庁(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:マレーシア島嶼部(サバ州), 187-210ページ)東京: 文化庁 2005年
  • 変容する東南アジア社会―民族・宗教・文化の動態(加藤剛(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:<正しい>宗教の政治学――マレーシア国境海域におけるイスラームと国家, 245-293ページ)東京: めこん 2004年
  • 海域アジア(叢書現代東アジアと日本4)関根政美・山本信人(編)
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:越境移動の構図――西セレベス海におけるサマ人と国家, 173-202ページ)東京: 慶應義塾大学出版会 2004年
  • 海のアジア3 島とひとのダイナミズム(尾本惠市・濱下武志・村井吉敬(編))
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:海と国境――移動を生きるサマ人の世界, 173-202ページ)東京: 岩波書店. 2001年
  • フィールドワーク最前線――見る・聞く・歩く(山田勇編)
    長津 一史 (担当:分担執筆範囲:セレベス海域サマ人の移動と交流小史――ココヤシを運んだ海民たちを追って, 153-172ページ)東京:弘文堂 1996年 153-172

講演・口頭発表等

  • バジャウ学の30年ースラウェシ広域概査からみえたこと  [招待講演]
    長津一史
    スラウェシ研究会(オンライン) 2024年03月 口頭発表(招待・特別)
  • Kesennuma-Indonesia Relations after 2011: Focusing on Discourses on the Migrant Workers  [通常講演]
    Nagatsu, Kazufumi
    International Symposium “Religious and Theological Responses to Environmental Disaster in Asian History 2024年01月 口頭発表(一般)
  • 『亀山島』コメント―東南アジア海域世界の視点から  [招待講演]
    長津一史
    南山大学人類学究所・東アジア人類学研究会公開シンポジウム 2023年12月 口頭発表(基調)
  • Introduction: Commodity, People and Frontier: An Alternative Approach to Southeast Asian History in Japan  [通常講演]
    Kazufumi Nagatsu
    2023年度東南アジア学会研究集会・NIHU-MAPSシンポジウム Southeast Asia as Critical Crossroads: Dialogues with Anthony Reid 2023年07月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
  • バジャウとマグロ——海民のグローバルヒストリーを考えるための素描  [招待講演]
    京大学ヒューマニティーズセンター(HMC)第84回オープンセミナー『東南アジアから/で世界を視る:人文系地域研究のアクチュアリティ』 2022年10月 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
  • The Sea Peoples’ Arts of not Being Governed: Genealogy of the Bajau and its Political Settings in Nusantara  [通常講演]
    Nagatsu, Kazufumi
    インドネシア研究懇話会第3回研究大会 2021年12月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募) オンライン インドネシア研究懇話会
  • Social Dynamics of Diasporic Indonesian in Japan: Towards a Comparative Social History.  [招待講演]
    Nagatsu, Kazufumi
    Online Webinar Japanese Studies in Indonesia: Crisis and Reorientation 2021年09月 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等 ジャカルタ Research Center for Area Studies, Indonesian Institute of Sciences (LIPI) in collaboration with The Japan Foundation
  • "Political Genealogy of Creolism: The Sea Peoples’ Arts of Coping with the Authorities in Southeast Asian Maritime World"  [通常講演]
    Kazufumi Nagatsu
    The 10th European Association for Southeast Asian Studies (EuroSEAS), Berlin: Humboldt-Universität zu Berlin, 13, Sep. 2019. 2019年09月 口頭発表(一般)
  • 合評会講演 長津一史著『国境を生きる:マレーシア・サバ州、海サマの動態的民族誌』木犀社、2019年  [招待講演]
    長津一史
    東南アジア学会関東例会 2019年06月 口頭発表(基調)
  • 長津 一史
    The 12th International Conference on Hunting and Gathering Societies 2018年07月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募) Penang International Society for Hunter Gatherer Research
  • 長津 一史
    Asian Research Institute Cluster Seminar: Religionization at Margins in Insular Southeast Asia: Introducing Recent Southeast Asian Studies in Japan 2018年03月 口頭発表(一般) Singapore: National University of Singapore Asia Research Institute, National University of Singapore
     
    This seminar aims at introducing recent Southeast Asian studies in Japan focusing on the religionization of marginalized peoples, such as minorities or peoples in the peripheries in Insular Southeast Asia. In the last few decades, the national religious authorities have shaped public affairs and deeply intervened in the every-day religious lives in Malaysia and Indonesia, while global non-governmental missionaries have extended their outreach activities to the least visited communities in the Philippines and Indonesia. Experiencing these modern religionization process, religious life of the marginalized peoples has changed more drastically than that of the mainstream societies. The reason is that the religious order of the modern nation-states or global missionaries is configured on the basis of the ideals, values and concepts of the mainstream societies which are often far different from those of the marginalized peoples. How have such marginalized peoples reorganized their religious lives in the religionization process? This general question will be addressed in the following three presentations in this seminar: Islamization of the Bajau in Sabah, Malaysia and eastern Indonesia; Christianization of the Sama Dilaut/Bajau in Mindanao, the Philippines; and cultural reorientation of “Bissu” or androgynous priests among the Bugis, in South Sulawesi, Indonesia.
  • Maritime Movements and Ethic Reformation of the Bajau in Indonesian Maritime World  [招待講演]
    長津 一史
    International Science Conference on Bajo Society 2017年05月 口頭発表(招待・特別) Makassar, Indonesia Hasanuddin University
  • Bajau as Maritime Creoles: Dynamic of the Ethnogenesis in Southeast Asian Maritime World  [通常講演]
    長津 一史
    The 6th International Symposium of Jurnal Antropologi Indonesia 2016年07月 口頭発表(一般) University of Indonesia, Depok University of Indonesia
  • 長津 一史
    第95回東南アジア学会研究大会(大阪大学) 2016年06月 口頭発表(一般) 大阪大学豊中キャンパス 東南アジア学会
     
    わたしは近年、東南アジア海民論の試論として二つの論文[長津 2012, 2016]を書いた。そこでは、東南アジアの海民がしばしばクレオール集団を構成してきたことに着目し、そうした民族生成が生じる場の政治過程やその社会空間について考えた。政治過程については周縁性・違法性・自立性を、社会空間については持続的な混淆と在地の共生を、それぞれの特徴として挙げた。本報告では、わたしがそうした海民論を考えるなかで、どのような比較を設定していたのか、また東南アジア海民論のさらなる展開をみすえたとき、どのような比較が地域研究として意味を持ちうるのかを検討してみたい。 取りあげるのは、わたしが調査を続けてきたバジャウ人である。報告ではまず、バジャウ人の民族生成に焦点をおいた上記の海民論を紹介する。そのうえで、そこでの議論が、第一に地域内比較を手法として展開されたこと、第二に地域間比較を念頭において構想されたことを示す。 第一の地域内比較とは、フィールドワークに基づく約60の海民集落間、あるいはそれらが位置する海域圏間の比較を指す。この空間軸での比較と変化を手がかりとする時間軸での比較こそが、上記の海民論の基点、つまりバジャウ人をクレオール海民という視点で動態的に理解することを可能にした。 第二の地域間比較は、メタ地域間比較とグローバル地域間比較にわけられる。メタ地域間比較とは、東南アジアあるいはアジアの異なる「地域」、具体的にはジャワや東アジアの「陸域世界」との比較を指す。この比較では、1980年代以降の東南アジア海域世界論における陸地中心史観に対する批判をわたしの海民論に接合している。その内容は、アカデミズムにおける地域認識の相違を批判的に提示することを企図している。この容易ならざる比較をここで無謀にも取りあげるのは、それを射程におくことなしに、地域研究における東南アジア海民論の意義を示すことができないからである。 もうひとつのグローバル地域間比較とは、海民や海域世界を一般概念・類型として措定し、その内容や歴史過程を地域ごとに比較考察するかたちの比較である。それは、海民や海域世界の地域性/通地域性(普遍性)、時代性/通時代性(プロトタイプ性)を明らかにすることを目指す試みである。グローバル地域間比較については、東アジア海域世界を対比事例として簡潔に展望を述べる。
  • 長津 一史
    Consortium for Southeast Asian Studies in Asia (SEASIA) “Southeast Asian Studies in Asia” Conference. Kyoto: Kyoto International Conference Center. 2015年12月 シンポジウム・ワークショップパネル(公募) Kyoto: Kyoto International Conference Center Consortium for Southeast Asian Studies in Asia (SEASIA)
     
    This presentation examines the “Islamization” of the Bajau, a maritime minority, in Malaysia and Indonesia by placing the process in local, national and global contexts. “Islamization” here refers to the process through which the Bajau have regarded themselves as “authentic” Muslims and also gained status as such in local society. The Bajau were once known as sea nomads and have so far constituted a distinctive maritime population in the region. Their settlements are dispersed widely from the southern Philippines, Sabah in Malaysia, to eastern Indonesia. Although they were once considered illegitimate Muslims by the neighboring dominant groups due to the latters’ prejudice, the Bajau are now reputed as pious Muslims in some regions. The processes of Islamization took place partially in connection with the global trend of Islamic resurgence starting in the 1970s. The processes have been, however, well modified in accordance with the local ethnic relations or the national religious policies, as well. In what contexts have the Bajau become “pious Muslims”? How similar or different are the contexts in Malaysia and those in Indonesia? These questions form the basis of the present study. Specifically, it analyzes and compares two cases of Islamization of the Bajau in Semporna, a border town in Sabah, Malaysia and in Sapekan, a remote island of East Jawa, Indonesia.
  • 長津 一史
    第94回東南アジア学会研究大会(早稲田大学)統一シンポジウム「フィールドに学ぶ東南アジア--体験学習から研究者・実務家養成まで」(組織者:島上宗子・長津一史) 2015年12月 シンポジウム・ワークショップパネル(指名) 東京:早稲田大学 東南アジア学会
     
    本報告では、報告者が東洋大学において約10年間関わってきた学部レベルの臨地(フィールド)教育プロジェクトを題材に、①その系譜・企図、②学生の反応、③課題と可能性の3点について話す。 報告者は、2006年、東洋大学社会学部に着任した。報告者は、この教育組織に東南アジアに関わる臨地教育を持ち込むことを目論んだ。しかし、そこには当時、海外臨地教育を支える制度基盤は存在せず、さらに学生の大半は東南アジアについての知識も関心も持っていなかった。こうした状況で考えついたのが、「ふつう」の学生でも見聞きしたことがあるような東南アジアに関わる問題と日本を、身近なモノを媒介に結びつけ、そこに臨地教育を組み入れることであった。1980〜90年代、市民運動に取り組む東南アジア研究者が、バナナやエビを題材として「南北問題」にアプローチした手法を真似たのである。具体的には、まず熱帯林伐採を念頭において「紙と古紙」を、ついで日常生活のグローバル化を念頭において「古着」をそれぞれテーマとする教育プログラムを組織した。別の教員は、社会運動のグローバル展開を念頭に「コーヒーのフェアトレード」を取りあげた。いずれのプログラムも日本と東南アジアの双方に体験学習の場を設定した。 こうして約10年の間に、東南アジアに関わる臨地教育をカリキュラム化することに成功した。とにもかくにも学生の東南アジアに対する関心を喚起することはできた。しかし、東南アジアでの体験学習にまで参加する学生の数はいまだ少数にとどまる。ボランティアの枠組みを超えて東南アジアに関心を持ち、自ら調査に取り組むような学生は現れていない。報告者の教育能力の不足もある。しかしおそらく問題は、東南アジアさらには海外自体への学生の興味関心が過去10年ほどの間、低下し続けていることに深く関わる、つまり構造的な性格を帯びている。一歩先の臨地教育に向かう道のりは、決して単調ではない。 東南アジア地域研究の専門家がおこなう臨地教育では、その人の地域に根ざした総合的な知識と広範なネットワークが大いに役立つ。その内容は、既成のスタディ・ツアーとは一線を画したレベルで構想されうる。ただし、専門家の関心の押しつけに学生は近づかない。学部学生向けの臨地教育は、自らの専門と、かれらを惹きつけることができそうな関心との妥協点に設定されることになる。東南アジア研究者は、自らのキャリアを活かしつつ、「ふつうの」大学生に向けてどのような臨地教育プログラムを構想しうるのか。本報告では、いま述べた東洋大学の臨地教育を事例としてこの問いを検討してみたい。
  • 長津 一史
    「国を越える人々――越境の文化論」北九州:北九州市立大学北方キャンパス 2015年11月 口頭発表(招待・特別) 北九州市 北九州市立大学アジア文化社会研究センター
     
    21世紀にはいり、社会のグローバル 化が深化しているといわれている。 グローバル化という言葉には、その前 提として、国境を定める近代国家という社会システムの存在が不可分なもの として含まれている。しかし、その一 方で近代国家の成立以前より人々は移 動と越境を繰りかえしてきた。そして、 現代社会は、こうした越境の人々を巻 き込みながら、新しい文化複合を生み 出している。今回のシンポジウムでは、漂海民・華 人・島嶼民を対象にフィールドワーク をおこなっている3人の研究者が、それぞれの研究成果をもとに、近年の社 会変容も含め、近代的な国民国家の背 後に伏流する越境の文化を語る。
  • Orang Bajau sebagai Kreol Maritim: Ethnogesnesis dan Kontek Sosio-ekologinya di Laut Wallacea  [招待講演]
    長津 一史
    Seminar Nasional: Peranan Geografi dalam Mendukung Kedaulatan Pangan, Cibinon: Badan Informasi Geospasial 2015年04月 口頭発表(招待・特別)
  • 研究工具としての空間情報――インドネシア・フィリピンにおける民族動態を題材に  [通常講演]
    長津 一史
    東南アジア学会関東例会,東京:東京外国語大学本郷サテライト. 2014年11月 口頭発表(一般)
  • 長津 一史
    International Borneo Research Council Conference (BRC 2014), Kota Kinabalu: Universiti Malaysia Sabah (UMS) 2014年08月 口頭発表(招待・特別) Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia The Borneo Research Council (BRC)
  • 長津 一史
    The 14th IUAES: International Union of Anthropological and Ethnological Sciences, Chiba: Makuhari Messe 2014年05月 口頭発表(一般) Makuhari Messe, Chiba IUAES (International Union of Anthropological and Ethnological Sciences)
     
    This paper deals with the ethnogenesis of the Bajau as a maritime creole in Insular Southeast Asia. It aims at examining highly hybrid natures of their ethnic background and socio-ecological contexts of the environment where the mobile aquatic population have maintained such hybrid natures.
  • New Maneuver through Old Network: Maritime Folks’ Trading of Sea Turtle and Used Clothes in Wallacea  [通常講演]
    長津 一史
    Asian CORE Program Seminar “Interface, Negotiation, and Interaction in Southeast Asia, Kyoto: CSEAS, Kyoto University 2014年02月 口頭発表(一般)
  • 長津 一史
    第22回日本マレーシア学会研究大会シンポジウム「比較のなかのマレーシア――民族と宗教に関する国家・地域間比較への展望」 2013年12月 京都、同志社大学今出川キャンパス 日本マレーシア学会
     
    サマ・バジャウ(以下、バジャウ)人は、マレーシアのサバ州・インドネシアの東部・フィリピンの南部の三カ国に跨って居住する。本報告では、このバジャウ人の民族集団としての生成過程のダイナミクスについて、比較の視点から検討する。 3か国すべての人口をあわせたバジャウ人の総人口は約110万人。100万人程度の人口規模の民族が、これほど広域に拡散している例は、島嶼部東南アジアでは他にみられない。広大な海域での拡散居住とあわせてバジャウ人に特徴的なことは、3か国いずれの人口もバジャウ総人口のうちの一定の割合を占めていること、つまりバジャウ人はいずれかの国に集中的に分布しているわけではないことである。本シンポジウムのテーマとの関わりで興味深いのは、バジャウ人の社会的・文化的位相や、民族集団としての生成・再編の様式が上記の3か国で様々に異なっていることである。また、バジャウ人の民族再編は、1990年代以降のグローバル化ないしインドネシアの民主化の潮流のもと、従来にないかたちで展開しつつある。そのあり方にも国家間での差異がみられる。 本報告の目的は、3か国を単位とする国家間比較を念頭におきつつも、まずはインドネシアとマレーシアの事例を取りあげて、バジャウ人の民族生成・再編の過程を比較検討することにある。具体的には、まず1)インドネシアにおけるバジャウ人の生成・再編の過程を、植民地化以前から国民国家成立以降までの時間軸で通観し、その連続性と非連続性を検討する。ついで2)1の過程をマレーシアにおけるバジャウ人の生成・再編の過程と対照させ、両者の過程にみられる異同(主にマレーシア側の独自性)を示す。そのうえで、3)1990年代以降のグローバル化状況における民族再編メカニズムの、インドネシア、マレーシアそれぞれ独自性と通地域的な共通性をも展望してみたい。
  • From Tortoise Shell to Grouper: Marine Resource Exploitation and the Making of Maritime Creole in Wallacea  [招待講演]
    長津 一史
    International Workshop: World History for Current Issues: Environmental Issues, Globalization, and Conflicts 2013年10月 口頭発表(招待・特別) Hongo Campus, The University of Tokyo, Tokyo Global History Collaborative
     
    My research is concerned with the marine resource exploitation and its significance in the making process of “maritime creoles” in Wallacean Sea. In Insular Southeast Asia, sea-oriented peoples of varied origins have occasionally emerged or formed a maritime creole. The Malay are a well-known sea-oriented ethnic group of which ancestors are of highly hybrid in nature. The Balangigi who were once recorded as pirates in the western literature may also be such a creole group. The proposed research pays special attention to the Sama-Bajau as the maritime creole. Through the analyse, it aims at understanding 1) patterns of their marine resource exploitation, 2) structures of the fishing and trading networks of the marine products and 3) socio-ecological characteristics at a certain maritime environment where the maritime folk have maintained and reconstructed highly hybrid natures in relation to the formation of their community and identity. With an approximate population of 1,100,000, many of the Sama-Bajau live along coasts and on islands. Their settlements are dispersed widely over the southern Philippines, coasts of Sabah, Malaysia, and eastern Indonesia. They constitute one of the most distinctive maritime folks in Insular Southeast Asia. It is in my understanding less significant to seek their “true” origin from the historical essentialists’ viewpoint, as the Sama-Bajau and the neighbouring communities are supposed to have constantly converted their ethnic identification from non-Sama-Bajau into Sama-Bajau, or vice versa. Their marine resource exploitation and network formation are considered to be a key to understanding the making process of the Sama-Bajau as a maritime creole. The discussion will focus on the use and trade of sea turtle (Eretmochelys imbricate and Chelonia mydas), tropical trepang (Holothuriidae spp.) or live groupers (Plectropomus leopardus and others), which have been exported exclusively to the Chinese markets. The Sama-Bajau have long and most intensively been involved in the fishing of these products in Southeast Asia. The study pays particular attention to the cases of the Sama-Bajau in Kangean islands, East Jawa and the other parts of eastern Indonesia, although it partially refers to the cases of the Sama-Bajau in Sulu Archipelago, the Philippines and Sabah, Malaysia. The Kangean islands are situated at the nodal point of major sea routes, i.e. Jawa Sea, Makassar Straits and Flores Sea. The study is mainly based on the statistical and spatial data, such as censuses or GIS, and the fieldworks which I have conducted among the Sama-Bajau villages since 1995.

MISC

  • ウォーレス線の区切る世界/ 海域世界
    長津一史 東南アジア文化事典 2019年06月
  • 長津 一史; ナガツ カズフミ; NAGATSU Kazufumi Field+ : フィールドプラス : 世界を感応する雑誌 / 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 [編] (12) 4 -4 2014年07月
  • Islamization of the Sama Dilaut in Sabah, Malaysia
    長津 一史 IIAS News Letters (Leiden: The International Institute for Asian Studies) 31 17 -17 2002年
  • 国境を利用して生きる人々
    長津 一史 アジアセンターニュース (国際交流基金) 20 20 -21 2002年
  • Pirates, Sea Nomads or Protectors of Islam? A Note on “Bajau" Identifications in the Malaysian Context.
    Asian and African Area Studies 1: 212-230 2001年
  • 長津 一史 コミュニティ(地域社会研究所) 127 (127) 63 -69 2001年
  • 海サマとダイナマイト漁――サンゴ礁『保護』をめぐる視点
    長津 一史 日本熱帯生態学会ニューズレター 37 1 -7 1999年
  • Coral Reef Fisherfolks and Their Space Cognition : Notion of "Land", "Sea" and Coral Reef Space among Sama in Sitangkai, Sulu Archipelago.
    Southeast Asian Studies. 35(2): 261-300 1997年
  • A Sketch on the Southward Migratory Movement of the Sama in and around the West Celebes Sea.
    The Journal of Sophia Asian Studies. 15: 99-131 1997年
  • 水上集落
    長津 一史 事典東南アジア――風土・生態・環境 354 -355 1997年
  • スルー海域
    長津 一史 事典東南アジア――風土・生態・環境 348 -349 1997年
  • Research on Bajau Communities : Maritime People in Southeast Asia. (共著)
    Asian Research Trends : A Humanities and Social Science Review. 6: 45-70 1996年
  • 海民――移動する生きざま
    長津 一史 総合的地域研究 15 13 -15 1996年
  • Sama Bajau Newsletter
    Lapian Adrian B; NAGATSU Kazufumi edited Sama Bajau Newsletter 2 1996年
  • Magambit: The Sama’s Tradi- tional Fishing Technique and its Change.
    長津 一史 Sama Bajau Newsletter 1 7 -8 1995年05月

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2019年04月 -2024年03月 
    代表者 : 赤嶺 淳; 長津 一史; 福永 真弓; 大元 鈴子; 濱田 武士; 高橋 五月; 濱田 信吾; 久保 明教; 井頭 昌彦
     
    研究代表者の赤嶺は、2021年6月中旬より7月末まで共同船舶株式会社が所有する捕鯨母船日新丸(8,145GT)に乗船し、同社が21NP-1Wと呼ぶ、三陸沖におけるニタリクジラ漁を参与観察する機会を得た。途中7月9日より7月16日まで捕鯨船第三勇新丸(742GT)に移動し、ニタリクジラ13頭の探鯨と捕獲・渡鯨に立ちあい、日新丸船団がおこなった探鯨から捕獲、渡鯨、解剖、パン立て、急冷、出荷にいたる全工程と、総勢110余名におよぶ船団の安全運行のために甲板部・機関部・司厨部らが作業する一部始終を学ぶことができた。「現場に立つ」ことがフィールドワークの基本であり、その意味で「捕鯨」という現場と「航海」という現場のふたつの現場を体験したことは、捕鯨史を再解釈するうえで有意義であった。2019年6月末に日本が国際捕鯨委員会を脱退し、同年7月より排他的経済水域内における捕鯨を再開して3年目の操業に参加したわけであったが、①2019年度に入社し、調査捕鯨を経験していない乗組員が3割弱に達すること、②製造部の新卒者の離職率が高く、さまざまな技術継承が問題となっていること、③冷凍ではない生鮮肉を仙台に水揚げし、あらたな鯨肉市場を開拓しようとしていることなど、共同船舶としても大きな変革期にあることがあきらかとなった。長津は宮城県三陸沿岸を中心にマグロ漁業の展開と外国人依存の歴史過程に関する聞き取り調査をおこなうとともに、同テーマについてインドネシア・中ジャワ州に住むインドネシア漁船員にオンラインでインタビューを実施した。大元は生産地と生産者の持続可能な水産物の適切な流通経路と規模の調査のために、あらたに島根県隠岐の島における学校給食での島産水産物の供給状況の調査を開始し、特にコロナ禍における小規模水産物生産者の需要の低下に際し、より緊密な関係性をもつ新規供給先の開拓が必要なことをあきらかにした。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    研究期間 : 2020年04月 -2024年03月 
    代表者 : 長津 一史; 河野 佳春; 小野 林太郎; 小河 久志; 鈴木 佑記; 島上 宗子
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2020年04月 -2023年03月 
    代表者 : 間瀬 朋子; 小池 誠; 長津 一史; 合地 幸子
     
    本研究は移住先と移住送り出し元(出身地)を往復して実施され、船員または水産加工労働者として移住労働をする(していた)インドネシア人へのライフヒストリーおよび質問票による聞き取りと観察に依拠するものである。ところが、新型コロナ・パンデミックが収束せず、2020年度に引きつづき2021年度にも、台湾(移住先)とインドネシア(移住送り出し元)での海外調査は実現しなかった。また、日本(移住先)での調査活動も、思うようには進められなかった。 2021年度は、(1)過去の科研費プロジェクトの枠組みで実施したフィールド調査の再検討を通じて、現在の課題をより深く掘り下げる、(2)オンライン調査で新しいデータを収集するという2つの方法により、メンバー各人は研究をおこなった。その際、研究代表者の間瀬朋子は〈帰還移民が担う社会的資本のフィードバック・ループ〉、研究分担者の小池誠は〈モスクで繰り広げられる移民漁船員の組織化〉、同じく長津一史は〈マグロをめぐる海民のグローバルヒストリー〉、同じく合地幸子は〈技能実習生の再来日〉を、研究の切り口にした。 とくに長津は、近海・遠洋漁業に従事するインドネシア人漁船員の就労歴に関する聞き取りやアンケートを宮城県気仙沼市と宮崎県日南市で実施し、新データを数多く収集した。台湾、韓国、スペインでの就労経験を持つ漁船員に対してはオンライン聞き取り、気仙沼市の水産加工場で働くインドネシア人技能実習生に対してはアンケート調査も実施した。質問票は、間瀬と合地が作成したものがもとになっている。滞日インドネシア人との交流会「気仙沼インドネシア・デイ」(2021年11月)には、長津を筆頭に間瀬と合地も関わり、同地のインドネシア人漁船員や水産加工労働者との信頼醸成に努めた。 これらの活動で得た内容を報告や論文として発表するための準備は、現在進行中である。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2017年04月 -2021年03月 
    代表者 : 間瀬 朋子; 小池 誠; 長津 一史; 合地 幸子
     
    外国漁船や海外の水産加工現場で働くインドネシア人について、帰還に注目して本研究が導き出した結論は、次の通りである。 漁船員は総じて転々と就労地(船籍)を変え、台湾を起点によりよい賃金水準や労働環境を得ていく。帰還後には、成した貯蓄でよりよい生計手段を獲得しようとするが、技能実習生の場合、貯蓄は必ずしもキャリアアップを保障しない。頻繁な一時帰国と通信技術は、出身地との連続性を保ち、帰還後の円滑な再統合につながっている。就労地社会との共生の程度は、帰還時期の選択に影響する。就労地でのネットワークが帰還後のキャリア情報の獲得に、またそこでの社会・文化・宗教活動が帰還後の再統合に、各々寄与している。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2017年04月 -2020年03月 
    代表者 : 鎌田 真弓; 村上 雄一; 長津 一史; 加藤 めぐみ; 飯笹 佐代子; 内海 愛子; 間瀬 朋子
     
    本研究では、生活圏としての「伝統的」境界・国家の領域化に伴う境界・脱領域的な「機能的境界」など、豪北部海域での「海境」の生成過程と緊張関係を詳察し、浸透性を異にする境界が重層的に形成する境域の実相を明らかにした。当該境域で生業活動を営んできた社会集団は、生業を変化させて移動・越境を伴った生存戦略を展開してきた。彼らの国家に対する帰属/対抗意識は希薄で、社会的境界も柔軟に変化させている。他方、出稼ぎ労働者としての越境集団は、出身地の地縁や血縁を維持し、「他者」として現地に適応してきた。近年の「密航」による庇護申請者は「危険な他者」とされつつも、受容社会への帰属を進める対抗言説も生まれている。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2016年04月 -2020年03月 
    代表者 : 山田 勇; 長津 一史; 平田 昌弘; 内藤 大輔; 落合 雪野; 甲山 治; 阿部 健一; 市川 昌広; 赤嶺 淳
     
    日本の地域研究者の多くは海外へ出ることが主であり、その分海外の共同研究者に多くを負っていた。本科研では、海外の共同研究者を日本に呼び、共に日本各地の地域研究を行うことで、共通する問題点を探りだした。共同研究者に海外でやってもらっているように、日本人研究者が世話をし、共に研究対象に新たな視点を考察し、本当の意味での協働という視点から、地域研究の根本を見直した。返礼により相互に充足、協働意識、新たな関係性が生成される。日本の研究者と共同研究者との間に、地域社会のなかにあるような相互行為を再構築していくことが、新たな時代の地域研究の契機となるように思われた。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2016年04月 -2020年03月 
    代表者 : 山田 勇; 鈴木 伸二; 長津 一史; 平田 昌弘; 内藤 大輔; 飯塚 宜子; 市川 昌広; 赤嶺 淳; 塩寺 さとみ; 小坂 康之
     
    今回の研究では東南アジア海域世界からユーラシア大陸にかけての生態資源の劣化と保全についての現状を把握し、今後の方策を模索することであった。 4年間にわたり各地で生態資源、主として沈香、茶、牧畜、森林、観光資源について広域な調査を行った。各生態資源の利用が外圧によって変化を余儀なくされつつも、なおかつ、独自の方法を堅持していこうという姿勢が見られ、そのことが他地域ではみられない特殊性を強固にしていくいい方向に向いているという現実であった。また東南アジアの海産資源やバジャウの生態資源に対す姿勢、ベトナムやインドネシアの森林破壊の歴史、森林認証制度の研究も行い、成果を『生態資源』としてまとめた。
  • 日本学術振興会:科学研究費補助金挑戦的研究(萌芽)
    研究期間 : 2017年04月 -2020年03月 
    代表者 : 長津 一史
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2016年04月 -2018年03月 
    代表者 : 早瀬 晋三; 秋道 智彌; 平岡 昭利; 金澤 周作; 新井 和広; 長津 一史; 中里 成章; 保坂 修司; 鈴木 恵美
     
    本研究は、2018年度からの本格的研究の準備として5つの班(総括、ヨーロッパ海域、インド洋、海域東南アジア、日本周辺海域)を設け、それぞれ歴史と文化、社会を念頭に、紛争の基層的原因を考えるとともに、これまでどのようにして紛争を解決してきたのか、あるいは紛争を回避してきたのか、その知を探ることを目的とした。それぞれの班で、本研究の全体像の理解を深めるとともに、ほかの班との連携について意見交換し、本格的な研究のための申請をおこなう準備を順調に進めることができた。代表者の早瀬は、「WASEDA ONLINE」で「紛争の海からコモンズの海へ」と題して、日本語と英語で「オピニオン」を発信した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2014年04月 -2017年03月 
    代表者 : 小野 林太郎; 後藤 明; 長津 一史
     
    本研究ではインドネシアを軸とした海民の民族考古学的フィールド調査と現地での資料収集、またこれらをベースに、海民やネットワーク型社会の成立過程に関する歴史・考古学的な分析を行えたことがまず挙げられる。その成果として、本研究では東南アジアににおける海民やその社会の原型(プロトタイプ)が新石器時代期まで遡れる可能性を指摘しえた。いっぽう、現代における海民を対象とした空間・地政学的な分析では、現代の国境線やインドネシアにおける州・県といった境界線を意識的、戦略的に超えながらネットワークを拡大する海民の動態の把握・理解を進めることができた
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2014年04月 -2017年03月 
    代表者 : 鎌田 真弓; 村上 雄一; 長津 一史; 加藤 めぐみ; 飯笹 佐代子; 内海 愛子; 間瀬 朋子; 田村 恵子; 永田 由利子; 松本 博之
     
    近代国家の成立とともにアラフラ海地域の領域化が進み、海に引かれた様々な形態の「境界」が登場した。さらに近年では検疫や難民審査といった脱領域的な「境界」も創り出されている。そうした「境界」は、人びとの生活圏を分断し、越境活動の誘因となってきた。時には非合法な活動へと転化させられながらも、越境集団は「経験知」を共有して生業活動や社会的ネットワークを変化させ、境域社会への適応と諸集団関係から生まれる「境界」の再編を行っている。このような生活に根ざした「境界」と、国家主権の行使の場としての「境界」との間に生まれる齟齬を明らかにすることによって、境域研究の新たな展開に向けた論点と可能性を提示した。
  • 日本学術振興会:科学研究費助成事業
    研究期間 : 2013年04月 -2017年03月 
    代表者 : 赤嶺 淳; 長津 一史; 安田 章人; 落合 雪野; 浜本 篤史; 岩井 雪乃
     
    ゾウ類や鯨類など環境保護運動のシンボルとして表象(エコ・アイコン化)された特定の稀少生物と、そうした野生生物が生息する生態空間(生態資源)を資源としてツーリズム振興をはかろうとする人びとの動態を、①東南アジアとアフリカ、日本でのフィールドワークにもとづき批判的に検証し、②エコ・アイコン化された野生生物のみならず、そうした生物群を利用してきた人びとの生活様式・生活文化の保全を目的に、観光振興の可能性を展望した。本研究が目指すmulti-sited approachの実践例として、ラオスにおいて野生生物の利用者と(調査者をふくむ)多様な利害関係者間の対話を創出し、研究成果の社会還元をおこなった。
  • 日本学術振興会:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2013年04月 -2016年03月 
    代表者 : 長津 一史
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2011年 -2015年 
    代表者 : 鏡味 治也; 森山 幹弘; 中谷 文美; 長津 一史; 金子 正徳; 津田 浩司
     
    本研究は、インドネシアを主な研究対象地、隣国のマレーシア、シンガポール、フィリピンを比較対照の事例として、各国内での消費様式や生活必需品の共通度、普及度を検証し、それが国民文化や民族文化の形成に果たす役割を明らかにすることを目的とする。2年目にあたる本年度は、初年度に作成した生活用品リストを、昨年度の試行調査にもとづき夏前に国内で研究打合せを行って修正し、夏以降参加者が手分けしてインドネシア等で資料収集調査を行った。それをもとに年度末の国内打合せでWeb上での収集データの共有方法を検討した。本年度の研究打合せおよび海外調査も、研究代表者・分担者のほか、研究協力者として阿良田麻里子(国立民族学博物館・外来研究員)と森田良成(天理大学国際学部・非常勤講師)を加えて実施した。資料収集調査は昨年度とは異なるインドネシア国内7カ所で実施したほか、北タイのチェンマイでもデータ収集を試みた。2年目となり、調査品目をスリム化し、かつ聞きやすいように関連項目のくくり方を工夫したおかげで、昨年度よりは効率的にデータ収集が行えた。そのいっぽうでは、次第にあまりなじみの無い地域でのデータ収集も増えてきたため、集まる情報がなじみのある地域でのそれに比べて薄くなりがちだという反省も聞かれる。生活用品の聞き取りを通じて、その家族の生活誌が浮かび上がる面白さは着実に調査者に実感されるが、そろそろ集積したデータを比較して、地域ごと、民族ごと、あるいは国ごとの差異と共通性を浮かび上がらせる段階に来ており、次年度はそれに取り組む予定である。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(A))
    研究期間 : 2011年 -2014年 
    代表者 : 山田 勇; 阿部 健一; 竹田 晋也; 市川 昌広; 赤嶺 淳; 平田 昌弘; 落合 雪野; 長津 一史; 鈴木 伸二
     
    本研究の目的は、ユーラシア大陸辺境域の「生態資源」に焦点を当て、1)生態資源をとりまく変容過程を明らかにし、2)生態資源への国家規制と住民の対応を調査し、小地域の投げかける新たな方向性を見いだし、合わせて、3)生態の全く異なる二地域における共通性を探ることによって両地域の実像を浮かび上がらせることにある。現地調査としては、フィリピンのビコールやビサヤにおいてジンベイザメについての実態調査、および、鯨類(cetacean)と板鰓類魚類(elasmobranch)といった稀少資源の利用と保全の両立の可能性を検討するために同地域でグリーンツーリズムについても調査を実施した。これらの調査研究は、「食」の生産から消費までを俯瞰し、生活様式・生活環境の変遷をたどりながら、生態資源や現代社会を複眼的にとらえる試みでもある。また、東ジャワ州カンゲアン諸島サプカンにても、海産資源、特にウミガメ(タイマイ、アオウミガメ)に焦点を当て、その利用形態の変遷を調査し、政治・経済構造と比較しつつ分析をおこなった。一方、陸域における稀少生態資源については、ラオスのルアンパバーン市とヴィエンチャン市での染織工房技術と綿織物生産者の現状、エチオピア北部アファール州での異常稀少に伴う牧畜民伝統技術と生業の崩壊、マレーシア・サラワク州での都市移住者の出身村での資源管理・利用などについて調査を実施した。稀少生態資源についての情報収集は、H24年度は主に国際会議に出席することによって実施した。パナマで7月に開催された国際捕鯨委員会会議(IWC64)に参加し、捕鯨に関するエコポリティクスの動向を探った。更に、バンコクで2013年3月に開催された第16回ワシントン条約締約国会議CITES CoP16に参加し、稀少資源保全の世界的枠組みについて最新情報を収集した。沈香をめぐる中国を中心にした動きが活発になった。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)
    研究期間 : 2012年 -2013年 
    代表者 : 長津 一史; 青山 和佳; 赤嶺 淳
     
    研究メンバーは、5月、東洋大学アジア文化研究所において、本プロジェクトの目的、方針、計画を確認し、今年度の調査と作業の予定について検討した。打合せでは、海民・海域の時空間情報データ・ベースと資料集『海域東南アジアの境域社会の動態に関する資料集成』の項目選定作業も行った。8月には、全員でアテネオ・デ・マニラ大学フィリピン研究センター、フィリピン統計局(NSO)、フィリピン地図局(NAMRIA)を訪問し、同国の海民に関わる電子版センサス、人口移動・資源利用・民族間関係に関わるその他のデータ、地図データに関する調査を実施、必要なデータを購入した。同時に、海民研究の専門家に、関連する時空間データの整備・利用環境を尋ね、また情報共有のための手法について検討した。代表者の長津は、インドネシアの統計局(BPS)においても同国の海民に関する時空間データを収集した。年間を通じた活動として長津は、島嶼部3ヵ国全体の海民に関わる人口動態を、植民地期および近年のセンサスを用いて画像化・空間情報化した。これに人口移動や文化要素の分布等をあわせ、島嶼部三カ国全体の海民の社会文化動態に関する基礎データの整理を進めている。青山は、フィリピン・メディア(とくに新聞)に表象されるサマ人関連の情報を収集し、そのデータ・ベースの構築に着手した。赤嶺は、自らがこれまで収集してきたサマ諸語の言語データと画像資料の電子化を行った。言語データはエクセルに、画像資料はJPEGにそれぞれ変換した後、撮影日、撮影場所、説明の3点についてのデータを整理中である。これらの作業に基づく各自の成果は、8月のアテネオ・デ・マニラ大学の研究会(全員)や、2月の京都の国際研究会(長津、赤嶺)で、それぞれ報告された。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)
    研究期間 : 2011年 -2012年 
    代表者 : 赤嶺 淳; 長津 一史
     
    環境主義の時代とも称される今日、鯨類やマグロ類といった水産資源の管理をめぐる問題など、環境保護が高度な国際政治課題となっている。本研究は、もともと野生生物の利用に依存してきた人びとが、そうした地域資源(コモンズ)を商い、自立する権利、すなわち生活権を「在地商業権」(ICR: Indigenous Commercial Rights)と呼び、ICR概念の精緻化・妥当性を検討するとともに、こうした野生生物の持続可能な利用を保障する制度設計をおこなった。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2010年 -2012年 
    代表者 : 赤嶺 淳; 落合 雪野; 岩井 雪乃; 長津 一史
     
    ワシントン条約(CITES)の附属書 I および II に掲載された水棲動物を分析した結果、これまで食用に商業的に利用されてきた水産物の記載が、2000 年以降に目立つ傾向があきらかとなった。このことは、野生生物保護と食料安全保障とが対立しうる課題であることを意味している。類似の事例として、国立公園内で保護されているアフリカゾウが、国立公園に隣接する畑作地を荒らし、農作物被害をもたらしている例を指摘できる。生物資源の持続可能な利用について、より多角的な検討が必要である。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2010年 -2012年 
    代表者 : 伊藤 眞; 山下 晋司; 小池 誠; 内藤 耕; 長津 一史; 奥島 美夏; 信田 敏宏
     
    グローバル化した世界での移民経験は、男女を問わず契約労働者の人生設計に多様な選択肢を与えつつある。帰還移民の中には、海外で取得した資金を新築などの一時的な消費で終わらせることなく、新しいビジネスに投資する者、あるいは、社会福祉活動に参与することで資金を生かそうとする者も現れている。かつての出稼ぎ型移民労働に比 べ、 現 在の移民労働はよりシステム化された制度の中にありながら、新しい起業家たちを生み出す機会を提供していることが、本調査研究を通じて明らかにされた。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(C))
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 長津 一史; 赤嶺 淳; 青山 和佳; 青山 和佳
     
    本研究の目的は、島嶼部東南アジアの三ヵ国、フィリピン、マレーシア、インドネシアの周縁民族としてのサマ(バジャウ)人社会における開発過程のダイナミクスを比較検討することである。サマ人社会における開発は、1960年代から主に国家主導で進められてきたが、1990年代以降、開発がグローバルな関係性のもとで展開するようになると、三ヵ国いずれのサマ人も脱周縁化を明確に志向し、そのための社会運動を組織するようになった。本研究は、サマ人の開発過程にみるこうした社会現象の内容とその歴史的文脈を明らかにした。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2009年 -2011年 
    代表者 : 松本 誠一; 後藤 武秀; 長津 一史; 植野 弘子; 青山 和佳; 赤嶺 淳; 渡邉 暁子
     
    本研究では、東アジアと東南アジアそれぞれの境域における在地トランスナショナル・アクターの移動と生活実践に関するデータを収集し、同時に彼らの移動をめぐる社会ネットワークの形成・再編の様式をミクロ・メゾ・マクロなレベルで比較検討することを試みた。その具体的事例に基づく考察では、移動生活を実践するための生態環境や、国家体制、国境の歴史の深浅が両境域間で明白に異なり、その差異がトランスナショナルな生活実践のあり方やその歴史的展開の違いとして現れていることが示された。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(A))
    研究期間 : 2007年 -2010年 
    代表者 : 山田 勇; 阿部 健一; 竹田 晋也; 市川 昌広; 赤嶺 淳; 長津 一史; 阿部 建一; 竹田 晋也; 市川 昌広; 赤嶺 淳; 平田 昌弘; 長津 一史; 鈴木 伸二
     
    本課題の目的は、稀少資源の枯渇、稀少資源を利用する伝統的な技術体系の状況とその変遷を把握し、生態資源の新しい保全の方策とその概念化を試みることにある。4年間の調査結果の詳細は「4.研究成果」を参照されたい。全体的に言えることは、世界各地で稀少資源の減少と劣化は進行し、それに伴って稀少資源を利用する伝統的な技術体系も急激に失われており、これらには国際的な経済バランスや政治構造が大きく関わっているということである。また、生態資源の新しい保全策としては、「法的制度を伴った生態的力関係」を意味する「エコポリティクス」という新しい概念が打ち立てられた。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(C))
    研究期間 : 2007年 -2009年 
    代表者 : 赤嶺 淳; 長津 一史
     
    東南アジアと日本の島嶼社会を包摂するアジア海域において、人口とモノ、資本、情報がはげしく越境する社会を「境域世界」としてとらえ、なかでもマグロ類、ハタ類、ナマコ類といった希少生態資源の採取と流通・消費に着目して、境域世界圏の生成過程に関する歴史的展開を文献と口承史から明らかにするとともに、ワシントン条約や生物多様性条約に代表される環境保護をうたう国際条約の浸透の結果、無形文化でもある島嶼社会における漁撈文化の多様性が失われつつある現状を記述した。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(A))
    研究期間 : 2007年 -2009年 
    代表者 : 鏡味 治也; 金子 正徳; 中川 敏; 森山 幹弘; 中谷 文美; 岡本 正明; 長津 一史; 梅田 英春; 中村 潔; 福岡 正太; 金子 正徳; 阿良田 麻里子
     
    インドネシアを事例に、首都と地方と辺境、民族伝統の違い、都市部と農村部や男女の違いに注目しつつ文化継承の実態を組織的に調査しデータを収集した。教育の普及やメディアの発達、生業の変化が文化継承のあり方や継承されようとするものに変化をもたらしていることを確認し、首都や都市部では民族文化も国民文化化するいっぽう、地方や辺境では民族間関係により民族意識の先鋭化が顕著なことが把握され、とりわけライフコースの変化が文化継承のあり方を規定していることが明らかになった。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(若手研究(B))
    研究期間 : 2006年 -2008年 
    代表者 : 長津 一史
     
    本研究では、マレーシア・サバ州東岸およびインドネシア・スラウェシ島周辺の海サマ人社会に焦点をおき、経済活動の変化、宗教実践の変化、民族間関係の再編という三つの側面から捉えられたサマ人と開発との動態的関わりを、1970年代半ばから現在までの約30年の時間の幅で比較考察した。研究方法は定着調査と広域概査をあわせたフィールドワーク、ならびに史資料調査である。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
    研究期間 : 2005年 -2007年 
    代表者 : 後藤 武秀; 小林 修一; 石丸 由美; 後藤 明; 佐藤 俊一; 子島 進; 斎藤 洋; 長津 一史; 奥田 敦; 三沢 伸生
     
    日本を含めてアジア全般において、古代より中国文化の影響下に形成されてきた「伝統的秩序規範」と近代以降のヨーロッパ文化の影響によって整備されてきた「国家制定法」がいかに対抗・協調しつつ、当該社会において協働関係の形成過程について主に法史学的観点から研究されてきた。しかし近現代のアジアにおいて中国文化やヨーロッパ文化の影響外にあって、独自の法文化を形成してきた「イスラーム法」が大きな影響力について法律学ではあまり正しく認識されていない。中東はもちろんのこと、昨今ではインドネシア、マレーシア、バングラデシュといった東南アジアにおいては中東以上にイスラーム教徒人口を抱え、その隣国の仏教国たるミャンマー、タイにおいても都市部におけるイスラーム教徒人口が増大してきている。本研究プロジェクトは、こうした様々な社会経済活動において「イスラーム法」の影響を看過することはできないという状況を具体的に解明することができた。本研究プロジェクトは広範なアジア地域のうち、イスラーム法の影響の強い、東南アジア・中東地域に対象を限定して、「国家制定法」と「伝統的秩序規範」とを比較しながら、それがどのような協調関係にあるか、その関係がどのように変化してきているのかを、法文化的に解明していくことに努めた。より具体的には、東南アジアの中でもイスラーム法の影響を強く受けているインドネシア、マレーシア、ミャンマー、中東地域ではアラブ圏、トルコ圏、イラン・インド圏のように重点領域を設定して、個別研究と共に相互の学間的方法論に基づく比較検討や地域的・時系列的関係を明らかにしていくことに重点をおいた。その際にイスラーム法に注目する以外に、とりわけ伝統中国法ないし華人社会の伝統的家族秩序と近代法との協働関係を形成している台湾・香港等の東アジア地域の華人社会の法文化に関する史的研究との比較についても、あわせて研究して成果をあげることができた。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(萌芽研究)
    研究期間 : 2005年 -2006年 
    代表者 : 赤嶺 淳; 長津 一史
     
    地球上のさまざまな地域で定着性沿岸資源のおおくは、これまで地域社会による固有ルールによって共同資源管理がなされてきた。しかし、市場圧力はもとより、生態環境の悪化、過疎化や高齢化などの要因から地域による共同管理の枠組みがうまく機能していていないケースもみうけられる。他方、生物多様性保全への国際的な関心のたかまりから、非当事者である人びとが、地先資源の管理についても発言権をましているのが、現実である。たしかに1970年代以降の環境主義の時代において生物多様性の保全を目的とした資源利用への規制は、説得力をもつようにみえる。それは、生物多様性の恩恵を享受するのが「人類」であるからである。しかし、問題は、抽象的な人類ではなく、個別文化をせおった人びとが、ひとしく生物資源の多様性の恵みをあずかることができるような社会システムが存在していない点にある。本研究では、上記の視野にたち、沿岸資源の代表として近年、中国で消費が拡大している干ナマコに着目し、東南アジア、日本、香港、中国におけるフィールドワークから、国境をこえた生産者や流通業者、消費者といった資源利用者らを「当事者」ととらえ、それぞれのアクターが、資源利用に関して、どのような認識をもち、どのような実践をおこなっているか、それぞれのアクターをむすぶノードの実態をあきらかにした。とくに、従来は商業機密により、香港を中心とする流通ネットワークについては、詳細が把握されていなかったが、本調査により、香港の乾燥海産物輸出入組合が、定着性沿岸資源の持続的利用を意識し、世界の取引先をまきこみ、漁業者らへの資源管理の必要性をうったえていることが明らかになったことは、本研究の大きな成果のひとつである。今後は、香港を中心としたこれらの流通ネットワークの史的発展をふまえた詳細な検討が必要である。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(A))
    研究期間 : 2002年 -2004年 
    代表者 : 加藤 剛; 清水 展; 長津 一史; 足立 明; 鳥居 高; 永渕 康之; 玉置 泰明; 中谷 文美; 青山 和佳
     
    1960年代以降、開発主義的政策のもとで著しい変容を遂げた東南アジアの多くの国では、1970年代以降、周縁世界も開発政策の対象とされるようになった。しかしながら、政治的な影響力を持たない周縁世界は、開発によって急激な変容を遂げたにも関わらず、これまであまり研究の対象になることがなかった。本研究は、開発主義を指向する権威主義的政権が比較的長く続いた島嶼部東南アジアの三ヶ国、すなわちインドネシア、マレーシア、フィリピンを対象とし、理念、政策、実践としての開発と、社会(マイノリティ)、空間(境域)、性差(ジェンダー)の三位相から捉えられた周縁世界との関わりを、40年ほどの時間幅のなかで考察することを目的とした。研究活動は、研究組織メンバーによるフィールドワークと、日本国内における資料収集ならびに年一回の合同合宿研究会であった。三年間の成果は、個々の公表論文以外に、大部の報告書としてまとめられた。以下、報告書の概要である。〔島嶼部東南アジアの開発過程の概観〕の担当者は、各国の開発政策におけるマイノリティ、境域、女性の位置づけの変遷を歴史的に跡づけ、開発と周縁世界に関する資料集をまとめた。〔マイノリティ〕の担当者は、スマトラ島における移動焼畑民・プタランガンの土地利用と土地権、マレー半島における先住民と学校教育、ルソン島における山岳少数民族の植林運動をテーマとし、マイノリティ社会における開発の影響について報告した。〔境域〕の担当者は、リアウ州における地域アイデンティティの変容、ダバオ市におけるキリスト教援助団体の社会的影響に着目し、開発の拡大にともなう境域社会の変容について報告した。〔ジェンダー〕の担当者は、インドネシアの公的言説における家族像と女性観、フィリピンからの再生産労働者としての女性の海外送り出しに焦点をおき、開発政策における女性の位相について報告した。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(A))
    研究期間 : 2001年 -2003年 
    代表者 : ABINALES P N; 立本 成文; 田中 耕司; 山田 勇; 長津 一史; 白石 隆; 清水 展
     
    本研究はフィリピン南部を含むウォーラセア海域世界の20世紀における構造と動態を、海外での臨地調査と公文書館などでの文献・資料調査を通じて、(1)海域住民の生活世界、(2)その生活世界のつながりとしての海域ネットワーク、(3)生活世界とネットワーク双方を支配・管理する政治制度、の3点に注目することにより明らかにしようとした。初年度は上述の(1)〜(3)について各メンバーが個別調査を行ったほか、スラウェシ島沿岸部において合同広域調査を遂行した。その結果、当該海域における生活世界とネットワーク、そして政治制度の間の相互作用に関するアウトラインを描出することができた。次年度はマクロな政治的文脈における、ウォーラセア海域の生活動態に調査の重点を置きながら、(1)〜(3)について引き続き個別調査を行ったほか、西ティモール沿岸域において合同調査を、そしてインドネシア科学院のメンバーとの間で意見交換を行った。その結果、当該海域における住民登録・出入国管理の変遷、ならびに生業活動、人口移動、資源利用形態の変化を国家の開発政策等と相関させながら明らかにすることができた。最終年度も引き続き(1)〜(3)についての個別調査を行い、そしてジャカルタのインドネシア科学院で平成16年3月に開催された国際ワークショップにおいて成果報告を行った。そこでは、20世紀という時間枠の中でウォーラセア海域の各小海域圏が住民の杜会経済的空間として編成・再編成されてきた歴史過程を、近代国家による領域管理の進展と相関させながら跡づけることを共通の課題とした。そして最終的な成果として、本研究の当初の目的であるウォーラセア海域の構造と動態を明らかにするべく、上述の(1)〜(3)の視点を3ヵ年の調査結果をもとに総合化し、ワークショップでの報告ならびに議論をまとめ、成果報告書として編纂した。
  • 文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(A))
    研究期間 : 1999年 -2001年 
    代表者 : 加藤 剛; 小瀬木 えりの; 石川 登; 林 行夫; 貞好 康志; 長津 一史; 小瀬木 えりの
     
    3年間にわたり日本人7名と外国人研究者2名のメンバー全員が各自定点調査を中心に調査研究に携わることができた。研究代表者と分担者は、いずれも本科研以前から行ってきた定点調査に加え、空間的にも時間的にもこれを広げ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ミャンマー、ラオスにおける現地調査と、アメリカをも含めた文献調査を行ってきた。その中で、民族間関係や移動の歴史過程に関する基礎的な研究に加えて、宗教の動態、文化の再編課程についての聞き取りと一次資料収集に当たり、かつ従来よりも時空の広がりを目指すことで比較の視点をも可能にしてきた。また、各年度の初めに前年度の成果と今年度の予定を持ち寄り議論する中で、相互に枠組みを確認しあい、全体として一つの方向性を目指した。世紀の変わり目を迎え現在に至る30年あまりの東南アジアは急速な社会変容は資本、人、文化のグローバルな流動性によって引き起こされたもので、国民国家の枠組のみではもはやとらえることができない。そうした現代東南アジア社会の急速な変容を二十世紀の歴史的脈絡に位置づけるとともに、民族間関係、移動、文化再編という国境を越えるカギ概念を元に再検討し、多民族・多宗教からなる東南アジア社会の変容過程のダイナミクスを総合的、学際的に把握することにある。最終的に各調査地における社会変容をより大きな政治的枠組みとの相関においてとらえつつ、従来各自の関心であったよりローカルな問題を、そうした相関の中でより体系的に大きな政治経済社会変動の中で理解できたことにより、本科研の目的に各自の問題意識を絡め、相互に比較しうる成果を出してきたことであろう。それぞれが、世紀の変わり目である現在とそこへいたる民族間関係の位相を国民国家の形成とその民族政策のなかでとらえた上で、宗教や市場経済導入などといった要因により、実は国家の枠組みのみではとらえきれない動態が見いだされることを描いている。
  • 国境海域における人口移動の研究
  • 東南アジア海域の社会動態に関する研究
  • Study on Population Movement around National Boundary in Sea
  • Study on Social Dynamics in Maritime Southeast Asia

委員歴

  • 2023年01月 - 現在   東南アジア学会   会長
  • 2012年 - 現在   東南アジア学会   選任理事
  • 2004年01月 - 2005年05月   東南アジア史学会   総務委員長   東南アジア史学会

担当経験のある科目

  • 東南アジア少数民族論
    上智大学
  • 東南アジア・イスラームの社会史
    東京大学
  • 比較宗教論
    滋賀県立大学
  • 社会文化システム論演習
    東洋大学
  • アジア社会文化論
    東洋大学
  • 文化人類学
    東洋大学

その他のリンク

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